計量標準の研究・整備に期待
産総研の計量標準総合センター(NMIJ)を中心に、国家標準へのトレーサビリティを必要としている計測器、計量器に対する標準供給をおこなえるよう努めている。標準整備計画は、知的基盤整備特別委員会で審議され、提示されている。特に@電気関連標準整備の加速、A次世代産業のためめ基盤整備、B国際相互承認に必要な基本となる標準の整備、C環境、安全への対応に必要な標準整備等が求められている。「平成15年度見直し版」では、2010年までに物理標準293種類、標準物質303種類を整備する計画になっており、前倒しで計画を遂行している。
広がる計量標準
近年、環境・安全・健康への関心が非常に高くなってきている。環境汚染物質の精密分析、振動・騒音の基準、体温計・血圧計・血液分析等の環境や社会の安心・安全に応える技術課題に対して計量標準は重要な役割を担っている。従来の物理標準だけでなく化学系の標準物質に対するニーズが高まっている。 現在よりも新概念・高精度・高安定性の標準が必要となってくる。従来からの標準を維持管理するとともに、時間標準、表面微小寸法・微細形状のナノメートルレベルの精密測定など、次世代型計量標準の開発研究を推し進め、自然科学・科学技術の発展に寄与することが重要になっている。 遺伝子治療や人ゲノムの解析など、バイオテクノロジー分野の技術的な進歩にあわせて、バイオ標準関連のニーズも高まっている。 NMIJの昨年の計量標準や校正技術に関する研究成果を見てみると、若手研究者を中心に、不確かさの指標として分散の期待値の表式を表示するシンボリックな計算を含む分散分析プログラムの開発、光の周波数・位相を精密に制御する光周波数シンセサイザの開発、新世代型密封セルによる平衡水素三重点の実現、「長さ標準器」の遠隔校正技術を開発、耳式体温計校正用標準黒体炉システムの開発、フェムト秒レーザーを用いた新方式の距離計の開発、気体の質量を精確にはかる高精度標準混合ガス調製装置の開発、FG5絶対重力計による高精度な重力加速度計測、静電容量標準の供給に貢献する溶融石英型標準キャパシタの周波数特性の測定など数々の成果を上げており、体制が徐々に整ってきた中での今後の成果が期待される。
トレーサビリティ普及に民間の力
トレーサビリティの普及に関し、NPOの研究会などがトレーサビリティの普及活動を実施していることが注目される。
JCSS認定事業者制度の登録制への移行期
2005年施行へ準備進める
2002年3月29日の「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」閣議決定等を受け、計量法の一部改正を含む「公益法人に係る改革を推進するための経済産業省関係法律の整備に関する法律」が可決成立し、03年6月11日付で公布された。この法律は、公益法人改革の法改正の一環であり、要件を明示して登録制にすることにより行政の裁量余地をなくすのがねらい。 今後は、04年度中を目途に関係政令及び省令の改正作業を行い、この内容を受けてNITE認定センターの具体的手続き詳細の整備を進める。施行は05年夏頃を予定している。 同法の成立で計量法トレーサビリティ制度のJCSS校正事業者は内容が変わる。@認定制度から登録制度に移行する。A登録基準が明確化された。▽特定標準器による校正等をされた計量器若しくは標準物質又はこれらの計量器若しくは標準物質に連鎖して段階的に計量器の校正等をされた計量器若しくは標準物質を用いて計量器の校正等を行うものであること▽国際標準化機構及び国際電気標準会議が定めた校正を行う機関に関する基準に適合するものであること、である。B更新制が導入された。登録後、政令で規定する期間を経過すると、更新を受けない限りその効力を失うことになる。更新年数は3年以上の期間を別途政令で規定する。C事業の区分は、計量法第2条の物象の状態の量を引用し「校正を行う計量器の表示する物象の状態の量又は値付けを行う標準物質に付された物象の状態の量ごと」に登録する。D認定から登録への経過措置も設けられている。
認定区分の拡大 04年度は、トルク、距離計、アンテナ係数などの追加が予定されている。