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日本計量新報 2009年1月1日 (2755号第1部)

新日本百景 自然のアルバム
富士山

その姿を目にして「ウオー」と声を発するものの代表が富士山(標高3,776m)である。山はもちろんのこと、何とか百景などは問題ではない。富士山は何故「ウオー」なのか。それは日本人の心の奥に潜む美の概念を端的に表現しているからだ。小学生に絵を描かせるとまずは富士山で、見たこともないこの山を懸命に絵にする。葛飾北斎の錦絵による富士図の連作版画「冨嶽三十六景」は、大胆な構図や遠近法を用いて描いている。夏の赤富士を描いた「凱風快晴」などはやはりいい絵である。この赤富士にしてもその他の富士山の絵にしても、見たままということではなく誇張がある。誇張されたそそり立つ姿は実際に富士山を見た印象と重なる。撮影した写真と北斎の赤富士を比べると、その三角形の角度は北斎の絵が2倍にもなっている。山岳信仰にかかわるさまざまな絵はみなそのように強調されている。誇張の極限が民話などの物語だと考えると、割り算によって実際の姿が見えてくる。NTTの08年カレンダーは1月の写真に富士山を採用していたのであるが、お日様が当たるその富士の写真は西日のものであった。正月に開くカレンダーであれば朝日であるべきものなのだが、富士山の状況を知らないカレンダー製作者は絵柄が綺麗だということでその写真を選んだのだろう。富士山を知っている人ならば絶対にそれを採用することはない。その写真は山中湖畔の平野地区から撮影されたものであった。その山中湖村平野の民宿「しろがね荘」には富士山を撮影するライブカメラが設置されていて、インターネットにアクセスして富士山の様子をいつでもどこからでも見ることができる。YBS山梨放送や沼津のweb製作会社サンプラスなどは別の場所から富士山に向けたライブカメラを稼動させている。サンプラスは富士山ライブカメラによって800万件のアクセス数を獲得している。立地と知恵を活かすと凄いことができることの証明の一つである。写真は道の駅富士吉田で12月6日午前7時38分に撮影。この地にはドーム型の富士山頂気象レーダーが移設されていて見学できる。気象衛星によって山頂レーダーの役割が終わった。このレーダー制作には気象庁に勤めていた作家の新田次郎氏がかかわっていて、山頂へ荷揚げするボッカの仕事をしていた人々からの聞き取りによって『強力伝』が書かれた。話が飛んで、霧が峰高原にある車山山頂の気象観測レーダーは富士山頂レーダーが役割を終えるころに工事がなされていて今も稼動しているのであるが、こちらは役割を果たしているのであろう。技術の発展と設備のことでは未来予測が大事になる。(写真と文章は旅行家 甲斐鐵太郎)

 


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