式典の様子
経済産業省・計量記念日組織委員会が主催する「2018(平成30)年度計量記念日全国大会」が11月1日、東京都港区のホテルインターコンチネンタル東京ベイで開かれ、全国から計量計測関係者が多数集まった。
大会は計量記念日式典、記念行事、レセプションの3部構成。記念日式典(経済産業省主催)では経済産業大臣表彰(計量関係功労者)と産業技術環局長表彰(計量制度運営等貢献者)の表彰式が、記念行事では「計量啓発標語」と「何でもはかってみようコンテスト」の表彰式が挙行された。
特別講演は、中川毅氏(立命館大学総合科学技術研究機構・古気候学研究センター長・教授)による「7万枚の縞を数える―福井県の「泥」が世界の「ものさし」になるまで―」。レセプションで交流を深めた。
記念行事では、鍋島孝敏計量記念日組織委員会委員長(日本計量振興協会会長)があいさつした。
公募した「計量啓発標語」は499点の応募のなかから最優秀作品賞1点、優秀作品賞2点、佳作10点が選定され、入賞作・入賞者が表彰された。
【最優秀作品賞】「計量の 精度が支える 先端技術」牛田正行(愛知県、会社員)
【優秀作品賞】▽「計る目で 即座に摘める 危険の芽」今井東彦(東京都、会社員)▽「次世代へ 守り伝える 確かな計量」脇本啓子(奈良県)
小学生から公募していた「何でもはかってみようコンテスト」で、104点の応募のなかから最優秀作品賞1点、優秀作品賞3点、奨励賞13点が選定され、入賞作・入賞者が表彰された。北森俊行審査委員長が、作品の概要を紹介しながら講評した。
【最優秀作品賞】「パラボラアンテナは何でも1点に集めるのかな?」藤東佑和(福島大学附属小学校4年)、藤東啓和(同1年)
【優秀作品賞】▽「いろんなはっぱの大きさと重さを測ろう」櫻井懸(大阪府泉南郡熊取町立西小学校6年)▽「はかってみよう!わたしの家のプラスチックごみの量」山岸いそら(福島県福島市立庭坂小学校6年)、山岸龍馬(同2年)▽「歯ブラシのじゅ命は、どれ長い?」河野煌介(広島県呉市立長迫小学校6年)
特別講演は、「7万枚の縞を数える―福井県の「泥」が世界の「ものさし」になるまで」(中川毅立命館大学総合科学技術研究機構・古気候学研究センター長・教授)。
講演の概要は次のとおり。
日常の時間を計るのは時計だが、地質学が扱うような遠い過去の時間を測るには、どうしたらいいのだろうか。
地球がまだ氷期だったころ、桜島の近くの海底で巨大な火山噴火があった。噴出した火山灰は、九州では10m以上、近畿地方でも数十cm、秋田県ですら数cmの層になって降り積もった。この「事件jは、かつては2万1000年ほど前だと考えられていたが、その後2万4000年前、2万8500年前など、さまざまな学説が提唱された。
それが今年、かなりの確かさで、3万0078プラスマイナス48年前であると明らかになった。決め手になったのは、日本のある湖から発見された「泥」だった。
「泥」を材料に、世界中で使われる「時間のものさし」を作り上げた。この「ものさし」の誤差は、4万5000年でプラスマイナス84年。1日に2分41秒しか狂わない時計と同じ精度だ。4万5000年というとてつもない時間を考えると、非常に正確な世界標準の「ものさし」(放射性炭素年代測定の較正表)ができたことになる。
2012年9月23日、この水月湖のデータが中心となって放射線炭素年代の新しい較正曲線「IntCal13」が「Radiocarbon」オンライン版(IntCal13特集号)に掲載された。過去約5万年の時間を測るための世界標準の「ものさし」が完成したのである。
中川氏は、ここにいたる若い研究者たちの、地道で堅実な奮闘の物語を紹介した。
2018年9月15日、水月湖がある福井県に「年縞博物館」が開館した。45mにおよぶ年縞が展示されている。
【講師プロフィール】1968年東京都生まれ。1992年、京都大学理学部卒業。1994年、同大学院修士課程修了。1998年、工クス・マルセイユ第三大学(仏)理学部博士課程終了。Docteur en Sciences(理学博士)2000年、国際日本文化研究センター助手、2003年、ニュー力ッスル大学(英)講師。2006年より現在まで、水月湖年縞国際プロジェクトのリーダー。2009年にニュー力ッスル大学(英)教授。2014年、立命館大学に新設された「古気候学研究センターjのセンター長として帰国、現在に至る。専門は古気候学、地質年代学。2013年、大和エイドリアン賞。2017年、講談社科学出版賞
【著書】▽『時を刻む湖』(岩波科学ライブラリー、2015年)▽『人類と気候の10万年史』(講談社ブルーパックス、2017年)
第3部はレセプションを開催し、計量関係者が交流を深めた。
肥田敬夫日本計量振興協会副会長(計量記念日実行委員会委員長)があいさつした。
来賓を代表して、渡邊昇治審議官(産業技術環境局担当)と臼田孝産業技術総合研究所計量標準総合センター長があいさつした。
乾杯の発声は、山田英司日本電気計器検定所専務理事。中締めは、松村徹日本環境測定分析協会会長。
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▽市川由雄(前日本圧力計温度計工業会専務理事)▽押本惠一((一社)福岡県計量協会会長)▽加賀眞一((株)加賀代表取締役社長)▽谷本淳((株)オーバル代表取締役社長)▽西本維文((株)誠和商会代表取締役社長)▽長谷川憲司((株)墨田キール代表取締役)▽保母敏行(東京都立大学名誉教授)▽増田典((一社)京都府計量協会副理事長)▽水越靖(東洋ガスメーター(株)代表取締役社長)
<表彰理由>計量関係事業者、計量関係団体の職務において、多年にわたって計量関係事業の発展、計量器の発達・改善、計量思想の普及または計量行政の運営等に尽力し、その功績が顕著である。
【計量士国家試験貢献者(2名)】▽五反田哲郎(元通商産業省工業技術院機械技術研究所極限技術部振動制御研究室主任研究官)▽堀内竜三((国研)産業技術総合研究所計量標準総合センター分析計測標準研究部門音響超音波標準研究グループ長)
<表彰理由>計量士国家試験の委員として、多年にわたり計量制度の運営等に尽力し、その貢献が顕著である。
【その他計量制度の運営等に特に貢献した者(13名)】
▽恵田豊((株)三越伊勢丹食品・レストランMD統括部付、一般計量士)▽大野武((一社)千葉県計量協会理事)▽岡澤剛((独)製品評価技術基盤機構認定センター参事官)▽岡田延彦(大阪計量士会常任理事)▽奥村元(日本製粉(株)生産・技術本部生産・技術部、一般計量士)▽加藤徳文(福島県計量士会常任理事)▽河俣喜久(三重県計量協会、一般計量士)▽粂正光(愛知県計量士会、一般計量士)▽酒井忠(一般計量士)▽寺尾??哉((国研)産業技術総合研究所計量標準総合センター工学計測標準研究部門総括研究主幹)▽永井洋文((一社)東京都計量協会指定定期検査機関部課長)▽花田努(宇部興産(株)宇部ケミカル工場設備管理部、一般計量士)▽和田俊之((株)寺岡精工知的財産規格部課長)
<表彰理由>計量制度の運営等に関して適正計量管理事業所計量管理貢献者等の局長表彰対象者と同等の貢献をし、その功績が顕著である。