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「日本発、世界へ」で飛躍はかる

新光電子(株)安西正光社長インタビュー

聞き手は横田俊英論説員

vol.2

日本計量新報 2014年8月31日 (3023号)2面掲載

めざすは計量業界のポルシェ!(2)

−−テレビでも取り上げられましたね。

テレビでは、「TOKYO MX TV」の「中小企業の底ヂカラ」で紹介されました。
 テレビ東京の人気番組「ワールドビジネスサテライト『技あり中小企業の底力』」でも当社の音叉式センサの技術が紹介されています。NHKの子供番組や「ためしてガッテン」でも、当社の高精度電子天びんが使われました。
 これらのマスコミに取り上げられたことで、少しずつ新光電子の知名度も上がってきたと思います。
 お客様からも「見たよ」と声をかけられることがありますね。

モチベーションが高まる

社員のモチベーションを高める効果もあります。
 マスコミに取り上げられますと、従業員がうちに帰って「お父さんの会社はこうだよ」「お母さんが勤めている会社だよ」ということで話題になるようです。そうすると、「お父さんやお母さんの勤めている会社はすごいんだね」ということになって、家庭と会社との距離がぐっと縮まります。先ほどの記念旅行ともあいまって、社員のモチベーションがアップしました。

防水・防塵・防爆の高精度はかりを

使い勝手がよい製品つくる

−−新光電子の技術力についてお聞かせください。

「モノづくり」と一言で言いますが、この「モノ」と「つくる」とを分けて考えています。
 新光電子のセンサ技術は高度な技術だと思っていますが、一方の「モノ」をつくる技術に関しては、まだまだ十分でないものがありますので、もっと「モノ」に注力しようということをやっています。
 現在、ユーザーフレンドリーというか、ユーザーの使い勝手に焦点を当てた製品企画を、ユーザー目線でやろうと進めています。

防爆製品の充実

今後も防爆関連の新製品を開発し、防爆関連製品を充実していきます。
 当社では「プルーフキューブ」と言っていますが、防水性・防塵性・防爆性の「防」3つすべて兼ね備えた新製品を今年出します。防水・防塵・防爆で、620g〜300kgまでのラインナップで、分解能が数10万分の1の高精度はかりです。

防爆製品も海外へ

これら製品は海外市場でも販売することを考えていますので、海外で必要な認証もすべて取得します。防爆製品でも海外市場へ打って出ようと考えています。

−−新光電子が生産するはかりはどのような種類のものでしょうか。

高精度の天びんつくる

さきほど計量業界のポルシェをめざすという話をしましたが、新光電子が生産する主力の計量器は、高精度の天びんとはかりです。精度は低くても数万分の1で、ひょう量も数100gから数100kgぐらいの天びんとはかりです。そして、ひょう量が数100kgあっても、精度は数10万分の1というはかりを生産します。
 これからも、高精度の天びんとはかりの開発に集中していこうと思っています。

音叉式センサ

−−音叉式センサは、すばる望遠鏡に使われて有名になりましたね。

14年経っても問題なし

安西正光社長ハワイ島マウナケア山頂に建設された、当時世界最大の光学式赤外線望遠鏡「すばる」には、当社の音叉式センサが採用されています。
 「すばる」の反射鏡は、口径8.3m、厚さ20cmの超低膨張ガラスでつくられた1枚鏡です。この鏡は自重が23tもあるため、望遠鏡を傾けると自重で鏡面が歪んで焦点が合わなくなります。この歪みをなくすために、鏡面の裏に261本の主鏡能動支持機構があって、これが裏側から力を加え鏡面が歪まないようにコントロールしています。したがって、この支持機構には、きわめて高精度で長期安定性に優れた力センサが必要となります。この力センサとして、数あるセンサのなかから、当社の音叉式センサが採用されました。
 すばる望遠鏡が本稼働を始めてから今年で丸14年経ちますが、全然壊れませんし、スパンも安定していますので、現地からは高い評価をいただいています。

−−音叉式センサが優れているのはどのようなところでしょうか。

スパン狂わず壊れにくい

一言で言うと、「すばる」で証明されているように、長期にわたってスパンが安定しているのと、高精度で壊れにくいことです。これは力センサとして大きなメリットです。
 この「すばる」と同じセンサを天びんやはかりに組み込んでいますので、スパンが安定し壊れにくく、売る側も手離れが良くて売りやすいですし、ユーザーにとっても安心して使える商品ということになります。
 1つのタイプのセンサで、低ひょう量から高ひょう量までの天びんやはかりをつくれますから、生産するわれわれにとっても、非常に使い勝手のよいセンサといえます。私は、音叉式センサはまだまだ成長していくセンサだと思っています。

海外へ論文・資料を提供

日本では音叉式センサの知名度が上がって、製品も数多く使っていただいていますが、世界的な知名度でいうとまだまだで、もっと努力が必要と感じています。
 そこで今後、海外の学会や研究機関、業界団体などへ、音叉式センサに関する技術論文や資料を提供していく体制を整えていきます。
 音叉式センサは日本が開発した独自技術ですから、こういう日本の技術を世界へ紹介することもやっていかなくてはならないと考えています。

防爆製品に最適

さきほど、防爆製品に力を入れるという話をしましたが、音叉式センサは消費電力が非常に少なく防爆製品に最適のセンサです。
 私は社員に、「世界の危険区域は、新光電子の防爆はかりで守る」という気概を持ってやろうと話しています。
 当社の製品は「本質安全防爆」ですから、これは大きなメリットです。しかも音叉式センサは消費電力が少ないので乾電池で駆動できますから、はかりを固定設置する必要がありません。どこの場所に持っていっても使えるという、ユーザーにとって非常に使い勝手がよいのが特長です。

安全意識の高まり

防爆を含めて「安全」に対する意識は、海外でも高まってきています。防爆製品の販売に力を入れていこうというディーラーも増えてきており、海外でも今後もっと拡大していく市場と考えています。

水素防爆の技術

現在の需要の中心は、通常の爆発等級UBのガス防爆ですが、われわれはすでに最も爆発等級が高いUCの水素対応防爆の技術を開発してあります。最近、トヨタ自動車が燃料電池車を発売したり、JX日鉱日石エネルギーが水素燃料ステーション運営や、水素の製造・出荷・配送を手がける子会社を設立すると発表したりしています。
 これらに使用する水素ボンベの内容量の測定は質量ですから、はかりを使うことになります。
 水素ボンベ容器の質量は150kgから200kgぐらいあります。水素は高圧で圧縮してボンベに充填しますが、この充填量が20kgとか30kgほどです。そうすると、正確な内容量の測定には、ひょう量300kgで1目盛が1gというはかりが必要になってきます。これに対応できる防爆仕様で高ひょう量で高精度の計量器が必要ということになり、これらのニーズに十分対応できる技術が当社にはあることになります。こういうように、これからの水素社会など市場の動向をよく見ながら、当社でなければやれない製品、当社ならではの製品を今後も研究開発しつくってまいります。

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