日本計量新報 2012年9月23日 (2934号)2-3面掲載
「CRIS」で薬品を適正管理
−−薬品の管理システムにも天びんが使われていますね。
薬品の使用量、使用履歴など管理
そうです。当社の薬品の管理システムを紹介します。これは当社の関連会社である島津エス・ディー(株)が開発した「CRIS(クリス)」=Chemical Registration Information System です。
標準的なネットワーク構成を説明しますと、メインに薬品管理用Webサーバーがあります。そして、各ユニット、たとえば大学でいえば研究室ごとに、天びんとパソコン、バーコードリーダーがあります。
このシステムをどういうふうに使うかといいますと、まず薬品を購入したら入庫登録をします。管理用バーコードラベルを貼り付け保管するわけです。以降は使うときに、管理用バーコードラベルを読み取って、使用量を天びん入力、または手入力で登録するだけです。
このシステムを導入することにより、実務作業者や管理者に負担をかけることなく、薬品の使用量、使用履歴、保有量の最新の情報が管理できます。
各種法規制へも万全の対応ができる
各種法規制へも万全の対応ができます。PRTR制度、都条例、化学物質の安全性影響度の評価、毒劇物取締法、覚醒剤取締法、麻薬取締法など、関係法規制に万全の体制で対応できます。PRTR制度というのは、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、事業所からの環境(大気、水、土壌)への排出量および廃棄物に含まれての事業所外への移動量を、事業者が自ら把握し国に対して届け出るとともに、国は届け出データや推計に基づき、排出量・移動量を集計し、公表する制度です。
不用薬品、期限切れ薬品の抽出機能を利用して薬品保有量の削減がはかれることもメリットです。
重大事故の防止に
ずさんな管理により劇薬が紛失する事故が起きています。この薬品管理システムを使えば、そういう重大事故を防止することができます。
島津製作所は、島津エス・ディーとタイアップして、全国の大学にこのシステムを納入してきている実績があります。その際、当社のユニブロック質量センサを使った天びんの使用を薦めています。ユニブロックは頑丈なので、薬品瓶を天びんに落としても壊れることはありません。
現在は大学が中心ですが、民間企業での導入例が増えてきています。もちろん島津製作所も導入しています。
衝撃に強い一体型質量センサ「ユニブロック」
他社天びんと耐衝撃性試験の比較
ユニブロックは頑丈だという話をしましたが、他社の質量センサとユニブロックを同じ条件下で、耐衝撃性試験の比較をしたことがあります。結果は当社の最新の「島津天びん・台はかり総合カタログ」に掲載しています。
事例は、ある製造工場で使用している、ひょう量6200g、最小表示10mgの分銅内蔵型の上皿天びん「UW6200H」と他社製天びんの耐衝撃性の比較です。
耐衝撃性試験は、3kgのおもりを4秒間隔で自由落下させました。落下回数10万回までは高さ5mm、それ以降の1万回は高さ10mmから落として試験しました。
これはその製造工場の製造ラインで起こっている状態そのものなのです。ハンドラーで掴んで製品を天びんに載せる際に、丁寧に置くのではなく、落下して天びんに載るので、他社製品をご使用時にバネ切れの故障が頻発して製造ラインが止まるというトラブルでお困りでした。この工程で使用する天びんには耐衝撃性が求められるのです。
結果は「ユニブロック」の圧勝
試験結果比較は「UW6200H」の圧勝でした。製造現場での耐衝撃性試験で、「ユニブロック」搭載の当社UW/UXシリーズが最も丈夫であるとの結果が出たのです。
「UW6200H」(電磁力平衡、アルミ一体型、ワイヤカット)は、10万回の試験をクリア。さらに追加の1万回の試験でも異常は出ませんでした。
A社の上皿天びん(電磁力平衡、アルミ一体型、ワイヤカット)は、1400回で2段支点バネが破損しました。
B社の上皿天びん(電磁力平衡、組立式、プレス)は、2万2000回で力点バネが破損しました。
C社の上皿天びん(C社独自方式、アルミ一体型、ワイヤカット)は、10万回の試験では異常は出ませんでした。しかし、追加の1万回で計測不能になりました。
この比較試験の結果、製造工場の天びん数百台が島津製作所の天びんに入れ替えられました。
「ユニブロック」はその頑丈さゆえに、お客様の生産工程を止めないなどのメリットも提供しています。
世界へ向かって展開する
−−島津製作所の天びん事業の方針をお聞かせください。
海外で伸びている
島津製作所の天びん事業は海外を中心に順調に伸びています。当社の天びん事業の方針は世界へ向かって展開することです。販売網の整備も進んできました。先ほど紹介しました分析天びんの「Amidia ATX/ATYシリーズ」もどちらかというと海外主導でビジネスを展開しています。
国内も成熟市場ながら着実に伸びていますので、今後、さらに積極的に展開していきたいと思っています。
「MOC63u」も同様に海外市場で伸びています。
中国、東南アジア、南米などで伸び
これらの製品は、とくに中国、東南アジア、南米や中東などで好評を得ています。これらの地域は経済成長率が高い為、よい製品を出すととたんに反応します。
それだけよい製品、便利に使える製品に関する関心が高いといえます。
欧米や日本の市場は成熟市場ですので、これらの地域に比べると伸びは緩やかです。
ただ、成長市場は型式承認などを各国ごとに取得しなければならない場合がまだまだ多いので、ワンストップテスティングの仕組みが早期に整うことを期待しています。
生産はほとんどフィリピン工場で
−−島津製作所の天びんは全部フィリピンで生産しているのでしょうか。
ほとんどの製品はフィリピン工場で生産しています。ほんの一部の製品、たとえば検定対象製品などは最終工程を日本でやっています。
国内外の割合は半々
−−国内市場、海外市場の割合はどのくらいですか。
現在は、金額ベースで、国内市場対海外市場は半々程度です。少し海外の方が多いでしょうか。ここ数年、売上は伸びていますが、まだリーマンショック以前の状況には戻っていません。
円高の影響はない
円高による為替レートの影響はあまりありません。生産のほとんどがフィリピンで基軸通貨はUSドルで設定していますから。
将来は海外割合70%まで
ラボ用天びんの日本の規模は世界市場の約10%ほどです。今後、アジアや南米、中東などの市場に注力して、将来的には、日本市場30%、海外市場70%まで持っていきたいですね。
中国では分析天びんが好調ですし、トルコ、南米、アフリカでも伸びています。
分析天びんの用途は、ラボ、インダストリー(製造ライン)、ジュエリーなどですが、中東でのジュエリーマケットに注目しています。トルコでは、3つの用途とも伸びています。
信頼関係の構築が大事
海外での販路の拡大には、よい代理店の確保が最も重要です。けっきょくは人の繋がりですね。お互いの信頼関係をしっかり築いて、いっしょに発展していきたいですね。
−−ありがとうございました。
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