計量新報記事計量計測データバンク今日の計量計測情報ニュース会社概要出版図書案内リンク

常に先を見て、先に向かって進む

長野計器(株)依田 恵夫代表取締役社長に聞く

聞き手は小野学業務部長

vol.2

日本計量新報 2015年1月1日 (3039号)第1部4-5面掲載

成長戦略での4つの重点分野

−−「成長戦略推進プロジェクト」に取り組まれていますね。

重点的な取り組み

当社は、企業としての成長の目がどの方向にあるのかということをマーケティングしています。そのなかで出てきた、4つの分野があります。
 シェールガス分野や水素エネルギー分野、インフラの耐久性検査、高精度・高性能の新しいセンサの開発です。
 当社はこれら4つの分野で重点的に取り組みを進めていきます。

水素エネルギー関連に注力

水素エネルギーに関しては、燃料電池自動車が発売され、水素ステーションの普及が急務になってきました。まだ試験的な段階で燃料電池自動車の生産台数もまだたいしたことはありませんが、水素ステーションなどインフラが普及すれば、数が増えていくと思います。
 これらに向けても実際に動き始めています。水素ステーションなどのインフラメーカーに、高圧技術を活かした当社の圧力計・圧力センサを供給しています。自動車に取り付けるセンサについても、各社から当社のセンサに対してオファーをいただいています。当社の水素用の圧力計、圧力センサが安全の確保に大いに役立っています。

「FBG事業部」を新設

インフラの耐久性検査に関する光ファイバセンサを使ったFBG技術に関しては、トンネルや橋脚、道路の老朽化診断等にすでに何カ所かでお使いいただいています。鉄道会社で架線の状況を調べるのにもFBG技術が適しています。これに関しては「光ファイバセンサ」を利用した応用システム製品の早期事業化をめざし、「FBG事業部」を新設しました。
 FBGとはFiber Bragg Gratingの略で、光ファイバセンシング技術のひとつです。光ファイバを利用することから広範囲な計測を可能とし、従来のセンサにはない新たなニーズの掘り起こしが可能となります。このFBG事業を当社の新たな柱とするべく、注力してまいります。

高精度・高性能センサの開発

高精度・高性能センサの開発に力を入れていきます。セラミックを利用したセラミックセンサについても開発を進めています。現在より1ケタ、2ケタ精度が高い高精度・高性能センサはまだ開発段階ですが、来年度にはある程度の形になってくるかなと思っています。

3拠点を軸にグローバル展開

ヨーロッパ市場の拠点

ドイツのドルトムントにあるアナログ・デジタル混合信号半導体メーカーの大手であるElmos Semiconductor AG(エルモス社)と自動車関連で業務提携しています。センサには調整(トリミング)という作業が必要ですが、同社からASICを、また、その子会社であるSilicon Microstructures Inc.(SMI社)から低圧領域の圧力センサの供給を受け、当社で調整やアッセンブリをして市場に供給していきます。
 さらに、ドイツにおいてInteligente Sensorsystem Dresden GmbH(i2S社)と設立した合弁会社JaDe Sensortechnik GmbH(ジェイド)においてアッセンブリをすることも考えています。ヨーロッパ市場を考えてのことです。

3拠点ができた

長野計器は、センサのグローバル展開を進めています。当社は、アメリカ、日本、ヨーロッパの3拠点を軸に展開していきますが、ようやく3拠点がきちんとできたと考えています。
 ジェイドは現在のところ自動車に特化していますが、今後、i2S社とかアメリカのアッシュクロフトのドイツの子会社やADZナガノという出資会社に部品を供給していきます。現地で部品を調達しますと、ユーロ同士なので為替変動の心配がありません。
 コア部品については日本の長野計器が供給していきます。溶接も長野計器の技術ですから、これもジェイドでやりますから当社が掌握することになります。
 すでに事務所も借りて、i2S社の工場設備も借りて動かしています。2015年3月頃から設備投資をしていきます。
 自動車産業には波がありますから、大量のリコールがあったりすると、パタッと止まってしまいます。ぜひ、順調に推移して欲しいと思っています。
 このような進展をふまえて、長野計器は3拠点をフルに使って世界展開をしていきます。

求められる計測器の変化に対応

電子化、スマート化の進展

圧力計測においては、機械式の圧力計から始まり、その後、世の中の電子化の流れを受けて、電子式の圧力センサが開発されました。
 圧力センサになるといろいろなことができます。また小型化ができます。多機能化、小型化がさらに進むと、それを一つにまとめたモジュールとなります。当社にもセンサモジュールがあるのですが、まだ大きく、機能も足りない。そうするとエルモス社のASICやSMI社のMEMS型圧力センサ素子などと組み合わせて新しいセンサを開発することなどができます。
 そういう新しいセンサができてくると、スマート化も進展するようになります。いままでのセンサと異なる機能を持つようにもなってきます。融合化が進んできます。たとえば自動車のフロントウィンドウに、計測値を始めとするさまざまな情報を一元的に表示できるようにもなってきます。次に来るものは五感です。当社でも研究を進めておりますが、将来的に使えるかどうかは、期待はしていますがまだ未知数です。
 どんどん技術が高度化していきます。昔はマシン(機械)だった自動車も、いまや電子部品の塊ですね。センサもそういう流れに引き込まれていきます。
 長野計器も国の研究機関などと連携して、新しいセンサの研究・開発に全力で取り組んでいきます。

「圧力計、圧力センサといえば長野計器」をめざす

−−長野計器はこれからどのようなことをめざすのでしょうか。

素材からの製品開発

おかげさまで自動車用の圧力センサといえば長野計器といわれて、自動車会社からもまっさきに声をかけていただけるようになりました。しかし、これは圧力計、圧力センサができることからいうと、まだまだ部分的なことに過ぎません。
 技術的にも世界の最先端をめざして、「圧力計、圧力センサといえば長野計器」と世界で認められる会社にしていくことが私の目標です。「常に先を見て、先に向かって進もう」というのが大事です。
 当社においてコア技術は自社でしっかり保持し、開発に全力をあげることを堅持して、素材からの製品開発を進めていきます。優れた素材を使うということが非常に大事で、この点では国内の優秀な素材メーカーに大変お世話になっています。当社の各種センサもそうですし、今回の水素関係についてもいろいろとお世話になっています。日本の素材は優秀ですから大いに助かっています。当社としても大事にしていきたいと思っております。

人材の確保

−−その他にお考えになっていることをお聞かせください。

異常な円安など為替レートは気になっています。景気の先行きにも懸念があります。とくに当社の売上に大きく影響する設備投資の推移には注視しています。
 しかし、先ほど3つの拠点のお話をしましたが、生産拠点が海外にあると為替レートの問題などは回避できます。
 しかし、技術の問題はそうはいきません。その地域の要求にあった技術を開発して、製品をつくっていく必要があります。そのためにも現地で優秀な人材を確保することが非常に重要になってきます。グローバル展開には人材の確保が欠かせません。ドイツの拠点でもアメリカの拠点でもそういう人材を意識的に集めています。

−−ありがとうございました。

<<前へ[1 2]


記事目次/インタビューTOP
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.