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日本計量新報 2007年12月9日 (2704号)

新光電子、世界初、音叉式分析天びんを発売
「音叉式分析天びんHTRシリーズ」11月21日発売

電磁力平衡方式なみの高精度で、
超軽量、省電力化、低価格を実現

新光電子(株)(岡崎稔社長)は、世界初の「音叉式分析天びん」を開発し、2007年11月21日から「音叉式分析天びんHTRシリーズ」として販売を開始した。ハワイにあるすばる天文台で利用されている世界唯一の「音叉式センサ技術」の活用によって、従来の電磁力平衡方式なみの220万分の1という高精度を保ちつつ、50%の軽量化、60%の省電力化を達成。また1台13万円台からという低価格化を実現した。研究機関、病院・薬舗など高精度天びんが必要な事業所向けに、年間1000台の販売を目指す。


世界で唯一の「音叉式センサ技術」

新光電子が世界で初めて開発した「音叉式分析天びん」技術は、同社が世界で唯一持っている「音叉式センサ技術」を活用している。音叉式とは、金属音叉の両端に加えられた荷重に応じて振動数が変化するという原理を応用した技術のこと。

音叉とは楽器の調律に使われる器具で、音叉を弾いた振動音に楽器を奏でた音を共鳴させピッチを合わせる。「音叉式センサ技術」は、音叉の振動特性をさらに引き出しやすくするため、2つの音叉を上下に組み合わせた金属音叉振動子が使われる。荷重がかかると、天びんの仕組み(ロバーバル機構=天びんの基本原理で、物を載せても天びん皿が固定され動かない仕組み)を介して音叉振動子に荷重が加わる。加わった荷重に応じて変化する音叉振動子の振動周波数を圧電素子で検出。圧電素子の信号を増幅し、デジタル処理して荷重を求める。

新光電子は創業以来43年間、計量・計測機器の専門メーカーとして活動を続けている。電子式個数はかりをはじめ調剤用天びん・本質安全防爆構造型はかりや各種物流測定装置など、その実績は、国内はもとより海外からも高く評価されている。

重量測定用のはかりは、ばね式、デジタル式など様々な方式があるが、1000分の1gを超えるようなマイクロレベルの精度が要求される業務用のはかりを一般に“分析天びん”と呼ぶ。高精度な天びんには一般に、欧米で開発された「電磁力平衡方式」と「電気抵抗線式」などが用いられ、電子天びんなどと呼ばれているが、稼働開始までの余熱時間の長さや消費電力が大きいことが課題だった。

新光電子の「音叉式センサ技術」は現在、世界最高レベルの光学赤外線望遠鏡であるすばる望遠鏡で導入されている。米国ハワイ島マウナケア山頂に設置され、自然科学研究機構国立天文台ハワイ観測所が運用している。150億光年先の星の光を集めるには巨大な反射鏡が必要で、すばる望遠鏡は口径8・2mという世界最大級の反射鏡を持つ。しかし、重さが23tもあり、自重で歪みが出て焦点が合わなくなってしまうため、超高精度な“力センサ”が必要で調整が必要になる。「音叉式センサ技術」はこの力センサのために導入されている。

音叉式分析天びん
「HTRシリーズ」の特徴

(1)220万分の1の計量性能(分解能)を実現=220万分の1の計量性能(分解能)は、すべて電磁力平衡方式による電子天びんに限られていた。そこに、世界で唯一「音叉式センサ技術」の開発を持つ同社技術陣の研究と努力の結果、世界で初めて、電磁力平衡方式以外のセンサを搭載し220万分の1の計量性能(分解能)を実現した。 ※220万分の1の計量性能(分解能)とは、最大220gから最小1万分の1g(0.1mg)までの試料を量れるという意味

(2)超軽量化、総重量を約50%減量=「音叉式センサ技術」では、荷重は直接デジタル量である振動数の変化として検出されるためA/D変換器が不要で、電磁力平衡方式に比べ軽くなる。同社ではさらに、ガラス製風防を、帯電防止樹脂製風防に換えることにより軽量化を実現した。※A/D変容器とはアナログ信号をデジタル信号に変換するコンバータのこと

(3)コンパクト化、約10%サイズ縮小=「音叉式センサ技術」では、電磁力平衡方式のような複雑な機構部を持たないため、研究・分析に必要なスペース(フラスコ等の使用)を最大限に確保しつつ、それ以外のスペースをカットし最小限にした。

(4)省エネ化、消費電力60%カット=電磁力平衡方式では電磁場形成のために大量の電力が必要だが、「音叉式センサ技術」では不要。分析天びんでは初めて電池駆動を実現した。ニッケル水素充電池4本で約10時間駆動(バックライトオフ時)が可能となった。

(5)起動後すぐに使える、ウォーミングアップ時間を大幅短縮=電磁力平衡方式では電磁場が安定化するまでウォーミングアップ時間が必要になるため、電源を切らず24時間365日間、電源を入れ放しで使うのが常識となっている。しかし、「音叉式センサ技術」で予熱時間が大幅に短縮され、起動後すぐに使える。環境に優しい分析天びん。

(6)同クラスで最も低価格=分析天びんの同機能のクラスにおいて、13万8千円〜16万5千円(税別)という国内で最低価格帯。すべての機能、条件を満足した上に、さらに低価格を実現した。


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