景況、明るい指標も出始める
景気ウオッチャー調査、機械受注に改善見られる
米経済にも景気後退に歯止めの兆候
「月例」は「厳しい状況にある」を据え置く
経済指標は軒並み厳しい状況を示しているが、そのなかにも明るい指標が見え始めてきた。街角の景況感をみる景気ウオッチャー調査や、民間設備投資の先行指標となる機械受注が改善されている。米連邦準備理事会(FRB)の地区連銀経済報告(ベージュブック)も、米国のリセッション(景気後退)が終わりに近づいている可能性を示す兆候が散在的に見られるとしている。しかし、全体的には厳しい指標が公表されており、4月の月例経済報告は「急速な悪化が続いており、厳しい状況にある」に据え置いている。
4月の製造工業予測指数は3%台の増加
経済産業省が4月15日に公表した2月の鉱工業生産指数確報値(2005年=100、季節調整済み)は69.5と、前月比9.4%低下となり、1月の10.1%低下から低下幅が縮小した。出荷も速報値が上方修正されている。電子部品・デバイスの出荷は前月比0.6%の増加に転じた。反転の兆しがでている。
4月の製造工業予測指数も修正され、プラス3.1%と2カ月連続で3%台の増加となった。
中小企業は日本中が「雨」
商工組合中央金庫(商工中金)が4月15日に発表した「中小企業の地域別景況」(3月調査)は、今年1〜3月の景況感は全国10地域のすべてで、6段階評価で最悪の「雨(非常に悪い)」とした。日本全域を「雨」と判断したのは1993年の調査開始以来初めて。
4〜6月の見通しも全域を雨とした。中国での消費の持ち直しが、日本の製造業にプラスになるか注目される。
計量計測機器の指標も厳しい
経済産業省が4月15日に公表した2月分の機械統計確報では、主なところで電気計器、電気測定器、工業用計測制御機器、精密測定機器、ガスメータ、工業用計重機、分析機器などの生産額が前年同月比でマイナスになっている。医用測定器、試験機は増えている。(詳細は次号以下)
機械受注、5カ月ぶり増加
内閣府が4月9日発表した2月の機械受注統計(季節調整値)は、民間設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」の受注額が前月比1.4%増の7281億円となり、5カ月ぶりで増加に転じた。
内閣府は基調判断を「大幅に減少している」から「基調としては減少が続いている」とし、上方修正した。
鉄鋼業、非鉄金属、精密機械などの受注が増加した。民需と官公需、外需などをあわせた受注総額は、7.1%減で1兆4593億円。
内閣府の見通しでは1〜3月期の「船舶・電力を除く民需」は前期比4.1%増となる。
機械受注統計は、将来の設備投資動向の先行指標となるもので、不規則な動きをする「船舶・電力」を除く企業の投資意欲を知るうえで注目されている。
景気実感が3カ月連続で改善
内閣府が4月8日に公表した3月の景気ウオッチャー調査は、街角の景気実感を3カ月前と比較した現状判断指数が、前月に比べ9.0ポイント上昇して28.4となり、3カ月連続で改善した。
家計、企業、雇用関連のすべての指数が2月より上昇した。
内閣府の総合判断は「景気の現状は極めて厳しいものの、悪化のテンポがより緩やかになっている」としており、2カ月連続で上方修正した。
2〜3カ月先を見る先行き判断指数も、前月比9.3ポイント上昇の35.8となった。
4〜6月期は工作機械受注が伸びる可能性
日本工作機械工業会が4月9日発表した3月の工作機械受注動向(速報値)は、前年同期比84.5%減の219億9100万円となった。内需は86.8%減の84億6100万円、外需は82.6%減の135億3000万円で、主力の自動車産業の設備投資が復調していないことなどから、内外需とも厳しい環境が続いている。
しかし、前月比では7.7%増えており、下げ止まりつつあるといえるのではないかとの見方もある。設備投資が回復し、4〜6月期は工作機械受注が伸びる可能性は高く、外需でも、中国が引っ張る形で工作機械受注を押し上げそうだとする。
国際収支は2カ月ぶりに黒字
