計量新報記事計量計測データバンク今日の計量計測情報ニュース会社概要出版図書案内リンク

グローバル戦略でシナジー効果あげる

長野計器(株) 依田恵夫社長インタビュー

聞き手は高松宏之編集部長

vol.1

日本計量新報 2013年1月1日 (2947号)第1部4-5面掲載

圧力計では世界最大の企業

−−長野計器(株)についてご紹介ください。

2011年度売上高は約394億円

長野計器(株)は、圧力計、圧力センサ、計測制御機器などを、日本および世界で製造販売する企業です。2011年度の売上高は約394億円。圧力計事業が約196億円、圧力センサ事業が約109億円、計測制御機器事業は約48億円、その他の事業で約41億円の売上高になります。従業員数は2012年3月31日現在で2119名です。当社は圧力計の業界では世界最大の企業と自負しております。

日・米・欧の拠点中心にシナジー効果だす

−−欧州における金融不安をはじめ世界経済は引き続き厳しい状況にありますが、そのなかで長野計器はどういう方針をとっておられるのでしょうか。

日・米・欧の市場を中心に

当社は、米国のアッシュクラフト社を買収して、売上に関しても海外の占める比重が大きくなっています。
 したがって、日本と米国が長野計器にとって大きな市場になっています。さらに、ヨーロッパ市場も見逃せない地域です。
 長野計器はドイツとの交流が深く、ヨーロッパ市場ではドイツが拠点になります。
 この3拠点を中心に、さらにアジア市場をどう攻めるのかということが当社の戦略になります。
 ただ、中国に関しては、現在さまざまな問題が起きており、また市場の減速感もあるので、さまざまな企業が中国から引き揚げるという状況も起こっています。しかし、市場規模から見れば中国は巨大市場ですので、これを無視するわけにはいきません。

当社の製品は設備関連機器が多い

当社の製品は、個人が購入する分野は限られており、大部分は自動車用の機器や設備関連機器ですので、大きなプラントが建設される場合や地元で産業が活発化するときに当社の製品が売れるということになります。いわゆる工業地帯が発展しないと当社の製品も売れないということになります。

コア製品は上田、丸子で

当社は、コア技術、コア製品は、上田計測機器工場、丸子電子機器工場で生産して、これを現地で組み立てています。このスタイルは、変えないつもりです。

米市場はグローバル戦略の成功例

米国市場は日本と似ていますが、しかし米国の特徴はやはり国がしっかりと産業を支えているということです。これは日本の企業にとってみればうらやましい政策です。したがって、当社も米国での事業は好調で、当社のグローバル戦略の成功事例であるとみています。

シナジー効果をあげる

長野計器は以前から、このグローバル戦略でシナジー効果をあげる方向で事業を展開してきていますが、これを推進していくことはなかなか困難です。
 ようやくここへきて、マーケティングや技術関連部門で、担当者レベルでのシナジー効果が出てきました。これが実ってくれば、長野計器グループとして一体化した企業戦略や精神が生み出せると考えています。
 ただ、日・米・欧の風土や考え方には大きな違いがありますので、これを統一するのは簡単ではありません。

指導ではなくサポートをする

そのために、現地の経営は原則として現地のCEOに任せています。日本から派遣する取締役には、指導するのではなくサポートをしてコミュニケーションを深めなさいと言っています。現地の風土や状況、税制や市場の慣習などをよく知らないで、日本のやりかたをそのまま移植するような指導してもうまくいくわけがありませんから。
 このようにして、ようやく各部門、各地域ごとのコミュニケーションもスムーズになり、当社でも世界戦略を遂行できる体制が整いつつあるというのが現状です。

生産量を増やす

先ほど、コア技術は日本の上田計測機器工場、丸子電子機器工場でというお話をしましたが、量産という課題もあります。
 製品のコストを下げるためには生産量を増やさなくてはならないということがありますので、当社は自動車産業に参入してセンサの生産量を増やしています。圧力計に関しては、長野計器は生産量で世界一になりました。圧力計もまだまだ生産量を増やせる余地があります。
 センサに関してはまだまだ開発途上ですから、次のステップを考えていかなくてはなりません。そのためにもどうしても生産量を増やしていく必要があります。
 当社はこれまで量産というのはあまり得意ではなかったのですが、実際に量産をするようになりますと、そのためのノウハウも開発されてきました。

市場の要求に合わせた製品開発を

日本の技術者はマジメです。よくいえばもっともっとよい技術を開発しよう、よい製品をつくろうと際限なく努力するのですが、限界なくとことんよいものをつくろうとしますと、高性能なよい製品だが商業ベースに乗らない場合がでてきます。そういう製品が必要な場合もありますが、そうでない、オーバスペックになってしまう市場もありますので、棲み分けといいますか、市場の要求に合わせた製品開発が要求されます。
 私は常々、独りよがりの開発をしていてはダメで、お客さまのもとへ行って、お客さまが必要とし、要求するものをつくらないといけないと言っています。
 製品は、コストと品質がバランスよくかみ合ってはじめて商売になります。企業では、お客さまに製品を買っていただけないのではダメなのです。

自分の眼で確かめ、実情把握に努める

−−世界経済の現状をどのように見ておられますか。

米市場は活発になってきた

世界の経済情勢では、欧州危機の解消と中国の景気の回復に注視しています。できるだけ現地を視察しながら、自分の眼で確かめて、実情を把握するようにしています。
 欧州危機に関しては、彼らは底力と歴史がありますから、困難はありますが、回復する力はあると思います。中国市場は、外見はそう悪くは見えないのですが、私は立ち上がりには苦労するのではないかとみています。
 東南アジア市場の拡大が今後どうなるかですね。中国からシフトする企業が増えてきましたが、まだまだ各国ごとの規制の壁はありますし、電力等のエネルギーの安定供給をちゃんとやれるのか、また、人口が中国に比べて少ないので労働力の確保とか、購買力の伸びがどのくらいになるのか、などの不安材料はありますね。
 長野計器に関しては、中国、インド、ブラジルなどの市場はこれからですね。当社の製品は、工場などの設備関連の製品が多いですから、これらの国で設備投資が活発になっていけば期待できると思います。まずはアッセンブリ工場からやっていくことになります。
 米市場については、懸念材料はありますが、けっこう活発になってきたという感触があります。私はよく言うのですが、スーパーマーケットへの客の入り具合を見ると、だいたい金回りの状況がわかります。

実質政治への変化を期待

政治的には、日本に大きく関連するところでは、米国も大統領選挙がありましたし、中国、韓国の政治トップが交代するという変化があります。これによって経済政策が大きく変わるのか、基本的には継続するのか、また日本の政治での経済政策の変化にも注目しています。数合わせ政治から実質政治への変化を期待します。産業を活発にしないと税収も増えませんし、国民の収入も増えていきませんから。
 円高も引き続き心配です。企業の対策はもう限界にきています。
 家電関係の大企業でも大幅赤字に陥っている現状がありますが、私は、まだまだ日本企業には力がありますから、安易に技術を売らないようにしなければいけないと思います。そうしないと日本の産業はおかしくなってしまいます。

 

[1 2 ]次へ>>


記事目次/インタビューTOP
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.