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日本計量新報 2011年5月1日 (2868号)2面掲載

東日本大震災の爪跡(4)

明治の記録を超えた宮古市姉吉地区

震災から1カ月目に意地の水揚げをして水産宮古を宣言した宮古市で、4月21日までに406人死亡、534人が行方不明、住宅3669棟が全壊し、1946人が避難生活をしている。

宮古市の田老地区の被害は大きく、ここでは陸地を駆け上がった津波の高さ「遡上高」が37.9メートルであった。同じ宮古市の山田町寄りに位置する半島の重茂(おもえ)半島姉吉地区の遡上高は38.9メートルであったことを、東京海洋大学の岡安章夫教授(海岸工学)が4月13日に調査して確認している。ただし、現地に行ってみると、津波による流木がさらに内陸でも見つかるので、実際の遡上高はさらに高かった可能性がある。姉吉地区の38.9メートルという遡上高は、明治三陸地震(1896年、明治29年)の際に大船渡市三陸町綾里で記録された、これまでの最高値である38.2メートルを超えている。

海岸部がV字構造をしていると、津波は陸地の奥まで駆け上がる。宮古市田老地区はこのような構造になっていて海岸近くに市街地ができていたために、背の高い堤防はほとんど役に立たず、大きな被害がでた。八戸港や久慈港はリアス式の海岸が終わった平坦な形をしているために、川を遡上することを除けば津波があまり増幅しない。

子どもたちが輝くことで希望を取り戻す

津波に打ち砕かれた町の活気と復興は学校から始まる。小学生にとっては、遊ぶことと学ぶことが生活の基本である。これは中学生、高校生も変わらない。子どもには学ぶ権利がある。子どもの教育を受ける権利を保障し、人の生存権を真剣に保障することから東日本大震災の復旧と復興が始まる。

被災報道で埋め尽くされた石巻市や釜石市、宮古市であるが、比較的被害が小さく、町としての形を残している地域も多い。子どもは地域で育むものである。地域や地域文化抜きに子どもの教育はない。

子どもには負債はない。自分がよりよく生きること、育った地域の文化が人格形成に反映すること、地域に誇りを持つこと、そして日本に誇りを持つことが、子どもの権利であり、生きるための希望でもある。

津波による残土・残骸を取り除いたあとに急いで建てられた電柱。回復した灯火によって夜が明るく照らされるように、地域に根付いた教育を受けた子どもたちが輝くことによって、被災地は復興と繁栄に向けて希望を取り戻すことができる。

よく見、よく聞き、よく分かることが大事

東北地方が、文化や観光や産業などの面で、日本のみならず世界に向けても光り輝くような振興策が期待される。振興策については、政府の助けを待つことなく東北地方の人々が自ら立ち上がることが必要であろう。

宮沢賢治は「雨ニモマケズ」のなかで、「アラユルコトヲ ジブンヲカンジョウニ入レズニ ヨクミキキシワカリ ソシテワスレズ」と述べている。東日本大震災のさまを「よく見」「よく聞き」「よく分かる」ことが大事であり、それ抜きの議論や政策などあり得ない。菅直人首相や政府は、このことを肝に銘じて、復興政策を策定し、実施していかなければならない。

YouTubeで関連動画公開中!http://youtu.be/hicA-56hCy0 (「東日本大震災」)


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