日本計量新報 2009年9月20日 (2790号)2-3面掲載
不確かさや製品選択に関するトレーニングなど
例を挙げましょう。例えば計測における「測定の不確かさ」に関するトレーニングプログラムです。われわれには、正しく測定する上で欠かすことができないこういった要素・内容を、お客様に正しく理解していただくお手伝いをする義務があります。
また天びんの選択に関しても、使用目的や必要とされる精度などにあわせてお客様に正しい選択をしていただくお手伝いをしていくべきだと考えています。例えばお客様が「天びんの設置場所における最小計量値(MinWeigh)」などを誤り、使用目的に合わない天びんを選択してしまうと、将来にわたって誤った測定をし続けるということになってしまいます。
こういったことを避けるためにも、お客様とわれわれが持つ情報を共有して、正しい選択をしていただき、将来のエラーも防いでいくことが重要です。メトラー・トレドはそういうお手伝いをしていきたいと考えています。
信頼性の高い測定のためのガイド 「GWP」
「Good Weighing Practice (GWP)」を紹介します。これはメトラー・トレドが世界的に展開しているプログラムです。FDA(米国食品医薬品局)に相当する各国の機関とも協力して進めています。このプログラムは測定の不確かさに関するリスクに対処するもので、製品の選択から日常の操作方法、後のサービスに至るまでカバーしています。GWPは、各種規制に準拠し、信頼性の高い測定結果を得るための計測プロセスを推奨する、世界で初めてのガイドラインです。
いくつかの例を紹介しましたが、重要な点はこのような方法を通じて、パートナーやエンドユーザーであるお客様とのコミュニケーションを改善していきたいということです。このために特別な努力をしていきます。従来の受け身の姿勢を改善することによって、大きなインパクトを与えることができると考えています。
人材のトレーニングを強化
そのためには社内の人材に関するトレーニングを強化していこうと考えています。
この面でも大きな進歩を勝ち取り、ベストな人材をそろえられるようにしていきます。
サービス分野にチャンスがある
サービスを強化する
私は、サービスに大きなチャンスがあると思っています。
すでにメトラー・トレドはさまざまなサービスを実施していますが、さらにプロとしてのサービスを提供できるようこの部門を強化していきます。まずは修理などのメンテナンスとサポートのサービスがあります。メトラー・トレドが提供する独自のサービスもあります。機器の性能を維持し、正確な計量ができる状態を保つ定期保守サービス(MMC)です。
JCSS校正サービス
校正サービスがあります。われわれが最高レベルであると自信を持っているサービスです。メトラー・トレドのキャリブレーションセンターは、(独)製品評価技術基盤機構(NITE)から、計量法校正事業者登録制度(JCSS制度)の登録および国際相互承認(MRA)の認定を受けています。
質量(「分銅・おもり」と「はかり」)の校正に関して、計量のトレーサビリティがきちんと確保された総合的なサポートを提供しています。 JCSS以外の一般校正もできます。
質量計測はすべての分析の出発点です。質量計測が誤っていれば、その後の分析すべてに深刻な影響が出ます。
バリデーションのサービス
バリデーションのサービスがあります。製薬、バイオ、食品、飲料メーカーには、共通して機器の適格性評価とコンピュータシステムバリデーションが要求されています。メトラー・トレドはFDA(米国食品医薬品局)などによる規制要求を満たす適格性評価とバリデーションの手順書、文書化されたソリューションを提供しています。
ミニバリデーションという意味で、先ほど紹介した、お客様が常に正確に測定できるガイドであるGWPも活用していただけます。
メトラー・トレドのサービスエンジニアは、高いレベルのサービスを提供できるプロとしての自信があります。お客様の要求に応えるプロを育成するために、再度強調しますが、人材のトレーニングへの投資を続けていきます。スイスの本社へ派遣してのトレーニングも実施しています。優れたサービスは優れた人材がいなければ実施することができませんから。
サービスを実施するための機器や計量の標準なども最新のものを取り揃えていきます。
APMFの活動にも参加
メトラー・トレドはAPMF(Asia-Pacific Symposium on Measurement of Mass, Force and Torque、アジア太平洋地域における力学量計量計測・標準関係の国際学術会議)の活動にも参加しています。メトラー・トレドが持っている質量に関する技術情報はどんどん共有していきたいと思っていますし、APMFの活動に今後も協力していきます。
革新的な製品・システムを提供
お客様が使いやすいソリューションを開発
−−メトラー・トレドの注目すべき製品などを紹介してください。
ここ数年間で、メトラー・トレドの製品群は新しいものに変わってきています。これらは重要なコンセプトを基に開発されました。
そのコンセプトとは何か。われわれの研究開発における戦略をお話しします。新しいソリューションをつくるためには、我々が誇りに思っている高い計測性能を盛り込むのはもちろんですが、それ以外に技術的に可能なあらゆるものを取り入れて、お客様にとってより使いやすいソリューションにしていこうということです。
汎用製品にも力を注ぐ
われわれが誇りに思っているソリューションは、一つは計測の専門家に喜んでいただけるような計量計測の世界でハイエンドなソリューション群です。同時に、もっとスタンダードでノーマルな製品においても、革新的な機能を盛り込んでいます。即ち、メトラー・トレドはハイエンド製品ばかりでなく、汎用製品にも力を注いでいます。
ニュークラシック MS/ML天びん
最近発売された製品を紹介します。「ニュークラシックMS/ML天びん」はハイエンドクラスの天びんではありません。しかし、いかにも天びんらしいクラシックなデザインで、さまざまな改良が加えられています。非常に使いやすい製品になりました。
我々の研究開発活動(R&D)に起きた変化も、この製品に反映されています。以前は製品開発者がラボのなかだけでコンセプトを考えて設計していました。今回の製品は、開発者が実際にお客様と話をして要望を伺い、実際に天びんが使われている現場なども見て、開発しています。よりお客様にとって使いやすい製品に仕上がった背景には、研究開発活動の変化があるのです。
日本ではメトラー・トレドは、製薬業界ですとか、要求レベルが高い研究開発などを支援するハイエンドの製品を提供する会社というイメージがあります。
しかし、世界的には、われわれがクラシック天びんシリーズと呼んでいる汎用製品群でも成功を収めています。したがって、我々は日本でも汎用製品群の普及をさらに拡大するチャンスがあると思っています。お客様にもより多くのメリットを提供することができます。
微量サンプルの自動粉体分注システム「クアントス」
もう一つ紹介します。それは微量サンプルの自動粉体分注システム「クアントス(QUANTOS)」です。これは現在、世界でもメトラー・トレドしか提供できない革新的な製品です。
これは非常にユニークなプロジェクトにより開発された製品です。実際の作業をよく観察することから生み出された製品でもあります。ラボでは、微粉体サンプルをガラス容器に移す作業が度々行われます。その際の微粉体はしばしば製薬の成分でもあるので、作業に従事する人にとって有害な側面もあります。クアントスは、非常にやりにくいスパチュラ(手動振動さじ)による微量粉体の手作業を、簡単・迅速な自動分注へ進化させました。
ヘッドが簡単に交換できる
自動分注により、手作業のプロセスと比較して最大20倍の速さの分注が可能になりました。微粉体が大量であっても迅速に作業できます。
ヘッドが簡単に交換できるインテリジェント・分注ヘッドがクアントスの特長です。有害物質は密閉された状態のままで、オペレーターとサンプルを守ります。
さらに、メトラー・トレドの革新的な分注技術により、計量に必要な物質のサンプル量を大幅に削減することができ、希少物質の損失を最小限に抑えることができます。
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