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月例経済報告
−景気は、おおむね横ばいとなっているが、引き続き不透明感がみられる。−
先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、アメリカ経済の先行き、株価の動向、重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響等を巡る不透明感により、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。
月例経済報告
平成15年5月
総論
(我が国経済の基調判断)
景気は、おおむね横ばいとなっているが、引き続き不透明感がみられる。
先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、アメリカ経済の先行き、株価の動向、重症急性呼吸器症候群(SARS)の影響等を巡る不透明感により、我が国の最終需要が引き続き下押しされる懸念が存在している。
(政策の基本的態度)
政府は、金融・経済情勢等を注視しつつ、引き続き金融、税制、歳出及び規制の四本柱の構造改革を推進することにより、民間需要主導の持続的な経済成長の実現を目指す。さらに、「証券市場の構造改革と活性化に関する対応について」に基づいて、可能なものから早急に対応を行うこととした。
政府は、5月17日、金融危機対応会議を開催し、金融危機を未然に防ぐため、りそな銀行に対する資本増強の必要性を認定した。また、同日、同行に対し、日本銀行は、必要が生じた場合ただちに所要資金を供給する方針を決定した。日本銀行は、さらに、4月30日に続き5月20日に金融市場調節方針を変更し、日本銀行当座預金残高目標を引き上げ、27〜30兆円程度とすることを決定した。政府は、日本銀行と一体となって、金融・資本市場の安定及びデフレ克服を目指し、引き続き強力かつ総合的な取組を行う。
各論
1.消費・投資などの需要動向
平成15年1-3月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、民間企業設備、民間最終消費支出がプラスに寄与した一方、公的固定資本形成、民間在庫品増加、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)がマイナスに寄与したことなどから、前期比で0.0%(年率0.0%)となった。また、名目GDPの成長率は、前期比で0.6%減となった。
2.企業活動と雇用情勢
3.物価と金融情勢
4.海外経済
注)
<個人消費>
消費総合指数(需要側、内閣府試算値)は、季節調整済前月比で、2月(速報値)0.4%増の後、3月(速報値)は0.6%減となった。また、3ヶ月前比(後方3ヶ月移動平均、季節調整済)では、2月(速報値)1.9%減の後、3月(速報値)は同0.8%減となった。
消費総合指数の作成方法:総務省「家計調査」から、GDPの個人消費には含まれない「仕送り金」、「修繕費」や、振れが大きい高額消費である「自動車等購入」などを除外した後、世帯数を乗ずるなどしてマクロの消費ベースにする。これに、自動車、家賃、医療費について別途供給側の統計を用いて計算したものを加える。詳細は、ディスカッションペーパー(http://www5.cao.go.jp/keizai3/discussion-paper/menu.html)を参照。
家計調査の全世帯実質消費支出は、2月季節調整済前月比2.4%減の後、3月(速報値)は同0.4%増(前年同月比2.4%減)となった。
家計調査の全世帯実質消費支出(除く自動車、住居、仕送り金等)は、3月(速報値)は季節調整済前月比0.8%増(前年同月比0.6%減)となった。
経済産業省「商業販売統計」の小売業販売額は、2月季調済前月比1.7%増の後、3月(速報値)は同1.2%減(前年同月比1.0%減)となった。また、百貨店販売額は、3月(速報値)は、前年同月比3.5%減(店舗調整後)(季節調整済前月比1.2%減(店舗調整前))となった。
チェーンストア販売額(日本チェーンストア協会調べ)は、2月前年同月比1.4%減(店舗調整後)の後、3月は同2.0%減(店舗調整後)(季節調整済前月比1.2%増(店舗調整前))となった。
乗用車(含軽)新車新規登録・届出台数は、3月前年同月比10.2%増の後、4月(速報値)は同7.0%減となった。
家電販売額(日本電気大型店協会調べ)は、2月前年同月比0.8%減の後、3月は同3.5%減となった。
