日本計量新報 2014年1月1日 (2993号)第2部4-5面掲載
4、動脈硬化計測事業の立ち上げ

目処がついてきた
4つめは、動脈硬化計測です。これも以前から力を入れていきたいと思っている分野ですが、2014年中には発売したいと考えています。
ーー動脈硬化の状況を計測するということですか。
原理そのものは簡単です。管のなかで波を送ると、管が硬ければ波が早く進み(伝播する)ます。柔らかい管では波の伝播が遅くなります。つまり、管のなかを進む波の速度を測定すれば、管の硬さがわかるわけです。動脈硬化計測の場合は血管の硬さを測定することになります。
5年くらいかけて開発しています。薬事法との関連や、臨床試験データの取得など、いろいろ難しい問題がありますが、ようやく目処がついてきました。
第2の成長期にする
これら4つの力を入れている事業で成果が出れば、エー・アンド・デイにとって第2の成長期になると期待しています。
海外販売、海外生産を今後も推進
ーーエー・アンド・デイの国内外の売上の比率などはどのようになっていますか。
売上の60%超は海外で
現在、海外市場での売上比率は、60%を超えています。生産においても海外生産の比率が60%を超えています。
海外生産はさらに進める
為替の変動と影響は微妙なものがありますが、海外での販売、海外での生産を重視する方針は変わりません。海外市場での販売をよりいっそう推進するとともに、海外での生産も引き続き推進していきます。将来的には、自動車関連の大型システムを海外生産したいと考えています。
ーー経済の変動にどう対処されますか。
景気の変動は、今後も必ずあります。しかし、計量計測というのはすべての産業にとって基本であり、前提となるインフラですから、そんなには暴れないですね。したがって、私は時の流れに順応していくほかないと思っています。
自動車技術開発の支援を
大型機械の試作組み立て工場を建設
2014年春の完成予定で、埼玉県の鴻巣に大型機械の試作組み立て工場をつくります。
ーー大型機械というのはどのようなものですか。
加振式ムービングベルト
ベルトを回しながら加振して悪路(荒地)走行を台上で自在に再現する「加振式のムービングベルト」などの自動車性能試験機です。
上下、ステアに加振しながら、時速200km以上の安定した走行状態を再現します。これまでは米国の企業が有力でしたが、当社も高い評価をいただくようになりました。
油圧可変動バルブ
その他の面白い試験装置に「油圧可変動バルブ」があります。これは世界でほかにはありません。油圧方式による可変動パルブシステムです。
左側の可変動バルブでは、カムの形状をさまざまに変えて試験することで、燃費が向上する最適なカム形状を見つけることができます。右側は混合比や圧縮比を変えることで、エンジンの燃焼効率がどうなるかを試験することができます。燃焼効率の最適化をはかることができる究極の装置です。非常に好評です。
エンジン・テスト・ベンチ
今、自動車は信号などで止まったときにアイドリングストップしますね。このアイドリングストップ時における失火再現だとか、無負荷で動かすことによってエンジンの状態がどうなるかということをみたいという要求があり、当社の、200Hzまで軸共振がないエンジン・テスト・ベンチが注目されています。
自動車技術開発に役立つツールを提供
今、日本の産業では、家電製品や半導体関連の製品、通信関連の製品は、海外のメーカーに負けていますね。自動車産業がその二の舞いとならないために、オールジャパンでどうするかが問題です。
当社の試験装置は、こうした先進の技術開発に役立ち、自動車開発におけるコスト削減と開発期間の短縮化に貢献します。
逃げない、ぶれない、諦めない
ーー古川社長が常に心がけていることは何でしょうか。
技術にこだわる
販売が出発点の会社と技術が出発点の会社では、技術に対する考え方が大きく異なっていると思います。企業によっては、変わり身が早く、技術への執着がない企業もあります。これも企業としての行き方だと思います。しかし、これは当社の行き方とは異なります。当社は、技術にこだわっています。
当社は1977年の創業ですから、2014年で37年経ったことになります。やはり、1982、3年くらいまでは大変でしたね。
ものになるまで諦めない
企業が成長するかどうかは、事業の芽が見つかるかどうかということもありますね。当社は、幸いにしてそういう芽を見つけることができました。しかし、それはすぐにものになるわけではなく、そうなるまでには5年、10年という時間がかかります。ものになるまで諦めないということが重要です。
当社でいえば自動車関連の開発支援システムがそうです。最初は「はかり屋がなんで自動車の仕事をやるんだ」と言われました。しかし、自動車は「力」で動いています。はかりも「力」を計測しているわけです。そういう視点でみると、実はそれほどジャンルが違うものではないんです。
私が社内でよく言っていることは「逃げない、ぶれない、諦めない」ということです。この業界では、当社は最後発のメーカーですから、この精神で事業を推進して、旧来の状況を変革してきました。
まだまだやることはいっぱいあります。
−−ありがとうございました。
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