日本計量新報 2008年8月3日 (2735号)
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日本列島ぶらり旅
霧ヶ峰高原はキスゲが咲いて夏を迎え、
マツムシソウが咲いて風が立つ
霧ヶ峰高原を黄色に染めるニッコウキスゲが咲くと夏が来たと言い、ニッコウキスゲが少なくなってマツムシソウの薄紫色の花が目立つようになると風立ちぬ秋になる。
その高原の夏の前奏となるのがレンゲツツジで、6月中旬に車山肩の駐車場周辺や車山などを赤い絨毯にする。盛りが2週間ほどのレンゲツツジの後でニッコウキスゲが出てきて、7月20日前後の1カ月ほどの霧ヶ峰高原の短い夏を歌いあげる。
この高原はビーナスラインという高原道路で小淵沢・茅野から松本までをつないでいる。霧ヶ峰周辺の道路はスキー場への足として冬場でも使えるので、四季を通じて高原の自然に親しむことができる。
八ヶ岳から霧ヶ峰高原へとつづく一帯は別荘地帯となっていて、遠目には見えないようにすそ野の樹林帯に建物が隠れている。北杜市(旧長坂町)や小淵沢町に住まいを移し、長門町(現・長和町)の学者村に夏用の住まいを持っている知人がいて、私にはうらやましい。
八ヶ岳登山の最短基地である美濃戸口にまで別荘地が迫っているのは自家用車が日本の交通手段になっていることの結果である。近年、自動車という便利な道具と地球環境との調和を図るための社会政策が打ち立てられ推進されているが、それは燃料電池をエネルギー源にすることによって実現されることになるだろう。
短絡的な自然保護政策が招くまずい結果を大菩薩峠と大菩薩嶺付近に見ることができる。秋口に咲くヤナギランなどが鹿に食い荒らされたために尾根付近はクマザサの林に変わってしまった。霧ヶ峰高原も鹿がニッコウキスゲなどの草花を食い荒らしている。松本からビーナスラインに登って扉峠付近に腰を下ろして遠くを眺めていたら、夜行性の鹿が林の中の草地で餌をはんでいた。クマザサの林よりも様々な草花が生息する状況の方が自然が豊かであるのだ。霧ヶ峰高原のコロボックルヒュッテ周辺のニッコウキスゲの花園が便所くさかったのは鹿の尿が原因であった。写真はニッコウキスゲが最盛期の霧ヶ峰高原。
(写真と文章は甲斐鐵太郎)
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