日本計量新報 2015年9月27日 (3074号)6面掲載
ノルウェー映画
「1001グラム ハカリしれない愛のこと」
鑑賞のお誘い
元(社)日本計量振興協会専務理事 佐藤克哉 |
計量にまつわるノルウェー映画「1001グラム ハカリしれない愛のこと」が、10月31日(土)にBunkamuraル・シネマほかで全国公開される。ノルウェー計量研究所と国際度量衡局(BIPM)を舞台にしたノルウェー娘とパリ男の恋物語だが、計量研究所とBIPMの活動の様子がよくわかる。話題として、キログラム原器の国際比較が取り上げられ、アボガドロ定数とワットバランスの話が出てくる。通常の検定業務も出てくる。計量をテーマにした映画はなかなかないが、産総研計量標準総合センター(NMIJ)の協力も得ているなど、この映画は計量標準にとっては、結構有益な広報媒体だといえる。この映画の監督は、計量という精密な計測の世界があることをラジオで知ったのが始まりで、その後旅行の際、計量研究所の建築を手がけた女性と出会い、その縁で計量研究所を見学したことが、この映画の制作につながったそうである。もちろん柔らかい話題もたくさんある。まずは、タイトルにも関係があるのだが、「魂の重さはどれほどか」という疑問。これは20世紀初めのアメリカ人医師の論文による。彼の実験によれば、魂の重さは21gだそうである。死んでいく人の重さを量るのが難しく、色々な失敗のあげく、唯一得た値が21gだったという話。この説をどう映画に反映するかが1つの見所。さらに人体をもとにした計量単位の話も出てくるが、微妙な個所の長さが出てきため、映画は保護者付き指定(PG12)になったとか。無粋というか、杓子定規というか。それと意外だが、欧州の計量研究所ではギャンブルマシーンの評価をおこなうところがある。この映画でも、抽選器に使うボールの評価プロジェクトが登場する。日本の計量機関でこの種の評価はおこなっているところはない。
実は、ひょんなことから、この映画の字幕監修をお手伝いしたのだが、計量の広報に絶好な映画と思われるので、広く紹介したいと、投稿した。もともとはフリーランスとして計量計測分野で活躍している内田智之さんから持ち込まれた話である。内田さんは校正、不確かさ評価などのコンサルタントだが、映画青年でもあり、東京国際映画祭に毎年参加していたが、昨年の映画祭で「1001GRAMS」に出会い、監督や主演女優とも知り合った。さらに映画に興味を持った彼は配給会社と接触し、字幕について相談を受けたそうだが、日本NCSLI幹事会の席で、彼からアドバイスをといわれて、首を突っ込んだ。そうはいっても、字幕の妥当性の確認を求められた程度だったが、計量の用語をどうするかが多少議論になった。たとえば、原文では「キロ原器」とあったが、日本語としては、「キログラム原器」でないとわからないだろうし、また「PTB」や「NMIJ」などを「ドイツ」と「日本」と訳し直す方がよい等である。「アボガドロ定数」と「ワットバランス」等の専門用語は、字幕字数の関係から説明は難しく、観客には新しい研究課題らしいと割り切ってもらうしかないとなった。字幕字数の制限もあり、字幕作りの困難さがよくわかった。東京国際映画祭での「1001GRAMS」については、昨年12月21日の本紙に産総研の切田さんが紹介記事を載せている。この映画が、いよいよ一般公開されることになったので、どうぞ、楽しく鑑賞されることをお勧めいたします。 |
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映画「1001グラム ハカリしれない愛のこと」
Bunkamuraル・シネマなど全国11劇場で10月31日(土)から順次公開
映画「1001グラム ハカリしれない愛のこと」
公式サイトURL:1001grams-movie.com/
<キャスト>
◎マリエ…
アーネ・ダール・トルプ(Ane Dahl Torp)
◎パイ…
ロラン・ストッケル(Laurent Stocker)
◎アーンスト・アーンスト(父)…
スタイン・ヴィンゲ(Stein Winge)
<監督&脚本&製作>
ベント・ハーメル(Bent Hamer)
<ストーリー>
計測のエキスパートが計らずもパリで見つけた心のハカリとは?
