創意工夫で、何としても勝ち抜く福山 匡 (株)田中衡機 代表取締役社長 vol.1 |
日本計量新報 2009年3月22日 (2766号)4面掲載
金融ショックに強いハカリ屋はどんな企業か販売だけの企業は苦しい−−リーマンブラザーズの破綻をきっかけにアメリカの金融がおかしくなって、それが日本を含めて全世界に飛び火し国際金融恐慌となり、トヨタなど超優良企業が赤字見通しになっております。為替相場は円高に急激に振れたために通常ならしっかりと黒字が出ているはずの計量器企業も赤字になりそうです。とんでもない状況になりましたが、慌ててもしかたがありません。工夫して新規の市場を探して売り上げを伸ばすことなどを含めた対策をしているのが、計量器企業です。ハカリ産業は2008年10月ころまでは順調に推移していました。その後はガタッと衝撃が走っているようです。そのような状況のハカリ産業、とりわけ地域密着型の地場ハカリ産業のみなさまの状況は、よいところと苦しんでいるところ、さまざまですね。金融ショックが走ってもあまり変動がないハカリ屋は、どういう系統のハカリ屋ですか。 福山匡 検査主体にやっているハカリ屋さんは、あまり変動がありません。売上比率が高いし、中身がいいから。計量器を売るだけの人は、こういうときに参ってしまいますね。 打撃がまともにくるのは設備関連−−金融ショックで世界経済は一時的に20%ほどへこむでしょうから、大打撃になりますね。打撃がまともにくるのはどんな分野になりますか。 福山匡 ドカンと大きな打撃がきて苦しむのは、設備関連を主にやっている企業だと思います。トヨタが締める、そしてその下請け孫請けがさらに締める、それの関連企業がさらに締める、皆お互いに締めて、一斉に発注を止めますから品物が動かなくなります。これは痛いですよ。 メンテビジネスが支える−−ハカリ産業は商品を売る産業でもあるし、その商品には整備事業が付随している、つまりメンテナンスというビジネスを売ることと平行して展開できる。これはすごくよいことです。自動車産業の街の販売店は販売と整備を一括してやっているから生きていけるということがあります。ハカリ産業の総売り上げに占めるメンテナンスがらみの売り上げは確実に15%はあるはずです。 福山匡 ハカリ産業のメンテナンスビジネスの側面はありがたいことです。 地場ハカリ企業から学んだ−−今回の金融ショックはそのように作用することになります。そこが恐いところですね。 福山匡 私が設計から営業に移って全国の地場ハカリ企業を訪問するようになって、お付き合いいただくようになって学んだことはたくさんあります。 売る力とサービス力が必要−−地場ハカリ企業といっても一様ではなく千差万別ですね。地域の産業形態もありますし、経営者の個性もありますし、企業の歴史もあります。 福山匡 ハカリ企業はまずは売る力がないとダメですね。それとあわせてサービスする力がないとダメです。サービスとはメンテナンスなどを含むハカリの面倒をすべてみる力のことでもあります。 計量士を養成している企業が伸びる−−売るだけではダメ、サービスだけでもダメ。営業とサービスをバランス良くやれている地場ハカリ企業が伸びている。 福山匡 そういうふうに見えますね。このバランスが取れていてサービス部門の計量士を養成している地場ハカリ企業はグングン伸びています。 ハカリ産業は700億円規模−−売るだけではバランスが悪いのがハカリ産業ということですね。 福山匡 ハカリ産業は売るだけではダメだということは、それほど規模が大きな産業ではないということでもありますね。年生産額が900億円まで届いて1000億円になるかなと思ったのですが、その後は700億円程度に止まっています。 売るだけでなくメンテサービスを付けなくては−−メンテナンスがされてハカリはしっかりと機能する。自動車も同じです。タイヤが減っていてもオイルがへたっていてもブレーキが効かなくても平気で運転してるたくましい人もいますが、ハカリの場合、正しい目方が出ていなくても何にも気にせずに使っていたら、量目不足の商品をバンバン出していることになる。中華まんじゅうに量目不足があって、回収騒ぎになったことがありましたが、あれはハカリに対する知識不足から生じたことです。ハカリを売る、計量器を売るだけのメンテナンスなしの片側通行のビジネス展開をしている企業は方向転換を求められている。販売をさらに大きく膨らましていくのでなければ、どうしてもそこにメンテナンスなどのサービスを付けていかなくてはならない。 福山匡 ハカリを売るということはハカリをしっかりと使える知識もあわせて提供するということでなければならないでしょうね。その意味ではメンテナンス契約をハカリを販売のときにお願いして、ハカリをしっかりと使っていただくようにする。 営業マンの育成は企業の将来を決める−−よい営業マンが育って、サービスがしっかりできる計量士有資格者の社員が育成できれば、支店や営業所を開設して事業を大きくすることができます。そのようなことができていて波に乗っている地場企業がありますね。 福山匡 売る力のある営業マンを育成する。営業マンの育成は企業の将来を決めます。よい営業マンが育っている企業は伸びています。私たちもこうした鉄則に学んでいかなくてはなりません。 私どもの業績の伸展はそうした地場の計量器産業のみなさまとの提携によって決まるところがあります。 漁港の道路が乾いている−−漁港はハカリが売れるところでした。ところが漁業関係の企業が倒産するなどして漁港でのハカリのビジネスは面白みが薄れております。海辺ではなく、それに付随する工業地帯との抱き合わせで何とか商売になるということになっております。今は昔に比べると、多くの港で漁獲高が減っています。漁港の道路が何時行っても乾いています。 福山匡 そんな話を聞いたことがありますね。港から魚を水揚げして運ぶので、大漁の時には道路の左側は魚から水が垂れて濡れていました。 |