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日本計量新報 2008年10月26日 (2746号)

常用漢字から「錘」「匁」「勺」「銑」「脹」 の5文字削除の方針
文化庁の審議は大詰め、2月に最終案提示して意見求める

「錘」「銑」は存置の意見も
関ブロは「錘」「匁」「勺」の存置要望議決

文部科学省国語審議会の活動をうけついでいる文化庁の文化審議会国語分科会漢字小委員会は、9月22日に開いた委員会で、現行の常用漢字から「錘」「匁」「勺」「銑」「脹」の5文字を削除する案を承認した。削除対象となった理由は、日常生活に使われることが少ないということ。審議は大詰めである。2月に最終案を公表し、広く意見を求めることにしている。これに対し、関東甲信越地区計量団体連絡協議会は、5文字うち「錘」「匁」「勺」を常用漢字に残すよう求める決議をした。


9月22日第25回文化審議会国語分科会漢字小委員会で承認

9月22日、第25回文化審議会国語分科会漢字小委員会が経済産業省で開かれ、「新常用漢字表(仮称)の作成について」を議論し、「本表から外す可能性の高い常用漢字」として「錘(すい)」「匁(もんめ)」、「勺(しゃく)」、「銑(せん)」、「脹(ちょう)」の現・常用漢字5字の削除を含む字種候補(191字の追加)を決めた。

2009年2月に最終案を公表、パブリックコメントを募集して世論の反応を見てから、最終判断をする。

委員からは、「錘」、「銑」は産業上の実態として明確に使用されていることから、削除すべきではないという意見も提出されている。

10月21日開催の漢字小委員会は、追加予定字種191字の音訓を審議した。

字種の選定は、世論の反応や、各行政機関の必要性の実態に加え、文化の承継など、削除予定の漢字に関係する理念も吟味される必要がある。

「錘」「銑」には産業上の実態、「匁」も同様

「錘」は機械式の質量計(はかり)の一部のものでは重要な構成要素であり、分銅と似たような働きをする。「計量法施行規則」や「特定計量器検定検査規則」などの計量関係法令においても「錘」が使用されている。計量器産業の実際の場面でも「錘」を「すい」または「スイ」と書くと意味が伝わりにくく、不都合きわまりない。語例も現表は「紡錘」であり、実情を表していない。

「銑」を使った単語としては、「銑鉄」が直ぐに思い浮かぶ。銑鉄とは、鉄鉱石を溶鉱炉で還元して取り出した鉄のこと。不純物を取り除くなどの加工処理がなされて、延べ板その他の鉄材が造られる。

「匁」は計量単位で、現在の計量法でも真珠の質量表記の単位「mom」として使われており、語源の「匁」は文化の継承として重要である。

「勺」は容積の単位。日本酒を飲む場合、基本となるのが1合であり、1 勺は1合の10分の1を表す。1合5勺は、おおよそ180ミリリットル+90ミリリットルである。

「勺」は「合」同様に、日常生活に根ざした計量の概念である。また、酒量のコントロールして健康を保持するということからも残しておくべき計量単位である。

日本酒を飲む時、1合飲んだあとにすぐもう1合飲むのではなく、その半分の5勺があるべきである。その際、1合以下は「半分」とか「3分の1」と言い換えることになっては、いかにも寂しい。しかし、「勺」を「しゃく」と平仮名で表記すると、「勺」という漢字の字義が失われてしまう。

「脹」では、「膨脹」が直ぐ思い浮かぶ。膨脹を膨張と言い換えてよいのかどうか、判断は難しい。

行政機関は常用漢字のみを使用することが原則

常用漢字とは、「法令・公用文書・新聞・雑誌・放送等、一般の社会生活で用いる場合の、効率的で共通性の高い漢字を収め、分かりやすく通じやすい文章を書き表すための漢字使用の目安」。あくまで「目安」となるもので、日常的に使う漢字を常用漢字のみに制限するものではない。

 「公務員」(行政機関)に対しては、新常用漢字に盛り込まれた漢字の範囲内で使用するという実質上の制約が生じる。その運用は、常用漢字のみを使用することを原則として、常用漢字外の字は、語そのものの言い換えが行われるか、その字のみ平仮名書きするか、常用漢字外の字を使用しつつ初出の箇所にのみ振り仮名(ルビ)を振るというもの。

また、常用漢字は、小中学校の義務教育で学習することが定められている。

(6面につづく)


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