大手旅行業者13社取扱金額は、2月国内旅行が前年同月比10.6%減、海外旅行が同15.3%増の後、3月国内旅行が同4.6%減、海外旅行が同9.9%減となった。
内閣府「消費動向調査」の消費者態度指数(季節調整済)は、12月前期差1.3ポイント悪化の後、3月同2.0ポイント悪化となった。内閣府「月次消費動向調査」の消費者態度指数(東京都、原数値)は、3月前月差1.5ポイント悪化の後、4月同1.7ポイント改善した。
<設備投資>
平成14年10-12月期の設備投資を財務省「法人企業統計季報」(全規模全産業、ソフトウェアを除く)でみると、季節調整済前期比3.9%増(前年同期比1.8%減)となっており、うち製造業では同2.9%増(同10.8%減)、非製造業では同4.4%増(同2.4%増)となっている。
平成15年1-3月期の大中堅企業の設備投資を内閣府「法人企業動向調査」(実績見込)でみると、季節調整済前期比で1.1%減(前年同期比1.9%減)となっており、うち製造業では同2.4%減(同6.7%減)、非製造業では同3.4%減(同%0.1増)となっている。
経済産業省「鉱工業指数」により資本財出荷(除く輸送機械)をみると、2月は季節調整済前月比3.2%減(前年同月比1.2%増)の後、3月は同0.5%増(同0.3%減)となっている。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)により設備投資の動向(ソフトウェアを除く)をみると、大企業の平成15年度設備投資計画は、製造業で前年度比2.9%増、非製造業で同3.1%減となっており、全産業では同0.8%減となっている。また、中小企業では製造業で同11.2%減、非製造業で同15.4%減となっており、全産業では同14.4%減となっている。
経済産業省「特定サービス産業動態統計」でみると、受注ソフトウェア売上高は、1月は前年同月比7.6%減の後、2月は同9.0%減となっている。
機械受注(船舶・電力除く民需)は、2月は季節調整済前月比6.8%減(前年同月比1.4%増)の後、3月は同3.8%増(同11.7%増)となっている。なお、平成15年4-6月期(見通し、3月調査時点)の機械受注(船舶・電力除く民需)は、季節調整済前期比10.5%減(前年同期比5.7%減)と見込まれている。
民間からの建設工事受注(50社、非住宅)は、2月は季節調整済前月比6.8%減(前年同月比6.8%減)の後、3月は同4.0%増(同2.1%増)となっている。
<住宅建設>
国土交通省「建築着工統計」によると、新設住宅着工総戸数(季節調整済前期比)は、平成14年4-6月期は0.4%増、7-9月期は3.3%減、10-12月期は1.0%減、平成15年1月は6.8%増、2月は3.5%減、3月は4.8%減となっており、うち共同建分譲住宅の着工(同)は、平成14年4-6月期は8.9%減、7-9月期は10.2%減、10-12月期は0.0%増、平成15年1月は9.5%増、2月は9.7%減、3月は9.0%減となった。また、新設住宅着工床面積(同)は、平成14年4-6月期は0.2%減、7-9月期は3.2%減、10-12月期は1.1%減、平成15年1月は3.3%増、2月は2.5%減、3月は4.5%減となった。
消費者の住宅取得マインドを示す指標のひとつである(社)日本リサーチ総合研究所「不動産購買態度指数」をみると、平成12年は、2月128、4月128、6月124、8月118、10月122、12月117、平成13年は、2月118、4月119、6月117、8月110、10月109、12月104、平成14年は、2月104、4月114、6月117、8月114、10月115、12月111、平成15年は、2月110となった。
<公共投資>
平成14年度の国の一般会計予算(補正後)を前年度補正後予算と比較すると、「改革推進公共投資」特別措置を含めた公共投資関連予算ベースでは15.9%減となっている。なお、平成15年度予算においては、公共投資関係費について、前年度比3.7%減と規模を縮減し、都市の再生や地方の活性化など、「平成15年度予算編成の基本方針」の重点4分野を中心に、雇用・民間需要の拡大に資する分野へ重点化している。
地方の予算をみると、総務省がまとめた都道府県、政令指定都市の普通会計予算額(9月補正後)では、普通建設事業費は前年度比10.1%減、普通建設事業費のうち補助事業費、単独事業費は、それぞれ前年度比11.1%減、10.6%減となっている。なお、平成15年度地方財政対策においては、投資的経費のうち地方単独事業費について、前年度比5.5%減とし、計画的な抑制と重点的な配分を行うとしている。また、時事通信社調査によれば、普通建設事業費は、都道府県で前年度比6.1%減、政令指定都市で同5.8%減、中核市で同8.9%減、その他の県庁所在市で同12.8%減となっており、これらを単純合計すると、前年度比6.4%減となっている(骨格予算、暫定予算を編成した地方公共団体を除く)。
