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流れに価値を加える

(株)オーバル 谷本淳社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.2

日本計量新報 2014年1月1日 (2993号)第2部8-9面掲載

特徴的な製品

ーー紹介いただいた製品の他に、特徴的な製品はありますか。

LNGタンク液密度測定装置LNGタンク液密度測定装置機器構成

液体密度計があります。大きな地下式のLNGタンクがありますね。このLNGタンク内に、いろいろな産地から密度の異なるLNGを受入れると、これらのLNGが十分に混合されずに層状化することがあります。その後急激に層が消滅すると、大量のBOG(ボイルオフガス)が発生する可能性が知られています。この現象をロールオーバーといいます。ロールオーバーが発生した場合、タンク内圧が急上昇し、場合によってはタンクが破損するような極めて危険な状態が引き起こされます。
 ロールオーバー現象を防止する対策の一つに、「タンク受入時に、タンク高さ方向の密度と温度分布の監視」があります。この液密度測定装置は、密度・温度検出プローブがガイドケーブルにそって上下移動することにより、タンクの上部から底部までの密度と温度の分布を測定することができるので、ロールオーバー現象を未然に防ぐ装置として最適です。

小型汎用ボイラー用流量計

小型の汎用ボイラー用天然ガス流量計も製造しています。前年比5割で伸びています。

省エネ管理用流量計

省エネ管理用流量計にも力を入れています。
 省エネ対策は、企業のなかの一人一人の取り組みが大切です。そして、その取り組みの効果をデジタルに数字で示し、活動を数字で評価することが「省エネ活動の広がりにつながる」と考えています。
 当社は、エアー、蒸気、水、油等の計測用に安価な流量計をすべて提供できます。このようなオーバルができる形で省エネの取り組みに参加させていただき、「地球環境を守ろう」という目的に少しでも貢献できればと考えております。

グローバル展開が進展

ーー売上などはどのような状況ですか。

2013年3月期売上高は120億円

2013年3月期実績は、売上高119億9900万円、営業利益3億3600万円、経常利益4億6900万円、当期純利益2億2600万円でした。

比率はセンサ56.4%

製品部門別の売上比率は、センサ56.4%、システム23.7%、サービス19.7%になります。

大規模な流量計測・校正システムを受注

最近、大規模な受注がありました。韓国の大手エンジニアリング会社GSEngineering & Construction(ジーエスエンジニアリングアンドコンストラクション、GSE&C社)から10億円を超える大規模な流量計測校正システムを受注しました。
 今回当社が受注した大規模流量計測校正システムは、サウジアラビアで建設中の石油化学プラントに設置され、石油化学製品の出荷・受入用途に使用されるものです。この大規模流量計測校正システムは、韓国のWOOJIN INC.(ウイジン社)との協業により、製作から検査、試運転まで韓国国内でおこなうことになっています。今後同様のプロジェクトがさらに発展拡大することが見込まれています。
 計量計測器に関するさまざまな海外の規格があります。これらをその国以外の外国メーカーが取得するのはかなり困難で、それで大規模システムに自社製品が組み込めず、収益性が悪化することもありました。今後は自社製品が組み込めるようになってきたので、収益性が改善されることを期待しています。

中国でも流量標準の整備すすむ

中国でも動きがあります。中国もインフラ整備を進めていますが、そのなかで、計量のトレーサビリティ体制の構築も進められています。各省庁で流量標準の整備が進展していますので、当社の標準、精度管理の技術を活かすことができます。

売上は石油分野の比率が高い

2012年度の業種別の売上比率をみますと、もともと当社のオーバル流量計は石油精製や石油取引など石油関係で多く使われてきた関係で、化学や電気・輸送機械、電力・ガス、石油分野の比率が高くなっています。
 逆に、製紙・パルプ、食品・醸造などは低い比率です。この分野をどう攻めるかが今後の課題で、これらの分野向けの製品開発も進めているところです。

輸出は58.2%増

特徴としては、電力・ガス分野は前年度比41.7%増になりました。天然ガス関係が伸びたものです。また、輸出は前年度比58.2%増加しました。過去5年間の業種別売上の推移をみてみますと、やはり電力・ガス分野と輸出が伸びていることが特徴です。

企業価値を向上させる

ーーオーバルの今後の展望をお聞かせください。

オーバルフェニックスプラン2015

オーバルは、中期経営計画「オーバルフェニックスプラン2015」を掲げて、体質改善に取り組んでいます。成長性の向上と、収益性の向上で、企業価値を向上させるということですが、現状の進捗状況も含めて検討し、計画を練り直しながら進めていきます。

設備投資の状況に左右される

われわれは機器の性格上、製造業の設備投資の状況に売上が左右されます。その点で、アベノミクスの成長戦略やオリンピック招致に関連したインフラ整備が追い風になると思っています。

天然ガス関連の売上が伸びる

しかし、こういう厳しい状況のなかでも天然ガス関連の売上は伸びています。天然ガスは、工場間の取引やガス会社が海外のタンカーから受入れるなど、いわばBtoBの関係になります。
 当社はこの分野で高精度の流量計を販売しているわけですが、東日本大震災以降、原子炉の相次いだ停止により火力発電所がフル稼働していることや、シェールガス生産量が飛躍的に増加したり、規制緩和があったりして、天然ガスの事業所間での取引量が増えています。天然ガスにおいては、流量計測のみならず、超音波流量計を使った熱量や密度の測定がおこなわれており、最近は、マイナス163℃の液体状のLNGの流量もコリオリ流量計で測定しています。
 こういう状況もあり、全般的には厳しい状況ですが、天然ガス関連の売上は右肩上がりで伸びています。

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