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新しい技術で新しい需要を

(株)チノー 苅谷嵩夫社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.1

日本計量新報 2015年4月26日(3054号)2面掲載

水素社会へ向けて、新製品を開発

−−設備投資に力を入れられていますね。

設備投資が完成

この4、5年思い切った設備投資をしてきましたが、ようやく一通り完成しました。
 構造改革として、群馬の事業所と埼玉の事業所、山形の事業所の分担をはっきりさせました。この再編成によりシナジー効果が出て、うまく動いています。
 再編成で仕事に余力が生まれると、新しい仕事にどんどん取り組んでいけるようになります。これは経営環境の再整備として取り組んできました。
 事業の構造改革ということですから、これがすぐ売上げに結びつくものではありませんが、ものづくりの体制はこれでかなり整備されました。私は、これは将来に向かって必ずよい方向につながると信じています。

−−業績も好調です。

業績は好調

2014年12月まではそこそこという感じでしたが、年が明けてだいぶよくなってきました。期末までにはもう少しよくなると思っています。海外事業でもいろいろ整備しましたから、2015年度はがんばっていこうということで全社をあげて取り組んでいます。
 アベノミクスの先行きとかいろいろいわれていますが、われわれの会社は景気がどうなるのかということをあまり気にしてもしかたがありません。私は社内で「世のなかの動きだけにつられて右往左往するのは止めよう」とずっと言ってきました。しかし、リーマンショックはさすが影響が大きかったですね。

リーマンショック以前のレベルの回復

2007(平成19)年度は非常に業績がよかったのですが、その後リーマンショックに見舞われました。そこで、07(平成19)年度を基準に、これをリカバーしようということでこれまでやってきました。ずいぶん時間がかかりましたが、ようやくこの峰が見えてきました。構造改革とか環境整備もそのために取り組んできたわけです。
 リーマンショックの際にも、当社は人減らしはしませんでした。しかし、売上は大幅に落ちたわけですから、これは大変でした。意識改革もして、改善工夫はずいぶんやりました。
 私は、毎月各事業所に行っています。昔は「あ、社長がきた」という感じでしたが、今は、自分たちがやっていることを一所懸命にアピールしてくれます。大きな変化ですね。

15年度は打って出る

したがって、これをふまえて15(平成27)年度は打って出ます。
 消費税増税の影響もたしかにありましたが、総選挙を経て政権が安定したことで、設備投資も動き出しました。総選挙のときには設備投資の動きがちょっと止まりましたから少し心配しました。途中で止まった設備投資が今集中していますからそれに対応するという意味では大変なのですが。この動きを次につなげたいですね。
 この設備投資が次の発展の要素になってきますから、設備投資の進展は、当社にとっては一つのチャンスになってくると思います。

−−どのようにして打って出るのでしょうか。

新製品の開発

従来型の製品は海外へ生産がシフトしていますが、最近は、国内生産がまた増えていますから、それもにらんで新しい製品をどんどん開発していきたいと思います。
 われわれの仕事はインフラの一番基本のところですから、必ず動きがあります。計量計測は工業生産のための基本ベースです。また、企業が世界に打って出ていくためには効率がよいものづくりをしなくてはなりませんから、こういうところに計量計測機器の需要は必ずあります。

新しいジャンルを拓く

ではそのなかでわれわれが得意としているところは何か。燃料電池の開発支援のための評価試験装置ですね。長い間これをメーカーと連携しながら開発し、沢山の納入実績があります。
 これを水素社会をにらんでもう一歩新しく展開していきます。燃料電池もいろいろな方式がありますが、当社は全方位的にほとんどすべての方式にかかわってきていますから、次の段階は単なる開発支援ではなくて、生産や検査・保守およびそれにまつわるさまざまな計測にかかわっていきます。
 燃料電池自動車もいよいよ実用化され、水素を作り、貯め、運ぶためのインフラ設備の整備に伴い、水素に対する安全・安心のしくみが重要になります。そのためにはセンシングというのが非常に大事になってきます。そして、微量のガスを検知し計測するような技術はわれわれが最も得意としているところです。
 来るべき水素社会の発展へ向けて、われわれのもっている技術、設備をフル活用して、新しいジャンルの製品、システムを開発していきます。
 現在までの燃料電池(FC)の需要に関連した装置、あるいは当社はガスセンサをずっとやってきていますから、これをもう一段発展させ、MEMS(微小電気機械素子)の技術を活用して、本格的な水素漏えい検知センサなどを世に出していこうと思っています。
 このように当面の一番の目標は、新しい技術で新しい需要を取り込んでいくことです。

従来の顧客を大事にする

ただ、それと平行して、これまで当社が築いてきたベースはしっかりと守っていきます。バックボーンはきちんと守って、これまでのお客様に一層満足していただける製品とサービスを継続して提供していく、そのなかで新しい展開をしていくことは必ず必要です。
 このように新しい顧客を開拓すると同時に、従来の顧客も大事にして、これまで以上に深く耕していく。この2つを同時にやっていく必要があります。

サービスと営業を再編成(1)

現場主義で(1)

さきほど従来のお客様も大事にするという話をしましたが、この点で大事なことが「現場主義」です。営業を考えてみると、当社のような商売では、昔は非常に泥臭く、お客様の現場へ行き、技術の問題もお客様と一緒に考えるというのが営業のスタイルでした。
 それが現在は、お客様のほうでも現場と購買が分離されたこともあり、事務所での商談が多くなってきます。それですとどうしても話は価格の話ばかりになってしまい、技術の話だとか、お客様の目的に最も合う計測器は何かとかいう突っ込んだ話し合いが薄くなってしまいがちです。

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