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 2002年7月28日(2454号)


■エッセー日本 紀行「2002夏 横浜の波止場」

 舶来という言葉があります。良いもの、立派なものの代名詞になっていますが、それは外国の製品のことです。船で運ばれてきたことからそのように呼ばれたのです。

 横浜の波止場は舶来品が上陸する所だったのです。開港のころ横浜は、わずか100戸の家が建つ程度の寒村でした。現在は143万戸、人口は350万人に達しようとしております。2002ワールドカップサッカーの決勝戦は、横浜市の横浜国際総合競技場で行われました。カナリア軍団のブラジルがドイツに圧勝したことは記憶に新しいことです。

 外国の新しい文化は横浜の地に上陸します。ラグビーもそうで、私はこの地で横浜外国人倶楽部とゲームをしました。大学ラグビー部OBが混じるわがチームは強かったのです。ノーサイドの後、クラブハウスで飲んだビールはことのほか美味しいものでした。横浜というと中華街だけが思い浮かぶのは貧困な遊びをしている結果です。

 旅仲間と房総の白浜に出かけて野島崎灯台などを巡ったあと、東京湾アクアラインを戻って行った先が横浜市中区山下町の中華街でした。前日の宿では膳に箸を一度出したきりのYさんが皆と同じように箸を動かしていました。金持ちは美味いものを知っているものだと大いに感心したものです。外国船は横浜港に停泊することを喜びました。良い水を積み込めるからです。横浜港の水は赤道を越えるまで腐らなかったといいます。その水は相模川の上流部、道志川の水を引いているのです。

 横浜港の貿易(輸出入)に関する地位は、平成13年度には成田空港(176,655億円)、名古屋(91,621億円)、東京(91,461億円)に次ぐ4位で87,759億円です。以下神戸、関西空港、大阪、千葉、三河、清水、川崎、四日市、水島、博多空港、博多、堺、広島、門司、名古屋空港、鹿島とつづきます。横浜港は輸入だけでみると1つあがって3位になります。

 船で思い出すのは丸山健二です。芥川賞作家の丸山健二は無線技師として外国航路の船に乗るつもりでいたのです。思いは叶えられずに総合商社のテレックス係に収まります。自棄(やけ)を起こして小説を書くとこれが認められて作家生活に入るのです。丸山健二は、いまは長野県の山岳基地の大町市に住んでいて、4駆に犬を載せて出かけては犬とそこら中を走り回り、また木崎湖で鱒などを釣って暮らしています。仕事はもちろん小説書きですが、人間は孤独に耐えられることが大事なんだとうそぶいて世間に毒づく文章を書いています。

 人の運命は何がきっかけで、どこでどのように展開するか分からないものです。同じようなことで横浜港から上陸した外国文化は日本を大きく変えました。文明開化が今日のGNP世界第2位の日本につながるのです。

甲斐鐵太郎(旅行家)

 2002年7月28日(2454号)

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