公共機関からの1件500万円以上の建設工事受注額(建設工事受注動態統計調査)は、前年同月比で2月18.4%減の後、3月は14.8%減となった。同じく大手50社の建設工事受注額は、前年同月比で2月20.8%減の後、3月は13.2%減となった。公共工事請負金額(公共工事前払金保証統計)は、前年同月比で3月15.6%減の後、4月は13.0%減となった。公共工事出来高(建設総合統計)は、前年同月比で1月9.2%減の後、2月は10.2%減となり、内閣府にて季節調整を実施した結果によると、前月比で1月0.4%増の後、2月は2.9%増となった。
<輸出・輸入・国際収支>
通関輸出(数量ベース、季節調整値)は、前月比で2月2.0%増の後、3月も0.2%増(前年同月比6.2%増)となった。また、前期比で平成14年10-12月期は2.0%増の後、1-3月期は1.1%増(前年同期比8.7%増)となっている。
通関輸入(数量ベース、季節調整値)は、前月比で2月は3.1%減の後、3月は2.5%増(前年同月比7.2%増)となった。また、前期比で平成14年10-12月期は0.7%増の後、1-3月期も0.7%増(前年同期比6.2%増)となっている。
貿易・サービス収支(季節調整値)の黒字は、平成15年2月は6,973億円の後、3月は6,425億円、通関収支差(季節調整値)は、平成15年2月は8,255億円の後、3月は6,463億円となった。
<生産・出荷・在庫>
3月の鉱工業生産指数(季節調整値、確報)は、一般機械や化学工業等が増加したことから、前月比0.1%増となった。
製造工業生産予測調査によると、前月比で、4月は電子部品・デバイスや一般機械等の減少により0.9%減の後、5月は輸送機械や情報通信機械等の増加により2.1%増になると見込まれている。
3月の鉱工業生産者製品在庫指数(季節調整値、確報)は、前月比0.5%減となった。また、3月の鉱工業生産者製品在庫率指数(季節調整値、確報)は99.9となっている。
第3次産業活動指数(季節調整値)は、2月(速報)前月比0.8%減となった。また、12-2月の平均(3カ月移動平均値)による対3ヶ月前比(同9-11月平均対比)をみると0.6%減となっている。
<企業>
財務省「法人企業統計季報」によると、10-12月期の経常利益は全産業で前年同期比22.7%増、製造業は72.7%増、非製造業は1.7%減となった。
日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、平成14年度の経常利益は、全規模・全産業で、上期は前年同期比7.2%の増益、下期は同14.8%の増益、通期では前年比11.3%の増益、平成15年度の経常利益は、全規模・全産業で、上期は前年同期比11.8%の増益、下期は同14.9%の増益、通期では前年比13.5%の増益を見込んでいる。
一方、業況判断について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査、業況水準について「良い」−「悪い」)をみると、大企業は△1%ポイント悪化して△12%ポイント、中小企業は2%ポイント改善して△33%ポイント、全規模合計では2%ポイント改善して△26%ポイントとなった。
また、内閣府「法人企業動向調査」(3月調査)で企業の業界景気の判断(前期比「上昇」-「下降」:季節調整値)を見ると、1-3月期は全産業で前期と変わらず△24%ポイントとなった。
<倒産>
企業の倒産については、東京商工リサーチ「倒産月報」によると、4月の企業倒産件数(負債額1,000万円以上)は1,495件(前年同月比7.2%減)、負債総額は9,349億円(同15.2%減)となっており、帝国データバンク「全国企業倒産集計」によると、企業倒産件数は1,514件(同7.7%減)、負債総額は9,030億円(同29.3%減)となっている。また、大型倒産(負債額10億円以上)は、110件(同25.6%減)となっており、主な大型倒産としては、遊園地経営のレオマ(負債1,394億円)など(東京商工リサーチ調べ)。
<雇用情勢>
総務省「労働力調査」によると、3月の完全失業率(季節調整値)は、男女計で前月比0.2%ポイント上昇し、5.4%となった。完全失業者数(季節調整値)は、男女計で前月差10万人増の359万人となった。
労働力調査により内閣府にて季節調整を実施した結果によると、求職理由別完全失業者数(季節調整値)は、非自発的な離職による者は、前月差0万人増の145万人、自発的な離職による者は、同20万人増の124万人となった。
