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2021トップインタビュー

新光電子株式会社 坂本慎介社長に聞く

「新技術の活用で飛躍はかる」

聞き手は高松宏之編集部長

日本計量新報 2021年4月25日 (3331・32) 7面掲載

◎新しい業務スタイルをつくる



――貴社の現状をお聞かせください。

■コロナ禍が海外売上に影響

 ここ数年は売上を順調に伸ばしてきていました。

  今期は、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響があり、とくに2020年度の上期に海外での売上が落ち込みました。

  下期は例年並みに戻ってきています。したがって、今期の売り上げは約10%の下方修正を予測しています。

  ただ、コロナ禍の推移によっては先行き不透明な状況もあります。

■われわれ自身が変わっていく

 今後については、企業は環境適応業ですから、こういう環境に適応して、われわれ自身が変わっていくほかはないと考えています。

■開発畑の出身

 私は、2020年12月に新光電子の社長に就任しました。

  当社の親会社であるイシダの出身で、イシダでは30年以上にわたって開発担当を担ってきました。イシダのほとんどの製品の開発に携わりました。

  新光電子は茨城県下妻市に開発拠点のつくば事業所があるので、私はほとんどの時間はそこに常駐して開発の指揮を執っています。つくばから会社全体を統括しているという形になります。

■海外拠点とのコミュニケーション密度高まる

  コロナ禍の状況の中で、当社も営業関係はテレワークやオンラインの体制を構築して、危機管理をしながら業務を進めています。

  むしろ、海外の拠点などとは、これにより、従来よりもコミュニケーションの密度が高まっています。

  こういう機会に、働き方も変えていかなくてはならないと考えています。

■ホームページやYouTubeを活用

  国内関連でも、なかなかお客様のところへ赴けないので、ホームページを強化したり、YouTubeなどの動画を活用してのプロモーションであるとかを工夫してやっているなかで、新光電子の認知度も上がりつつあると感じています。

  お客様を訪ねてのセールスは最重要ではありますが、環境に適応して、まずわれわれを知っていただいて優良なお客様を掴んでいくという、いわゆるインサイドセールスに注力していきます。

  対面接触とリモートワークの使い分けをきちんとして、成果をあげていきたいと思います。

◎顧客密着で製品開発

――貴社は技術力の高さが著名ですが、製品開発についてお聞かせください。

■新型センサー、新型天びんを開発

  ここ数年の大きな投資で研究が進展し、新型センサーの開発や新型天びんの開発を進めてきています。

■効果的に製品投入を

  コロナ禍の推移などの状況も見極めながら、効果的に市場に製品を投入していきたいと考えています。

お客様の要望を捉えて製品開発

  私がイシダで学んできたことは、ものづくりに関してはお客様に密着してお客様の要望を捉えて製品開発をするというものです。

  新光電子でもこういう考え方を浸透させて製品開発を進めていきます。顧客密着で、それをどう製品開発に結びつけていくかということに注力していきます。

  天びんなどは、販売会社を通じてお客様のところへ商品が届けられますので、当社の社員が直接お客様のところまでお訪ねする機会は少なくなります。そのあたりの改善が一つの課題かなと捉えています。

防爆関連製品に注力

  防爆関連の製品に注力しています。

  これらはお客様のところを訪ねる機会も多いですから、お客様の要望をよく捉えて対応していくことができます。

  そういう商品群を今後増やしていくつもりです。

■音叉式センサーはオンリーワン技術

  新光電子は、音叉式センサーを世界で初めての、そして唯一の技術として開発してきました。新光電子が世界に誇るオンリーワンの技術です。

  周波数は形状と材質だけで決まる単純な構造であるため、温度変化や経年劣化にも強く、正確で丈夫なのが特長です。

  新光電子といえば音叉式センサーと言われるゆえんです。

  ですから、新光電子はこの技術に関するプライドがあります。

  ただ、はかりの技術では、他にロードセル(ストレインゲージ)式とフォースバランス式があります。

■用途に合わせて使い分け

  ロードセル(ストレインゲージ)式は、安価ですが、精密計測にはやや不向きです。フォースバランス式は高精度ですが、コストが高いという欠点があります。

  従来は、こういう特長による市場の棲み分けができていました。ただ、現在は、ロードセル(ストレインゲージ)式は高精度化が進展しており、フォースバランス式もコストダウンが進んできているので、長期的に見れば、現在の音叉式センサーの優位性はだんだん小さくなっていくと考えています。

■音叉式センサーの見直し

  そこで、われわれはこの音叉式センサーを見直していく必要があると考えています。

■音叉式センサーの強み活かした製品開発

 その第一は、音叉式センサーの特性を最大に活かす製品開発です。

 音叉式センサーの、他のセンサーではマネができない特長の一つに「低消費電力」があります。これは他のセンサーの追随を許しません。

 ですから、この特長を活かした高精度の防爆関連製品の開発など、音叉式センサーの強みを活かした製品開発をしていきます。水素社会への貢献も視野に入れています。

  防爆関連製品は防爆認定を取得しなくてはなりません。この取得プロセスに時間とお金がかかることが、多様な製品開発のネックになっていますので、なんとか改善できないかと考えています。

