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すべての製品に革新技術を

大和製衡(株) 川西勝三社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.1

日本計量新報 2013年6月23日 (2969号)2面掲載

「技術立国日本」の原点に戻ることが大事

−−現在の産業界の状況をどのようにみられていますか。

世界的に大きな変化が

わたしは、大和製衡(株)の社長であるとともに、計量計測機器メーカーの団体である(一社)日本計量計測機器工業連合会(計工連)の役員であり、また国の計量行政審議会の委員でもありますから、計量計測機器業界全体を意識した活動をしています。
 現在、経済全体をみても、産業界の状況においても、世界的に大きな変化が起きています。

公平、公正な観点で

日本では政権交代がありました。しかし、どこが政権を担おうとも、計量計測業界にとり、国政の基礎である、「国のため、国民のために、公平、公正な観点で事業を進める」ことが重要であることにいささかの変更もありません。
 国の計量に関する政策についても同じです。国策の基本が選挙目当て、国民の受け狙いではいけません。真に国のため、国民のためにという観点で、政策の立案、実行がなされなければなりません。

経済の基本は需要と供給

経済をみても、その時々の状況に関する判断や、それへの対応策などはさまざまあります。しかし、経済の大きな流れの根本は、需要と供給の関係です。個々の経済状況はこの大きな流れの、その時々の発現状態なのです。
 そのような大きな流れのなかで、日本の産業界の立脚点をどこに求めるべきでしょうか。

革新的な計量計測技術を

わたしは、「技術立国日本」、この原点に戻ることが大事だと考えます。今、日本のとくに電気・電子系の大手企業の元気がありませんが、現在でも、日本は技術で世界の先端をいっています。この技術で、日本企業は世界のなかで高いポジションを得てきました。
 この技術立国日本ということをわが業界に当てはめると、再度、革新的な計量計測技術を組みあげることになります。そして、それを具現化していくことが今必要になってきています。

デジタル化技術で主力企業の交代が

−−そのためにはどのようにしていく必要がありますか。

日本の企業に急激な変化

日本の産業界が現在求められている課題を先に申しましたが、少し経済界の実情を歴史的に振り返ってみたいと思います。
 現在、日本の企業に急激な変化が起きています。産業界において歴史的にこれまで主力だった企業がサバイバル競争にさらされています。これらの企業は、日本国の産業の根幹をなすとみられていた企業であり、従来、その占める位置や地位が揺るがないものとみられていました。
 その原因の一つには循環経済の流れがあります。その産業分野で、需要が供給を上回っている場合には、そこへ多くの企業が参入してきます。そして今度は、供給が需要を上回るようになってきます。供給過剰になります。この影響も受けながら、とくにこの4、5年大きなサバイバル競争が起きています。

デジタル化技術が原因

さらに、主力企業が急激にダメになる根底には、わたしは共通の論理が存在していると考えています。
 それは高度なデジタル化技術です。これが企業の首を絞める原因になっています。この流れに乗り遅れた企業はその分野で、まず初めに淘汰されます。つまり、この流れに乗らないと企業は生き残れないのです。

デジタル技術はすぐに汎用技術に

ところが、電子化技術というものは、いかに優れた技術であろうと、すぐにその優位はなくなってしまいます。早ければ数カ月、遅くても数年で、先進先端技術が汎用技術、すなわち、どの企業でも持っている技術になってしまいます。電子技術の優位性はあっというまに崩れるのです。
 例をあげましょう。写真や映画用のフイルムの最大手企業であったコダックです。それが写真技術、映画技術の電子化の進展、いわゆるデジタル化により、あっというまに主力企業の座から滑り落ちてしまいました。
 このように、電子化技術の進展により、従来の歴史的な主力企業が、もはや主力企業ではなくなっているのです。テレビ業界での、液晶のシャープ、プラズマのパナソニックにも、同様のことが起こったのです。

デジタルはだれでも参入できる

デジタル技術はだれでも参入できるのです。カメラを例にとると、カメラは元々はメカの技術でした。レンジファインダーによる撮影対象物の距離の測定、シャッター速度の制御など、すべてメカ技術です。これはノウハウが必要ですからカメラメーカー以外の他分野の会社がカメラ産業に参入するのは難しかった。それがデジタルカメラになると、従来のカメラメーカーだけでなく、パナソニックなど、これまでは家電製品をつくっていた企業がカメラ産業に参入しています。
 時計、録音機、電話など、皆同じ道をたどっています。メカ技術の比率が急激に下がったために、だれでもが高い品質の製品をつくることができるようになりました。宮大工的、職人的なノウハウを必要とするメカ技術は急速になくなっていきました。

メカ技術が重要な分野も

一方、自動車業界はどうでしょうか。エンジンやトランスミッション、サスペンション、方向制御など、メカ技術の比重が高いですね。そして、現在の方式の自動車であるかぎり、機構上、これらのメカ技術がなくなることはありません。メカを制御するために電子技術の比率が高まっていますが、可動部があるかぎり、メカ技術の重要性は変わりません。

メカ技術は差別化できる

そして、メカ技術にはノウハウが必要であるために、企業が保持する高いメカ技術は、企業間の格差になってきます。
 コピー、プリンター、包装機械などの設備機器なども自動車と同じですね。このようなメカが主体の産業は、安定的な成長をしていくことができます。それは、電子化技術はすぐにまねができるが、メカ技術はなかなかまねができないからです。
 したがって、このメカ技術の占める比率の違いで、業界格差がでてきています。電子技術の比率が高い企業は、リスキーな企業といえます。
 つまり、これは産業を貫く共通点としてとらえなければならないということです。

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