雨の多い季節になりました。
雨の中を出掛けなければならない日は憂鬱になりますが、出先で雨上がりの空に虹がキレイに架かっているのを見つけたりすると、
「ちょっとラッキー♪」
と思うこともありますよね。
ところが、心和ませる虹も、必ずしも良いイメージのものとは限らないようです。
虹の語源には諸説あるようですが、「万葉集」では虹は「ヌジ」、日本霊異記では「ニジ」とあり、池や沼にいる主(ぬし)の語源と一緒だという説があります。
昔の人は、虹を恐ろしい霊物に例えていたのでしょう。
また、「ヌジ」という言葉は、蛇類を表す古語ナギ(ナジ)に通じるという説も。この「虹=蛇」という考え方は、全国のみならず全世界的に見られる考え方でもあります。
沖縄では、虹は雨呑み者(アミヌミヤー)と呼ばれる赤まだらの蛇だとされていました。このアミヌミヤーが天の泉の水を飲んでしまうため、下界に雨が降らなくなると言い伝えられていました。すなわち、虹は干ばつの先触れと思われてきたのです。
そこで、虹は決して指さしてはいけない不吉なものとされてきました。
お隣の国、中国では蛇よりもダイナミックになり、虹霓(こうげい)と呼ばれる雌雄の龍だとされていました。虹が雄で、霓が雌。雨によって天地が結ばれ、竜が水を飲みにくるときに虹ができるのだそうです。
虹が出ると戦乱が起きるなどの凶兆ともされましたが、一方で竜(虹)に感じて聖王を孕むといった吉兆を示すこともあり、吉凶両方の言い伝えが残っています。
これがヨーロッパ諸国になると、俄然ラッキーの象徴として捉えられることが多いようです。
ドイツの伝承によると、虹の根元には金のカップがあるとされています。虹は水を飲みに天から現れるのですが、虹が水を飲んでいる間に虹の根元に辿り着ければ、そのカップを手に入れることができるのです。一生、持ち主に幸運をもたらし、手放すとたちまち不幸に見舞われるというカップ。フランス、ブルガリアでも同様の話があります。
実は、ヨーロッパのように虹と富を結びつける考え方は、中国や日本にもあります。中国では、虹が釜の中の酒を飲みに来て、あとに金塊を吐いていきます。日本だと、虹の根元を掘ると財宝が出てくるといった話になります。
このように、昔から吉凶両方のイメージで捉えられてきた虹。虹のメカニズムが解明されている今でこそ、美しいものとして鑑賞できますが、昔は畏怖の対象として、恐れ、また崇められてきたのでしょうね。
もっと詳しく知りたい方はこちらへ
虹を指さす禁忌の話(円環伝承)
虹のカップの話(円環伝承)
虹(ざつがく・ザツガク・雑学!)
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