日本計量新報 2008年3月2日 (2713号) |
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第6回全国計量士大会開く
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左から=大会のようす、捧保文氏
計量士は計量法の制度と一体になった、法に組み込まれた資格制度である。計量法の仕組みのなかで唯一計量士の資格を有していなければならないとされるのは、「質量計の検査に関わり、その検査主体の役所に代わって検査を実施することができる」という業務である。「計量士の将来像を探る」という課題に対応するには、計量士の法的権限の範囲を広げることによって業務量を拡大する必要があるものの、法定検査などの場合には手数料の設定が商業的内容でないため、実施主体の役所からの費用の補填がなくてはならないことがさまざまな事例から明らかになっている。
また、計量計測に関する知識と技術を用いた品質管理ほかの企業支援アドバイスやコンサルティングなどは、その能力が人そのものに備えられていて内容や程度が一定でないため、これらの業務を計量士の業務としてビジネスの仕組みにするのには難しさが伴う。しかし、計量士が計量知識と技術を生かして個人事業や組織だった事業を運営している事例もある。そうした事例に学んで、計量法の枠組みに属さない事業を商業的に展開する道もある。
「第6回全国計量士大会」は基調講演ほか4件の報告、討論を通じて、この ことをさまざまな側面から確認する機会となった。
討論は多面的かつ総合的に進行した。どの議論課題に対する発言もうなずける内容であった。議論の締めくくりとなったのが、計量行政における適正な計量実施の確保に関した質量計(はかり)の検定・検査に関わることであったのも、当を得ていた。
発言者は、新潟県計量協会専務理事で元新潟県計量検定所所長の捧保文氏。同氏は「このことを述べたくて本日参加させてもらった」と前置きした上で、次のように話した。
現在、県などの行政は、とにかく行政費用を確保することに汲々としていて計量行政をまかなう費用の維持が困難な状況にあるため、指定定期検査機関制度や計量士の代理検査制度ほかを利用しようとしている。費用の面など十分な考察などせずに、計量協会などを指定定期検査機関に指定してとにかくこれまで行政機関が実施してきた計量事務を「丸投げ方式」ともとれる内容で放り出し、後は知らぬ顔をすることになるのではないか。立ち入り検査を計量士にやらせることは、理念的にはよいようにみえても、その費用を誰が持つのかということになると、その費用を立ち入り先に請求することなどできないのは当然であり、結局は行政機関が負担しなくてはならない。しかし、民間移行後はこの費用を用意できなくなるから、立ち入り検査は行われないことになってしまう。
立ち入り検査は行政罰を科す権限と表裏一体になっているので、その実施主体は計量行政機関であり、その実施も計量行政機関がやらねばならない。立ち入り検査と使用者規制は計量行政にとって一番大事な要件であるので、この制度を維持できるように計量行政の運営に特段の努力と工夫が求められる。指定定期検査機関や計量士制度を曲げて解釈して計量行政事務を安易に丸投げすることは、結局は計量制度の目的である適正計量の実施の確保のための体制を壊してしまうことになるというのが、現在みられる状況である。
地方公共団体の疲弊に何も手を打たず流れに身をまかせていると結局は計量行政が崩壊してしまうことを、経済産業省の計量行政室ほか関係機関の担当者は良く理解すべきである。
(次号以下へつづく)