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日本計量新報 2011年5月1日 (2868号)2面掲載

解説 被曝管理での評価尺度

実効線量と実際の評価方法

2862号2面で、放射線関連の単位であるベクレルやシーベルト、グレイに触れた。今回は、放射能による被曝・汚染から障害の発生を防止する「放射線防護」の観点から、これらの単位を用いた評価尺度を解説する。

実効線量

放射線が人体に与える影響の大きさは、放射線の線質(種類とエネルギー)によって異なるとともに、被曝した組織や臓器によっても異なる。放射線はヒトのDNAを損傷し、癌などの障害を発生させるが、DNAが重要な働きをする、細胞分裂や増殖が盛んな組織や未分化な組織(造血組織、生殖腺、皮膚など)ほど影響を受けやすいからである。

これらを考慮して算出する放射線量を「実効線量」という。1990年、国際放射線防護委員会(ICRP)によって勧告され、放射線の被曝管理のために用いられている。単位はシーベルト(Sv)で表される。

実効線量は次のように計算される。

実効線量=(吸収線量×放射線荷重係数×組織荷重係数)をすべての組織で足したもの

すなわち実効線量は、人体1kgに吸収されたエネルギー量である吸収線量(単位:Gy〔グレイ〕)に、放射線の種類によって異なる「放射線荷重係数」(表1)と、組織や臓器によって異なる「組織荷重係数」(表2)をかけ、全身について合計した線量ということになる。

また実効線量は、体外に存在する放射性物質から放射線を受ける「外部被曝」の実効線量と、食物や空気中に含まれる放射性物質を体内に取り込み、それから発せられる放射線を体内で受ける「内部被曝」の実効線量の合計で評価される。

実効線量の実測は困難

しかし、実効線量を直接測定するのは極めて困難である。

特に内部被曝の場合、身体中の多数の臓器、組織に沈着している放射性物質の量を測定する必要がある。しかもその量の時間的変化を追跡しなくてはならないため、かなりの設備を必要とし、技術的にも容易ではない。

そこで、実際の放射線管理では、別に定義される量や実効線量から誘導される量が用いられている。

実際の評価方法〜外部被曝

外部被曝線量の測定には、国際放射線単位測定委員会(ICRU)により提案された「1cm線量当量」が、日本を含め国際的に使用されている。

放射線管理上もっとも重要なX線およびガンマ線を人体組織が受けた場合、被曝線量がもっとも高くなるのは人体表面ではなく、皮膚に対してある深さ(d)をもった点である。1cm深さの被曝線量を評価の基準とすれば、常に実効線量より高い値となり、安全な被ばく管理を行うことができるとの考えで、個人線量計やサーベイメータなどは、この量を表示するよう調整されている。

作業環境モニタリングのために周辺線量および方向性線量が、個人被曝モニタリングのために個人線量が、それぞれ測定される。

実際の評価方法〜内部被曝

一方、内部被曝の場合は、人が摂取した放射性物質の量と、人体の臓器・組織が受ける線量の大きさとの関係をあらかじめ算出しておくことで、計算によって求める。このときの値を、実効線量係数(単位:Sv/Bq〔シーベルト・パー・ベクレル〕)(表3)という。

放射性物質の体内動態モデルに基づき、人体ファントムを用いて摂取量を出し、この実効線量係数をかけることで、実効線量を算定する。

放射性物質を体内に取り込む主な経路には、鼻または口から呼吸気道を通じて摂取する「吸入」、口から入って飲み込まれる「経口摂取」の2つがある。そのため、線量係数はこれら2つの経路に対してそれぞれ与えられている。

また、臓器・組織が体内に取り込んだ放射性物質から受ける影響は必ずしも1年で終わるとは限らないため、放射線業務従事者および成人は摂取後50年、子供は摂取時から70歳までに受けることになる線量をすべて、摂取した年にまとめて受けたと仮定して、実効線量が算出される。

YouTubeで関連動画公開中!http://youtu.be/hicA-56hCy0 (「東日本大震災」)


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