労働力調査によると、3月の雇用者数(季節調整値)は、男女計で2月前月比0.0%減の後、3月は同0.6%増の5,347万人となった。
厚生労働省「職業安定業務統計」の新規求人数は、2月季節調整済前月比1.1%減の後、3月は同0.9%減(前年同月比8.5%増)となった。有効求人数は、2月同0.7%増の後、3月は同0.7%減(同10.2%増)となった。新規求職件数は、2月同2.6%増の後、3月は同7.7%減(同0.6%減)となった。有効求職者数は、2月同0.4%増の後、3月は同0.6%増(同4.3%減)となった。新規求人倍率(季節調整値)は2月0.99倍の後、3月1.06倍となった。有効求人倍率(季節調整値)は、2月0.61倍の後、3月0.60倍となった。
毎月勤労統計調査によると、所定外労働時間(製造業)は、事業所規模5人以上では2月季節調整済前月比1.8%減(前年同月比15.8%増)の後、3月は同0.3%増(同14.4%増)となった。
毎月勤労統計調査によると、きまって支給する給与は、事業所規模5人以上では2月季節調整済前月比0.1%増(前年同月比横ばい)の後、3月は同横ばい(同0.1%増)となった。現金給与総額は、事業所規模5人以上では3月前年同月比1.1%減となった。
<物価>
日本銀行「企業物価指数」の輸出物価(円ベース)は、平成15年4月(速報値)は前月比1.0%の上昇(前年同月比4.8%の下落)、3ヶ月前比は1.4%の上昇となった。輸入物価(円ベース)は、4月(速報値)は前月比0.7%の下落(前年同月比1.1%下落)、3ヶ月前比は2.0%の上昇となった。また、国内企業物価は、4月(速報値)は前月比0.2%の下落(前年同月比0.8%下落)、3ヶ月前比は0.1%の上昇となった。
日本銀行「企業向けサービス価格指数」の3月の企業向けサービス価格は前年同月比0.5%の下落(前月比0.6%の上昇)となった。
総務省「消費者物価指数(全国)」の生鮮食品を除く総合は、3月は前年同月比0.6%の下落(季節調整済前月比0.1%の上昇)、1-3月平均の前年同期比は0.7%の下落となった。一般サービスは、3月は前年同月比保合い、1-3月平均の前年同期比は保合いとなった。一般商品は、3月は前年同月比1.0%の下落、1-3月平均の前年同期比は1.2%の下落となった。公共料金は、3月は前年同月比0.6%の下落、1-3月平均の前年同期比は0.7%の下落となった。また、「消費者物価指数(東京都区部、中旬速報値)」の生鮮食品を除く総合は、4月は前年同月比0.4%の下落(季節調整済前月比0.1%の下落)、2-4月平均の前年同期比は0.6%の下落となった。
<金融>
無担保コールオーバーナイトレートは、4月は、0.001〜0.002%で推移した。3ヶ月物ユーロ円TIBORは、4月は、0.07%台で推移した。10年物国債流通利回りは、4月は、0.6%台〜0.7%台で推移した。
東証株価指数(TOPIX)は、4月末は796ポイントとなった。日経平均株価は、4月末は7,831円となった。
対米ドル円相場(インターバンク直物中心相場)は、4月末は119.60円となった。対ユーロ円相場(インターバンク17時時点)は、4月末は132.88円となった。
マネタリーベース(月中平均残高)は、4月(速報)は前年同月比11.5%増となった。4月の日銀当座預金平均残高は27.4兆円となった。M2+CD(月中平均残高)は、前年同月比1.4%増となった(4月速報)。広義流動性は、4月(速報)は前年同月比1.2%増となった。金融機関(全国銀行)の貸出(月中平均残高)は、4月(速報)は前年同月比4.6%減(貸出債権流動化・償却要因等調整後2.1%減)となった。4月のエクイティ市場での発行(国内市場発行分)は、転換社債型新株予約権付社債の発行は100億円となった。また、国内公募事業債の起債実績は、5,763億円(銀行起債の普通社債は900億円)となった。国内銀行の貸出約定平均金利(新規実行分)は、2月は前月比で短期は0.087%ポイント低下し、長期は0.192%ポイント低下したことから、総合では0.127%ポイント低下し1.565%となった。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(3月調査)によると、資金繰り判断は横ばい、金融機関の貸出態度は若干改善している。
<景気ウォッチャー調査>
内閣府「景気ウォッチャー調査」の4月の現状判断DIは、前月を2.6ポイント下回り、38.7となった。先行き判断DIは、前月を3.3ポイント上回り、41.9となった。