■新光電子(株)が「第27回発明大賞」受賞
(社)日本発明振興協会と日刊工業新聞社が共催事業として実施している「第27回発明大賞」の最高賞に「音叉式振動荷重変換機構」の開発で功績をあげた新光電子(株)代表取締役社長の岡崎稔氏が選ばれた。発明大賞の最高賞の選考対象になった「音叉式振動荷重変換機構」は、金属音叉振動子の振動周波数が加えた力に比例して変化するのを利用しているもので、音叉式振動荷重変換機構を用いて商品化された電子式はかり及び天びん等は、高精度と抜群の性能の安定性を実現して、この世界に大変革をもたらしている。
独創技術を商品化
発明大賞は、画期的な発明考案あるいは科学技術の研究を通じて、わが国産業の発展と国民生活の向上に大きな功績をあげた企業や個人またはグループに贈られる。発明大賞は4つあり、その最高賞が発明大賞で、以下発明大賞笹川特別賞、同池田特別賞、同福田特別賞となり、各年度それぞれ1件に与えられる。
その発明大賞を授与されたのが新光電子(株)代表取締役社長の岡崎稔氏で、選考対象となった技術は「音叉式振動荷重変換機構」である。音叉センサと通称される金属音叉振動子を利用した荷重変換機構は、同社の完全な独創技術である。荷重時の変位は小さく、劣感度が高いうえ小さな電力ですみ、音叉センサは分解能、長期安定性、再現性に格段の違いがあり、耐久性も高く、比較的安価ながら価格にはるかに優る精密さ・正確さと旧来の常識を凌駕する長期安定性を実現した荷重変換機構であり、電子式はかり及び天びん等として商品化され、大きな需要を獲得している。
「すばる」心臓部に採用
「音叉式振動荷重変換機構」の応用例として、日本の国立天文台がハワイのマウナケア山頂につくりあげた世界最大の主鏡部をもつ「すばる望遠鏡」があり、この一枚鏡の反射望遠鏡は星を追いかけて大きく傾いた場合にも鏡が歪まない構造になっているが、歪み補正を音叉式振動荷重変換機構を組み込んだ鏡の支持機構でこれを実現させている。
鏡が星を追跡するために上を向いたり横を向いたりするときに生じる歪みを、鏡に組み付けられた支持機構によって防止する。一枚鏡を利用した反射望遠鏡としてはすばる望遠鏡は有効径8・2メートルで世界最大であり、歪みがないことによって新しい天体観測の可能性を広げている。鏡を歪ませない支持機構はまことに巧みなものであり、すばる望遠鏡の完成は、その心臓部に用いられている音叉式振動荷重変換機構があってこそのもの。新光電子(株)の電子はかり及び電子天びんの心臓部に用いられる音叉式振動荷重変換機構は、天体望遠鏡をつくりあげるうえで、きわめて重要な技術の一つになっている。
「第27回発明大賞」最高賞(発明大賞)の授与式は、2月20日午後、東京都港区の虎ノ門パストラルで行われた。賞の授与は発明大賞1件、発明大賞特別賞3件、発明功労賞10件、考案功労賞20件。このうちの最高賞である発明大賞を授与された岡崎稔氏は受賞者を代表して挨拶にたち、「音叉式振動荷重変換機構」の開発と商品化の経緯を述べて、来場者から賞賛の大きな拍手を贈られた。