■多様な製品展開

  第二は、多様な製品展開です。

 われわれには音叉式センサーの製品ばかりではなく、ロードセル(ストレインゲージ)式やフォースバランス式の製品群があり、多様な品揃えをしています。

 つまり、お客様が要望する製品群をそろえておくことが重要です。

 これら用途に合わせての使い分けに関しても、見直していきます。適材適所で使い分けることが必要です。

■イシダグループ全体のシナジー効果に貢献

  新光電子はイシダの子会社ですが、かなり独立して業務を遂行してきました。

  今後は、新光電子がもつ独自技術を、もっとイシダグループ全体のシナジーを惹起できるものにしていきたいと考えています。

  現在、自動はかりの検定制度が構築され、体制整備が進められています。イシダが製作しているウエイトチェッカーのエンジン部分であるセンサーは新光電子が供給しています。新制度での台数増を見込んでいます。

■やわらかさセンサーの医療分野への応用めざす

  イシダは、医療市場の拡大を目指して、イシダメディカルという会社を設立しています。この会社と連携して、新光電子が開発した「やわらかさセンサー」を医療分野に応用できないか、研究開発を進めています。

■センサーの供給

  イシダグループにはイシダエンジニアリングという会社があり、同社の、粉体を高精度に定量供給できるロスインウェイトフィーダーという製品のセンサーを新光電子が供給しています。

  こういうグループ内の協業をさらに活性化させて、グループ全体のシナジーを発揮していきたいと思います。

アジア中心に海外売上を増やす

――貴社の今後の取組についてお聞かせください。

 ■お客様第一に、三方良しで


  コロナ禍がどうなるのか見通せない状況ですので、まだまだ苦しい状況は続いていくでしょうが、「明けない夜はない」とイシダの故石田隆一名誉会長も言われていますのでそれを信じて、お客様第一で、社員と会社が一体となって成長・発展し、お客様に満足をもたらし信頼され、豊かな社会づくりに貢献する「三方良し」ということで、社員の生活を守っていきたいと思っています。

■海外のジュエリー市場の強化

  海外のジュエリー市場は、新光電子のシェアが高い市場ですので、アジアや中国でのジュエリー市場での販売強化をはかっていきます。

■アジア中心に防爆関連製品の販売強化

  また、アジアの日系企業を中心に防爆関連製品の販売に注力します。

 当社は大手の電池メーカーにも計量機器を納入していますが、この分野も強化していきます。

 海外市場はなかなか厳しいですが、地道に売上を伸ばしていきたいと考えています。

■システムとして供給する

  国内市場では、製品の単体販売からシステムとして供給していくことが重要です。たとえば高精度な防爆システムを、お客様の要望をしっかり取り入れながら、お客様に提案していきたいと思います。

■顧客への的確なアプローチ

  営業力を最大に活かすために、SNSでの情報発信やインサイドセールスのシステムの導入で、われわれに興味を持っていただいているお客様に、的確にアプローチし、リーチできるようにし、営業のヒット率を上げていきたいと考えています。

  通販などでも、なかなか品番等が統一されていなかったりするので、お客様の検索にうまくヒットしないということが課題としてあります。

  そのあたりも通販サイトなどと連携して、品番体系を整理するなどして、お客様に選ばれやすくしていきます。

  外へなかなか出かけられない分、よい機会ですから、いろいろ内部体制の見直しと改善を進めていきたいと思います。

◎「三方良し」の理念で

■この先は不透明

  現在国内では、少子高齢化が進行していますね。大局的に見ると日本の国全体としての衰退化は避けられないと思います。

  海外の情勢を見ても、協調から分断の方向に動いているように思えます。アメリカの大統領がバイデン氏へと変わりましたが、まだまだこの先、世界のしくみがどうなっていくのかは不透明です。 

■高い志を持って進む

  しかし、先が見えないということではいつの時代も先は見えません。ですから、われわれは高い志を持って明日を信じて、目の前の課題を一つ一つ解決しながら進んでいくほかはないと考えています。

■「自分良し」、「相手良し」、「第三者良し」

 イシダグループには、先ほどお話ししました「三方良し」という理念があります。

 近江商人からの伝統である、「自分良し」、「相手良し」、「第三者良し」という理念です。

  新光電子もこの理念を基に、業務を遂行していきます。

  基本的にはお客様に寄り添いながら、より付加価値が高い製品の供給や、生産性が高くなる生産体制や開発体制を構築しての製品やサービスの供給をしていきたいと考えています。

 私は、お客様の満足をはかりながら、しっかりと利益も出して、社員の雇用の確保や満足度も充足させ、また地域貢献をしっかりやっていくというのが企業の存在価値だと思っています。

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