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日本計量新報 2011年4月3日 (2864号)2面掲載

環境中の放射線を測定する 放射線測定器 

文部科学省は、都道府県別環境放射能水準調査結果などをとりまとめ、WEBサイト(http://www.mext.go.jp/)から随時情報提供している(関連記事2863号2面)。

様々な放射線測定器

環境中の放射線の測定には、測定の目的や放射線の種類によって様々な測定方法・放射線測定器が用いられている。

環境中に存在する代表的な放射線にγ線がある。γ線用測定器としては、ガイガー=ミュラー計数管、電離箱、NaIシンチレーション検出器、ゲルマニウム半導体検出器、および熱蛍光線量計などが用いられている。

(1)ガイガー=ミュラー計数管(GM計数管、ガイガー・カウンター)=放射線による気体の電離作用を利用して、放射線の強さ(量)を測定する。γ線およびβ線を検知するが、γ線の感度は低い。放射線強度に応じて感度(寸法)の異なるものを選ぶ。最も簡便かつ広く用いられている放射線測定器の1つである。

(2)電離箱=空気中でのイオン対発生数(電離量)を測定するもの。標準的な測定器として広く使用されている。

(3)NaIシンチレーション検出器=ヨウ化ナトリウム(NaI)の結晶と入射γ線との相互作用によって生じる光(シンチレーション)を利用してγ線を測定する。多くの原子力施設で環境γ線モニタリング用として普及している。

(4)ゲルマニウム半導体検出器=電離物質として気体の代わりに固体のゲルマニウムまたはシリコンを用いた一種のダイオード。γ線のエネルギー測定で放射性核種の同定と定量のほか核種別の線量率を得ることができるなど、優れた性能を持つ。NaIシンチレーション検出器と併用して広く使用されている。

(5)熱蛍光線量計(熱ルミネッセンス線量計、TLD)=検知器内部の結晶が高温加熱されたときに、そこから放射される可視光の量を測定する。測定場所に一定期間(数日〜数カ月)置いておき、その間の積算線量を測定するもので、比較的安価でかつ取り扱いも容易なため、多地点での測定に使用されている。

放射線測定器の校正はJISで規定

文部科学省および関連機関は、福島第一原子力発電所の20km以遠の空間放射線量率を、モニタリングカーで測定している。現在は複数のモニタリングカーを使用しており、搭載する測定器は、ガイガー=ミュラー計数管、電離箱、NaIシンチレーション検出器と、モニタリングカー毎に異なっている。文部科学省によれば、いずれの測定器も国家標準につながる校正体系の中で校正されており、測定器が誤った値を表示することはないという。

放射線測定器の校正についてはJIS Z 4511:2005「照射線量測定器、空気カーマ測定器、空気吸収線量測定器及び線量当量測定器の校正方法」で定められている。同JISでは、初回校正後、定期的な性能の維持を確認するため、実用線源による簡易的な校正(確認校正)を実施するよう規定している。

輸出品の放射線測定依頼が急増

東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、海外でも日本産の貨物に対する不安の声が高まっている。

輸出入に関する検査を請け負っている(社)日本海事検定協会では、放射線量の検査依頼が急増。全国の事業所で対応に追われている。

同協会は、現在所有する放射線測定器計43台に加えて、60台以上の追加発注をしている。ただし、これまで使用していた国内メーカー(アロカ)は生産が追いつかないため、アメリカ・ルドラム社の機種を購入する。

 同協会にはこれまで、中国・インド・インドネシアにリサイクル原料を輸出する際など、限られた範囲でしか放射線量の検査の要望がなかった。一般貨物に関する検査依頼が殺到したのは、今回の原発事故以降のこと。


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