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日本計量新報 2008年7月27日 (2734号)

大陽日酸、虚偽の計量証明書作成を指示
現在は是正し、新開発の自重計による取引へ

対象顧客は大阪府、愛知県など4府県270事業所
経産省は該当府県へ事実関係把握を依頼

液化ガス国内最大手の大陽日酸(株)(東京都品川区)は7月22日、液化ガスを販売する際、大阪、愛知、福岡、福島の4府県にある計量所(一般計量証明事業者)で虚偽の計量証明書を発行させていたことを明らかにした。合併前の「日本酸素」時代から、一部の取引で、計量所で実際に計量していないにも関わらず、虚偽の計量証明書を発行させ、これにもとづいて顧客へ代金を請求していた。対象顧客は約270事業所。2006年3月にはすべて是正している。


対象となる製品は、ローリー車で配送、納入されていた液化ガス(液化酸素、液化窒素、液化アルゴン)。虚偽証明書にもとづく代金請求をしていた顧客は約270事業所。

液化ガスの取引は顧客との個別の取り決めで態様を決めている。液化ガスを納入する際は、顧客立会いのもと貯蔵タンクの液面計で納入量(立方メートル)を確認し、この液面計の数値を代金請求に使用する場合と、これに加えてトラックスケールによるローリーの質量計量値(kg)を使用する場合がある。この場合は、納入前と納入後にローリーの質量を計量し、その差で販売質量を算出する。質量計量値をさらに立方メートルに換算して請求する場合もある。

トラックスケールでの質量計量値を使用する場合にも、ガス生産工場や顧客のトラックスケールを使う場合、市中の計量所(一般計量証明事業者)を使う場合などさまざまな形態がある。今回の虚偽の計量証明書作成は、この市中の計量所を使うケースで一部行われていたもの。同社の取引量の約4%に該当する。

市中の計量所で実際の計量を行わずに、ガス生産工場のトラックスケールによる計量値や、貯蔵タンク液面計の値を質量換算して計量証明書を作成していた。

大陽日酸によると、顧客がトラックスケールを所持していない場合や、基地が近くにない場合、配送ルート上に適当な計量所がない場合に虚偽の計量証明書作成をしていたという。

いつから虚偽の計量証明書がつくられていたかははっきりしないとしているが、合併前の「日本酸素」時代から、一部の取引でつづけられてきた。同社では、合併を機に液化ガス物流部門を本社に集約していく過程で不正が判明したとしており、2006年3月には全て是正は完了しているという。

現在は、2000年から矢崎総業(株)と共同開発したLI(Load Indicator/自重計)を物流システムに取り入れ、約90%のローリー車にLIを搭載している。同社は顧客に対して、トラックスケールや液面計に置き換わる面前取引に向けた取り組みを進めている。

経済産業省は、該当府県に依頼して事実関係を把握中である。5月に経済産業省のホームページへ匿名で、大陽日酸や具体的な計量所名をあげて、計量法違反であるかどうかを問う質問があった。経産省知的基盤課は、事実とすれば計量法違反であると回答するとともに、質問内容を該当府県へ周知した。その時点では虚偽の計量証明書発行の事実は把握できないとの回答であったが、今回の同社の発表を受けて、改めて事実関係を把握中である。7月22日に同社から報告を受けている。大阪府計量検定所は立入検査して実情を把握し指導していくことにしている。計量法に基づく報告徴収なども検討中である。経済産業省も大陽日酸に対し、現在も不適切な計量処理方法が行われていないかなど事実関係を調査するよう求めるとともに、直接計量証明事業者からも報告を求めることにしている。

計量法では、都道府県知事は、計量証明事業者が計量証明の事業について不正の行為をしたときは、その登録を取り消し、又は一年以内の期間を定めて、その事業の停止を命ずることができる、と定めている。

※『日本計量新報』掲載原稿に加筆しています。


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