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創意工夫で、何としても勝ち抜く


福山 匡

(株)田中衡機 代表取締役社長

vol.2

日本計量新報 2009年3月29日 (2767号)2面掲載

市場は今は様子見の状況

輸出主導の企業はきつい

−−話題を世界を相手にするハカリ産業のことに移したいと思います。昨年も福山社長とのお話に輸出のことを持ち出しました。「輸出しない会社は伸びない」と。このことは新聞もテレビも昨年はさかんに言っておりました。売り上げの6割か4割かを輸出が占めている企業にとっては、今の円高はきついですね。円高のことを除いてもリーマンショックで市場は一時的に20%へこんでおりますから。

福山匡 そうした20%の需要減退は日本の市場についてもいえることですから、ビジネス環境はよくはありません。日本は比較的堅調であるということになっておりますから、日本より状況が悪い世界でビジネスをしているところは苦労は大きいといえますね。

鉄は急激な需要減


−−今までは、鉄や化学関係の分野はよかったですね。

福山匡 化学、鉄の分野がよかったですね。とくにスクラップ屋さんです。スクラップの価格が7万を超えたのですからね。今は、1万5、6千円です。
 ですからスクラップ屋さんも、高値のときにストックした人は今泣いていますよ。今はスクラップを集める気力がないというのが、正直なところでしょう。

三条も自動車関連の会社が多い

−−三条の産業は何ですか。

福山匡 自動車関係の会社がけっこう多いのですよ。日本一の型屋さんがありますが、自動車関係の型を多く手がけています。そこもかなり打撃を受けています。
鍛造屋さんはこれまではすごかったですよ。昼夜兼行で仕事をしていました。夏のボーナスも組合の要求額を満額出していました。それがリーマンショックの後には「暮れはもうダメよ」ということでした。

自動車産業は縮小へ

−−自動車産業の今後をどう見ますか。

福山匡 縮小でしょうね。
 今までは、鉄の分野はよかったですし、自動車はよかった。

−−昨日、ある人と話をしていたらその人が、あれはトヨタが、ショックに対して、ここぞと酷い状況を出して、人も削減していく、これは工場を合理化するための深慮遠謀の作戦だというのです。

福山匡 それはあるかもしれませんね。愛知県の田原市、ここにトヨタのレクサスを生産する工場があります。この田原市の税収が、トヨタの減産によって何十億円も減るということです。市長は青くなっていると思いますね。

派遣切りが社会問題に

−−自動車産業ではどんどん首切りがされています。

福山匡 政府はどう収拾するのですかね。私が名古屋で聞いたところでは、そういった解雇された労働者がどんどん名古屋へ流れてきています。街の雰囲気なども変わっていくでしょうね。
三条では、幸いにそう酷い話は聞きません。三条も車関連の下請け会社、孫請け会社が多いのです。そういうところがかなり締めていますが、まだそういう話は聞きません。

−−派遣社員がいる企業では、生産調整をする際に、そこが調整弁になるでしょうね。

福山匡 派遣社員、パート、契約社員というのは、企業にとっては安全弁ということです。こういう状態になったときに、まず派遣社員から切るというのは常套手段ですが、あちらでもこちらでも一斉にやったので、社会問題になっています。
 うちにはあまり契約社員や派遣社員はいません。

派遣切りしては企業の志気が上がらない

−−派遣社員は、使うときに決して費用は安くないですね。

福山匡 安くないですよ。保険やボーナスの面で差はありますが。企業にとってのメリットは、切りたいときに簡単に切れるということでしょう。派遣切りは、企業としても社内の雰囲気が悪くなります。正社員までが、明日は我が身かと思ってしまいますから。これでは企業としての志気が上がりません。

現代は鬱の時代

−−作家の五木寛之は、現代は鬱(うつ)の時代だといっています。

福山匡 田中角栄さんが活躍していた時代と比べるとそうでしょうね。若者もはしゃぐということをしなくなっています。じっくり進まなければならない時代でしょう。
 うちは、このほど新規に社員を14、5人採用しました。ですから、頑張らなければいけないわけです。

自動車の需要は低燃費、小型化へ

−−アメリカの自動車産業のビッグ3は、従来の米国文化で従来の車をつくっていくことはまず無理ですね。

福山匡  日本でも、低燃費、小型化へ向かっていますね。国内でも車の販売は2割ぐらいは減っているでしょう。若い人が車を欲しがらないというのですからね。車離れもありますね。  次の主力産業は何になるのでしょうね。

高級品が負ける時代

−−日本経済は、GDPの6割がサービス系の産業です。

福山匡 百貨店の売り上げをコンビニエンスストアが抜きましたね。単価の安い方が勝って、高級品が負ける時代です。

どんな戦いにも勝つことが必要

−−こういう時代には、泥仕合にも絶対勝つことが必要ですね。

福山匡 そうです。どんな戦いにも勝つことが必要です。本当に何であっても勝たなければいけません。知恵の発揮をするときですし、根性を発揮するときです。
 新製品を開発していかないといけないですね。2、3の新製品を準備しています。また既存の製品の単価を下げて、ある程度の数を確保するという方向を出していますが、何としても目的を達成するつもりです。

先が見えないから、みんな締める

−−あるハカリの設備がらみの中堅企業さんは、秋口には、うちはあまり影響がないと言っていました。その後影響が出たかもしれません。

福山匡 先ほども言いましたが、トヨタが締める、下請け孫請けが締める、その関連企業が締めるということで、先が見えないからみんなして締めています。様子見ですね。
 それが我慢できなくなって、何時設備投資を開始するか、ということだろうと思います。
 昨日も地元の町の会合で話をしていたら、電機関係、産業機器関係がダメだから、パーツ関係が動かないと言っていました。

ハカリ産業も今年は減る

−−ハカリ産業は、生産額は10%は減りますか。

福山匡 今年は減っているでしょうね。昨年9月まではあまり悪くなかったですが、11月、12月を勘案しますと、3月までいくと20%くらい減る可能性はあります。3月までは、買い控えが多いでしょうから。
 また、輸出は、先進国、新興国を問わず全般的に悪いですね。ブリックス諸国まで経済が悪くなるとは、誰も思っていなかったですよ。
 韓国は、ウォンの価格が半分になりました。ですから、日本への観光客が減りましたね。去年くらいまでは、九州のゴルフ場へ行ったら、来ているのは韓国人ばかりでした。
 トラックスケールは、ちょっとブレーキがかかってきたという気がしています。各企業とも締めています。必要なものまで、セーブしているという状況です。現場サイドは困っていますよ。

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