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日本計量新報 2017年7月23日 (3157号)

ラジオを造る国から保険を売る国に変わった日本

日本でにぎやかなのは県庁所在地などの大都会である。札幌、仙台、埼玉、千葉、東京、横浜、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡といった行政の要衝地と大都市圏には人があつまっている。青森市からすこし離れるとひなびた農村風景が広がる。ひなびたとは今ではさびれたという言葉でおきかえたい。それは秋田でも盛岡でも同じである。福島県は郡山市が福島市にまさる勢いであり珍しい。

大都会の摩天楼がなぜできあがるのか。建設会社がむりやりビルを建てているからだと言いたくなる。都市に人が集まるというのが理屈抜きの今の世の中である。工場ではない機能を求めて都心に高層ビルが建ちつづけ、そこに通う人が周辺に住む。その動きがつづいて摩天楼の都市ができあがる。

農林漁業は都市ではなりたたない。鉱工業も同じである。都心の建設現場には周辺の下請け業者がビル建設のために高速道路を走る。これ以外の産業が第3次産業になる。農林漁業は第1次産業、鉱工業と建設業は第2次産業である。建設国家日本では農村地帯に多くの自営建設業が開店休業の状態で存在していたが閉店の動きが急である。

 就業人口は第3次産業は4138万人(67??3%)であり、第2次産業は1592万人(同25??9%)、第1次産業は315万人(5??1%)というのが、2005(平成17)年時点の統計であり、その後も3次産業への人の動きがつづいている。第3次産業とは何なんだろう、ということを身の回りのことやそれぞれの経験を元に考えたらいい。

高校生がアルバイトをする先はコンビニやスーパーなどである。家計収入を補う女性の働き場所も同じだ。このことを数字が示す。就業者数でもっとも多いのは「卸売??小売業」で1110万人(18??1%)、つづくのは「製造業」で1046万人(同17??0%)。サービス業としてさまざまな分野があり、「電気??ガス??熱供給??水道業」「情報通信業」「金融??保険業」「不動産業」「教育??学習支援業」「複合サービス業」「公務」などがあり、「卸売??小売業」とあわせて第3次産業就業人口を構成し4138万人(67??3%)となる。

増加が顕著な職業は「ホームヘルパー」が144??9%増、次いで「介護職員(治療施設,福祉施設)」が94??9%増,「自動車組立作業者」が40??0%増(2000〔平成12〕年〜2005〔平成17〕年の増加率)であり介護保険法の成立が作用する。いろあいが違うが「労働者派遣業」が131??1%増であった。すぐつける職業としてコンビニ店員と介護職員という状況は今もつづいている。

地域別の就業率は地域の特性を示す。「製造業」の比率がもっとも高いのは滋賀県で26??5%。「卸売??小売業」は福岡県で20??6%。「情報通信業」は東京都が6??8%と最も高く、ついで神奈川県が5??9%、千葉県が4??3%、埼玉県が4??0%と首都圏の13県のみが全国平均(2??7%)を上回っている。以上の数字は総務省統計局の資料による。

日本の大都会の摩天楼の増殖の秘密を解くために総務省統計局の産業統計に分け入った。ソニーはトランジスタラジオをアメリカに売った。そのソニーは家電では稼げなくなって保険を売って利益をだしている。スイスは日本に保険を売っている。日本から世界に保険を売ることは想像しがたい。GDP6割を個人消費が占めていて鉱工業の産業比率が下がっている。この状況では日本は輸出型の経済とはなりにくい。日本はGDPの規模が世界第3位で、公共投資によるGDP水増分を差し引くと第2位の中国の実体経済があやしくなる。日本の国内消費の規模の大きさはそれで十分であるとはいえないまでも、不十分ではない。日本経済は内需型経済に移行しているようだ。

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