ガスメータの故障原因説(嫌疑)ほぼ晴れる
東京都新宿区歌舞伎町一丁目の雑居ビル「明星56ビル」で、9月1日午前1時ごろ発生した出火により、同ビル3階および4階で併せて44名が一酸化炭素中毒で死亡した事故は、放火の可能性が高いものとして出火原因の調査が進められている。出火元と断定されている3階エレベーターホール付近にはガスメーターが収納ボックス内に設置されているが、このガスメーターとガス管の接続部の一部が、外部から人為的な強い衝撃を受けて変形していたことが4日、関係当局の調べで明らかになった。また、メーターの左側部分と供給用ガス管の接続部が激しく焼けていたことも分かった。この火災では、3階エレベーターホール近くに放置されていたゴミ周辺から出火したとみられているが、関係当局では、出火とほぼ同時にメーターとガス管のすき間から漏れ始めたガスに引火し、ガス管の破断部分から下に向かって強い炎が噴き出した可能性が強いとみている。当初ガスメーターの故障等による火災発生の疑いが取りざたされたが、この可能性はほぼ否定されている。
ガス管からの炎の噴出が、ガスメーター脱落の直接の原因だったかどうかはまだ解明されておらず、東京消防庁と警視庁新宿署特捜本部では、さらに現場検証を進めている。特捜本部では、エレベーターホールからの出火原因について、放火と失火の両面から捜査している。3階、4階で死亡した44名は火災発生に気付くまでにいた場所で倒れており、死亡原因がガス爆発によるものではなく、一酸化炭素中毒によって一瞬に倒れ、そのまま死亡したと断定される。ガス管からの炎の噴出と一酸化炭素中毒死の直接的な因果関係は考えられず、何かの物質が不完全燃焼して一酸化炭素を一気に大量に発生させたものと考えられる。
関係当局などによると、ガスメーターの鉄製の囲いは、外側の塗料がはげ落ちるなど激しく焼けていたのに対し、内側はあまり焼けていなかった。供給用、配給用のガス管とメーターの接続部の一部に外部から強い衝撃を受けて変形した形跡があった。また、メーターの左側上部が特に黒く焦げていた。さらに、供給用ガス管の破断部分に高温で焼けた痕跡があったほか、収納ボックスの下部の壁と床にも黒いすすが付着していた。このため、関係当局は、外部からの衝撃の結果、メーターとガス管の接続部がずれて漏れたガスに、エレベーターホールのゴミなどの可燃物から出火した炎が引火した可能性があるとしている。