2000年10月15日(2372号)
■計量史をさぐる改が近代技術と史と貨幣史をテーマに開催
日本計量史学会、計測自動制御学会、東京産業考古学会の三団体合同主催の計量史と力学量関連の講演会が十月六日(金)午後、東京・世田谷区砧(きぬた)の(財)日本品質保証機構(JQA)計量計測センターを会場に、関係者七十名ほどが参加して開かれた。催しは講演会とJQA計量計測センターの校正業務の見学の二つ。
講演は、@電気計測の歴史から=菅野允氏(元玉川大工)、Aキログラム定義とその実現上の問題=内川恵三郎氏((財)日本品質保証機構)、B小判の損傷と量目問題の発生=西脇康氏(白梅学園短大)、C後藤家譜について=山田研治氏(牛込商業高校)の四題。計量史を新しい視点で
計量史をさぐる会は、日本計量史学会が計測自動制御学会力学量部会、東京産業考古学会と三者合同開催することで、参加者の規模が拡大した。四題の講演は三つの団体から講師が出ており、江戸期から近代、現代にいたる計量史をそれぞれが新しい視点で掘り起こし、いくつかの新しい見解が発表された(講演要旨は別項)。
江戸時代の小判と金座ならびに後藤家の研究発表が西脇康氏と山田研治氏の二氏からあり、江戸の金座と後藤家に関して新しい事実が明らかになった。これは江戸幕府と江戸時代の計量史、貨幣史、経済史等に影響を及ぼすものであり、関連分野を研究する者が踏まえておくべき重要な事項である。
慶長小判の研究を発表した西脇氏は、江戸期の小判は流通する過程でヒビ割れや損耗が激しいにもかかわらず、幕府は有効な対応ができなかったことを明らかにするとともに、小判改鋳の動機の一つに損耗対策があったことを説いた。こぼれ話として、小判の上に小判をポンと放り投げたときにチャリンと音がする時代劇の演出はあくまでも演出であり、実際にはジャリという音であることを明かした。
後藤家家譜の読み下しと解釈ならびに史実に当たった山田氏は、後藤家の発祥の地が堺であることを突き止めた。また後藤家長乗の花押についても旧来の説が改められたことを紹介した。
講演のうち二題が後藤家の歴史に関して新しい所見や発見を含むものであったことから、後藤家の子孫四名の講演聴講があった。
電気計測の歴史を概説した菅野氏は、電気の歴史が二百年しかないことと電気に関する知識は電気計測によって得られたことを強調するとともに、発明王エジソンのマンハッタン島での電気の販売事業の失敗事例を取り上げて、歴史研究の面白みをエピソードとして紹介した。
内川氏は質量標準に関する近代史、現代史に挑み、人工物である国際キログラム原器の百年間の質量変化の実測値を示すとともに、質量標準の量子標準化への期待を述べた。キログラム原器は炭素や酸素などの有機物質により表面が汚染され、わずかな質量変化をきたすことが明らかになっているものの、質量の量子標準化研究が現段階ではキログラム原器の安定性を越える精度を実現していないことを説明した。