マリエ(アーネ・ダール・トルプ)は、ノルウェー国立計量研究所に勤める科学者。スキージャンプ台の長さからガソリンスタンドの計器のチェックまで、あらゆる計測に関するエキスパートだが、結婚生活は規格通りにゆかず、現在離婚手続き中。そんな折、重さの基準となる自国の《キログラム原器》を携えてパリでの国際セミナーに代理出席することになる。1キログラムの新しい定義をめぐって議論が交わされるパリで、"パイ"(ロラン・ストッケル)という名の男性と出会うマリエ。パリの街角で見つけた、今までの幸せの基準を一新する、心のハカリとは?
■アカデミー賞外国語映画部門〈ノルウェー代表〉に選ばれた話題作!
『ホルテンさんのはじめての冒険』や『キッチン・ストーリー』で愛すべきオジサン主人公たちを生み出し、日本でも多くのファンを持つノルウェーのベント・ハーメル監督が、初めて美しい女性を主人公に、北欧からパリへ舞台を広げて描く最新作。可笑しみに彩られた独特の世界観を今作でも存分に披露している。また、実在する「ノルウェー国立計量研究所」とパリ郊外にある「国際度量衡局」での撮影が許可されたことが、重さの概念すら抱かなかった私たちをより深く未知の世界へと導いた。
■ほんの少し見方を変えれば、新しい目盛りが新しい人生を示すかも!?
ノルウェーの人気女優アーネ・ダール・トルプが、"笑わないヒロイン"マリエを好演。周囲の何もかもが"壊れゆく"と悩むクールな理系女子が徐々に修復され、やがてパリで見せる柔らかな表情に観客の心もほっこり。人生は予測不能で計り知れないからこそ、モノのはかり方をほんの少しだけ変えれば、マリエのように新たな愛を発見できるかもしれない。本作は、そんなステキな可能性を誰もが秘めていることを私たちに気づかせ、「幸せをはかる方法はひとつじゃない!」と勇気を与えてくれることだろう。
◇劇場情報◇
一般1500円(税込)で、前売券絶賛発売中!(当日は一般1800円)
また、劇場窓口で鑑賞券をお買い求めの方には、「オリジナル・ポストカード」をもれなくプレゼント!
(上映劇場が変更となる場合がありますので、鑑賞の前に必ず各劇場にご確認ください)
【劇場(劇場名=地域/問い合わせ先/公開日の順)】(◎の劇場で特典付き鑑賞券を販売)
◎Bunkamuraル・シネマ=東京(渋谷)/電話03-3477-9264/10月31日(土)
◎シアターキノ=北海道(札幌)/電話011-231-9355/11月28日(土)
◎伏見ミリオン座=愛知(名古屋)/電話052-212-2437/11月7日(土)
◎シネ・リーブル梅田=大阪(梅田)/電話06-6440-5930/10月31日(土)
▽京都シネマ=京都(京都)/電話075-353-4723/10月31日(土)
◎シネ・リーブル神戸=兵庫(神戸)/電話078-334-2126/11月
◎サロンシネマ=広島(広島)/電話082-962-7772/11月21日(土)
◎シネマ・クレール=岡山(岡山)/電話086-231-0019/12月5日(土)
◎KBCシネマ1・2=福岡(福岡)/電話092-751-4268/11月21日(土)
▽天文館シネマパラダイス=鹿児島(鹿児島)/電話099-216-8833/12月12日(土)
▽桜坂劇場=沖縄(那覇)/電話098-860-9555/11月21日(土)
(映画「1001グラム ハカリしれない愛のこと」公式サイトより抜粋) |