日本計量新報 2015年9月27日 (3074号)8面掲載
書評 『図解 よくわかる測り方の事典』(星田直彦著)
東京学芸大学名誉教授、日本計量史学会理事 大井みさほ |
「測り方の事典」というタイトルを見て連想したものと中身は大きく違っていた。それは「はじめに」をていねいに読んだところで納得した。要するにアバウトな値でいいから実際の大きさを実感できることがとても大切ということなのだ。数学の先生で、「身近な疑問研究家」の著者は次のように述べている。
「およその値」でも構わないのです。この本を読んで「およその値」を素早く知る方法を身につけ、現実と数字をバランスよく見通せる「できる人」を目指しましょう!
それなら私も得意だ。いつもあちこちで使っている。重さ当てクイズで賞品をもらったこともある。しかし読んでいくとわたしどころではない。著者はとてもたくさんの項目を用意している。だからこそ事典というのだろう。
読んでいると、その通りと思ったり自分ならこうすると思ったりした。印象に残ったものをいくつか紹介しよう。
まず「第1章身近なモノで測る」では身近なものの長さや重さがたくさんあげられている。便利だと思ったのは、昔と違い、いつも持ち歩く携帯電話などをあげていることだ。著者は携帯の裏に重さを書いたメモを貼っているというが、私も同様のことをしている。例えば料理用の容器や水やりのジョウロに目盛の印を貼っている。
「第2章算数・数学の初歩でグッと差をつける」ではLサイズとMサイズのピザでは直径が1.4倍にさらに面積は約2倍になるからカロリーの取りすぎになる話が出ている。
私は先週リンゴを買いに行って、目算で直径が10:7の2種類のりんごをとっさに体積の比が約10:3.5であることを計算し、両者の値段を比べて大きいりんごの方を買ったのを思い出した。知らなかったのはケーキを7等分する方法だ。うちは7人家族で、バースデーケーキを切るときがまさにこれだ。
この本では8等分に折った折り紙の3角形ひとつを切り落としてつなげる方法を述べている。正方形の紙を半分に折り、また半分に折って正方形にし、それを斜めに折って2等辺三角形にする。それを広げると8つの2等辺三角形が現れる。その1つを切り落としてつなげると、7本の筋の入った笠になる。竹串などでケーキの中央に立てて、筋ごとに切れば7等分になるというのだ。
なるほどと納得。私なら7等分にするときは8等分なら45度、6等分なら60度だから、まずはその間くらいの50度よりちょっと大きいかなと思う程度で中央上部分から1切れ切りだす。残りを半分に切り、その半分を両方とも3等分ずつにする。こうして7切れをつくっている。もっとも家では8等分して誕生日の人が2切れ取ることが多いが。
「フェルミ推定」というのを使って日本に郵便局はいくつあるかを推定するのも面白い。いろいろなモノのおよそのデータはわかっているから、平地では何キロメートルに1個、山地では何キロメートルに1個と推定して、平地と山地の面積データから郵便局数を推定している。推定値は2万9000カ所となり、実際の2万4182カ所というデータにかなり近い値を出していた。
フェルミ推定に便利なデータ例がいくつかあがっていた。そのなかに小学校数が約2万2000校とあった。自分の町を考えると、小学校の数と郵便局の数は同じくらいではないかと推定した。これだと一発で郵便局数が推定できるね。本に述べられている計算は例として著者は挙げたわけだけれど、私は計算途中で間違えそうな例だ。
こんなふうに著者にはわるいけれどちょっと議論をふきかけながら読んでいくと、とても楽しい。一読をお勧めする。
【書名】図解 よくわかる測り方の事典(角川新書)
【著者】星田直彦
【発行所】(株)KADOKAWA
【発行日】2015年8月10日
【判型】新書判
【定価】本体900円(税別)
【目次】
▽はじめに=混沌とした現実を少しでもクリアに▽第1章=身近なモノで測る▽第2章=算数・数学の初歩でグッと差をつける▽第3章=「自然」を測る▽第4章=人に教えたくなるこんな測り方▽第5章=あなたの知らないはかりと測り方の話▽おわりに=自分で測ってみよう!▽さくいん▽参考文献・参照サイト |