繰り返しで理解が進んだ
本庄健一 適正計量管理事業所としては、計量士による教育指導を規定しており、月1回計測器の使用部門ごとにテーマを決めて講義をおこなうとともに、校正部門としてパトロールの結果を報告することをルーチン化して実施した。その時、ISO 10012とか測定の不確かさの話をしていて、最初は現場との乖離があったが、繰り返し実施するうちに理解が進んできた。しかし効果を上げるにはトップ力を使って働きかけたときに効果があった。
現場の事例で説明しないと伝わらない
阿久津光 教育していても、しっくりこないというかなかなか理解されないことも多い。具体的な現場の事例を直接的に示して、説明しないと伝わらないのではないか。
渡辺雪宣 説明するときは現場の事例が一番で、さらにたとえば食事の話とかニースで取り上げられた話題を基に説明してやると、真剣に考える。
伊藤佳宏 教える側のトレーニングが必要だね。
阿久津光 ISO 10012の導入についても、計測管理状況が見えてくるといっても、現状に照らして、何が足りていなくて、それを解決するために、何をしなければいけないかのツールの1つとして10012がある、というような話の持っていき方をしないといけないのではないか。
計測管理部門として、現場の計測管理がなんとなくできていないと思っていても、具体的に何がどれくらいできていないかを知っているかというと、知らないと思う。そういうところも事前に調べておかないといけないのではないか。
取得への環境づくりが大切
本庄健一 以前社内でISO 10012を説明してもらったとき、使用部門の品質保証の課長からその認証を受けるのか質問があり、会社として受ける方針になっていれば真剣に聞くが、決まっていなければ話として聞くがわざわざ余分なことはしたくないという感じがした。したがって会社として、工場としていかにして認証を取らせる雰囲気をつくっていく環境づくりが大切だと思う。
10012と同じ考え方でやっている
伊藤佳宏 ISO 10012の計量確認と関連するが、航空機の関連規格でJIS Q 9100では「初品確認」が重視されており、そのなかで計量確認が導入されている。たとえば三次元測定機で製品を測定するとき、その目的とする測定ができているか検証している。製品が量産に移行した時、その製品が図面どおりにできているか、測定方法が品質保証に適合しているかも含めて、「初品確認」の段階で検証している。それは10012と同じ考え方だ。
具体的な事例を示す必要が
阿知波正之(司会) ISO 10012を導入していないために起きた問題や、無駄があるとか、導入によってこんな良いことがあるというような、具体的な事例を示す必要がある。
計測設計を標準化することが効果的
林貴雄 生産技術部門が設備を導入するとき、新人は前に書かれた仕様書どおりに注文を出せば設備ができて使えると考えているが、ベテランは仕様書どおりにつくられても目的とする検査ができないとか、不具合が起きることがわかっているので処置している。そのような差をなくすようにするには、ISO 10012の考え方を導入し、計測設計を標準化することが効果的だと思う。
なかなかパワーがない
伊藤佳宏 計測方法、計測設計の標準化、計測に関する問題解決等それを誰が発信するかが難しい。計測管理部門は生産技術を動かせるか、なかなかパワーがない。
実効性のあるシステムにしたい
石川昌人 即座に動かせる力はないかもしれないが、まめに発信することで、向かせたい方向に仕向けることはできると思う、いろんなところで種を蒔くことで、必要としている人に気付いてもらうことができる。
明確な顧客要求があれば手っ取り早く導入が進むと思うが、その場合、取得が目的となって、実際の業務に沿わない形だけのシステムとならないよう、実効性のある活きたシステムとしたい。
計測システムの見直し効果も
植手稔 ISO 10012の導入取得を推進することで、計測システムの見直しがされる効果が期待できる。
計測管理の重要性を発信し続ける
阿知波正之(司会) ISO 9000も2015年に改正されるが(編集部注…2015年9月15日にISO 9001:2015が発行)、当初の導入時はシステムをつくることが主体であったがその後、改善が重視され、今度はリスク管理が重点と変遷しているが、変わらないことをしっかり守っていくことも重要。計測管理は重要だと発信し続けねばならない。また現場のパトロールやコミュニケーションなど、校正に加える活動を進めるのは管理者のマネジメントによることになる。
組織で動かないと
本庄健一 個人に頼ってしまって組織で動かないと、特定の管理者の個性とか、知識とか、管理能力に左右され、長続きしないのではないか。
小屋松隆一 それは管理者の管理記録として、引き継ぎができるようにしてもらう。
リスク管理に逆行しているのが現実
松山辰夫 計測器が進歩して良くなったので、なにもしなくても常に正しい結果が得られていると思っている管理者が多い。そこで、計測管理の担当者が裏方としてコツコツ校正等の管理しているが、コストダウンのために、その管理業務を削減できないかという話がでてくる。トラブルが発生しないように地道に維持管理しているからトラブルが発生していないのに、トラブルが発生していないからその管理業務が無駄であると勘違いする。ISO 9001が求めているリスク管理に、明らかに逆行しているのが現実だ。
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