財務省が4月8日公表した国際収支状況速報によると、2月経常収支は1兆1169億円の黒字となり、2カ月ぶりの黒字に転じた。
個別指標では明るい動きも
内閣府が4月6日公表した2月の景気動向指数(速報値、2005年=100)は、景気状況を示す一致指数が86.8と前月比2.7ポイント低下した。
ただ、内閣府は、個別の指標では、消費者態度指数や中小企業の売り上げ見通しなどが先行指数のプラスに寄与しており、反転とはいえないが、先行きには少し明るい動きもみられるとしている。
6月見通しは11期ぶりの改善見込む
日銀が4月1日公表した3月の企業短期経済観測調査(短観)によると、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業・製造業がマイナス58と、74年5月の調査開始以来、最悪の水準になった。
雇用の過剰感も過去最大の悪化幅となった。
大企業・製造業のDIの6月の見通しはマイナス51で、06年9月以来11期ぶりの改善を見込んでいる。
3月以降は増加見込む
経済産業省が3月30日公表した2月の鉱工業生産指数速報(2005年=100、季節調整済み)は前月比9.4%減の68.7と5カ月連続のマイナスとなった。基調判断を4カ月連続で「急速に低下している」に据え置いた。
3月の予想は自動車などが回復し2.9%増、4月も3.1%増を見込むが、1〜3月期では23.2%減と5・四半期連続のマイナスとなる見通しである。
生産拡大の企業も
シャープは4月8日、3800億円を投じて堺市に建設中のテレビ用大型液晶パネル新工場を10月に稼働すると発表した。これまで10年3月をメドにしてきたが、今後は中国など新興国向けを中心に液晶テレビ需要が回復するとの見込みから、新工場の早期稼働による生産拡大に転換した。
倒産件数は3年連続増加
東京商工リサーチが4月8日発表した2008年度の全国企業倒産件数(負債額1000万円以上)は、3年連続の増加となる前年度比12.39%増の1万6146件で、02年度以来6年ぶりに1万6000件を超えた。負債総額は、前年の2.4倍で戦後5番目の14兆189億円。上場企業の倒産は戦後最悪の45件となった。同時に発表した09年3月の倒産件数は前年同月比14.1%増の1537件。10カ月連続の増加となり、6年ぶりに1500件を上回った。東京商工リサーチによると、3月の統計では、建設業の倒産件数が4カ月ぶりに前年を下回るなど、政府の緊急保証制度などが効果をあげた事例もあるという。
米景気、底入れの可能性も
米連邦準備理事会(FRB)が4月15日発表した地区連銀経済報告(ベージュブック)は、収縮のペースは鈍化しており、リセッション(景気後退)が終わりに近づいている可能性を示す兆候が散在的に見られるとしたと、ロイターなどが報じた。
「12地区中5地区が減速ペースの減速を報告した。複数の分野で経済活動が低水準で安定化しつつある兆しが一部の地区で見られる」と指摘している。
バーナンキ議長も4月14日、米ジョージア州アトランタで講演し、米景気の現状について「急激な景気の落ち込みに緩和の兆候が見えてきた」と述べ、景気後退に歯止めがかかりつつあるとの認識を示している。
オバマ大統領は4月14日、経済再生へ向けた取り組みの効果が表れつつあり、経済が前進する兆候を生み出し始めている、と述べた。
欧州の銀行決算は好調
ロイターは4月14日、欧州では今後、銀行の第1・四半期の決算発表や営業報告が相次ぐが、昨年第4・四半期から一転して好調な内容になるとの見方が多いと報じた。
韓国経済に回復の兆し
韓国経済にも回復の兆しが見られる。ウォン安などで3月の貿易収支が過去最高の黒字を記録した。鉱工業生産なども回復しており、就業見通しも好転しつつある。
中国経済は良好な兆し
ロイターによると、中国の温家宝首相は4月11日、中国経済は世界的な金融危機のなかでも良好な兆しを見せているとの見解を示した。3月の鉱工業生産は、前年比8.3%増となっている。
(おわり)
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