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「燃やす文化」から「燃やさない文化」へ転換を
ーすべてを正常に戻そう−
宮下 茂

(社)日本計量機器工業連合会 会長

vol.1

日本計量新報 2010年1月1日 (2803号)4-5面掲載

無駄なエネルギーシステムの転換を

現実をどうやって克服するかだ


宮下茂 −−日本がこの厳しい経済状況に対応していくには、どのようにすればよいでしょうか。
 この厳しい経済状況にどう対処していくか。私は、それは現実をどうやって克服するかだと思います。現実が厳しい局面にあることは皆さんが承知していますから。そのことを私は昨年の計量記念日全国大会の中締めのあいさつで申し上げました。
 そして、敢えて三本締め万歳をやめ、悪霊を飲み込んでしまうという思いを込めて乾杯を致しました。
 日本経済は過去において、一次オイルショック、続いて二次オイルショック、バブル経済の崩壊を経験してきました。そして、われわれはこの過去の経済危機を上手に乗り切ってきています。

日本経済の過去最大の危機は敗戦


日本経済におけるこれまでで一番の危機は、65年前の1945(昭和20)年に日本が戦争に負けた時です。
 あの時に国民が受けた痛手、落ち込んだ気持ちは今以上ですよ。現在のリーマンショックを100年に一度などと表現していますが、敗戦による日本経済や国民の生活が受けた痛手は、リーマンショックなどとは比べものにならないくらい、ひどいものでした。
 100年に一度ということを言うなら、まさにこの痛手こそ100年に一度の痛手です。

戦前戦争直後のような状況とは違う


私は戦前の生まれです。ですから、この程度のことは何でもないと思います。現在は戦争直後の時期と比べると、社会保障制度が比較にならないくらい充実しています。今、1日3食食べられないという状況は、よほどのことがない限りありません。戦争中、私は2食しか食事にありつけなかったですよ。疎開した土地の里山で、食べられるものを漁って食べていました。
 今、食の話をしましたが、住のほうを見てみると、家の中は裸電球が1つぶら下がっているという状況でした。そして、戦争の末期には、空襲警報が発令されると、光が外へ漏れないように、灯火統制により電灯に覆いを掛けました。爆撃の目標になるからというのですね。
 衣についてはどうだったかいうと、私は3男坊でしたから、絶えず兄たちの服のお下がりを着ていました。長男は新しい服を着ます。次男は、兄のお下がりではありますが、まだ服がすり切れてはいません。私が着る頃にはもうぼろぼろになっています。大きな継ぎ接ぎが服のあちこちにありました。ですから、私は小学校時代の写真などは、恥ずかしくて他人には見せられない。そういう時代であり状況でした。まあ、今なら、時代の最先端をいくファッションかもしれませんが。

工夫と知恵で厳しい環境を乗り切る


 私は日本人のDNAにはすばらしいものがあると思っています。ですから、何とか工夫をし、知恵を絞って、この厳しい環境を乗り越えていく事ができると、強い確信を抱いております。
 戦後私たちは、経済においても生活環境等でアメリカに何とか追いつきたい、追い越したいと思ってきました。そういう目標がありました。さて、今現在の目標は何ですかね。


日本が目指す目標を設けよ


 ここで日本として何を目指すのかという的確な目標を設ける必要があります。日本は総国民中流階級であるといわれます。国民もそれで満足し、目標を失ってしまっています。目標を定めて努力するという向上心がありません。こういう平均的な状況、平均指向ではダメです。これを打ち破る意識改革が必要です。それで満足してしまうと、それ以上の発展、成長は望めなくなります。
 日本は、様々な面で中国や東南アジア諸国に迫られています。政策の可否もあるでしょうが、その大きな要因として、日本国民の総中流指向、向上心や目標の欠如があると思います。
 これまでの日本の経済的発展は、外需、すなわち輸出に頼って成長をしてきたわけです。つまり、日本は平和ボケ、経済ボケをしていたわけです。手抜きをしてきたのです。
 ですから経済危機といわれる今こそ、われわれが今まで手を付けなければいけなかったことをさぼっていたこと、忙しさにかまけて手抜きしてきたことを、フォローしていかなくてはなりません。今、すべての国民がそこに目を転じるべきだと思います。このメンテナンスをしっかりやれば、この程度の危機は早く克服することができます。
 今まで、日本と国民は奢りすぎていたのです。それを自覚しなければなりません。


次の産業革命は「燃やす文化」から「燃やさない文化」の構築


 それでは日本はどうしたらよいのか。これから日本が目指す方向は、石油を中心とした「燃やす文化」から「燃やさない文化」へ転換を図ることです。
 現在の世界の文化は一言で言うと「燃やす文化」です。石油からあらゆるものを作ってきました。これが現在の全地球規模での環境問題、地球温暖化などを引き起こしてきたのです。
 今こそ、石油を燃やして車を動かす、石油から繊維などあらゆる工業製品をつくる、こういう「燃やす文化」を転換して、「燃やさない文化」に変えていかなくてはなりません。
 今までにない新しい文化の構築、私は、これが次の産業革命の大きなタネだと思います。


里山を整備すれば大きな変化が


現在、日本の里山は荒れていますね。まずはこれを整備するだけでも、大きな変化が起こります。
 わざわざ外材を買って家を造る必要はありません。足下に目を向ければ、日本産の資材で家を建てることが充分可能です。今の家の建築資材はほとんどが外材です。この状況がCO2の削減を阻害しているひとつの要因でもあるのです。
 国産の木材の需要が高まれば、荒れた里山が整備されていきます。
 戦前は、成長の早い唐松を一所懸命に植林したものです。そもそも唐松は捻れ、そり、まがりといった木の特性に難があって、狂いが生じるために、本来は建築材にはあまり適せず、電柱など、限られた用途しか利用できませんでしたが、今では加工技術の発達で集成材などに加工され需要が拡大しています。
 これからは、環境保護の意識の高まりで建材の輸入が困難になりつつありますから、唐松材を始とする国産の木材に期待がかかります。長野オリンピックのスピードスケート会場となった「エムウェーブ」は長野県産唐松の集成材で建造されているのですよ。
 日本の食料自給率は40%をちょっと超えたレベルですね。日本の国はどこへ行っても荒れた田畑が目立ちます。これも何とかしなければなりません。
 この復興を2010(平成22)年にスタートさせましょう。

自分の力で何ができるか考えよう

今、予算の削減が議論され、民主党政権のもとでもいろいろ作業が進められていますね。
 これは大事なことですが、しかし、目を少し転じて、私たちは自分の力で何ができるのか、もっと目線を下げて欲しいと思います。


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