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2003/1/29
日刊 日本計量新報(日刊 計量計測データバンク)
2004年度新紙幣の導入控え 偽札駆け込み乱造? 九州で240枚 今年に入り九州各地で偽札が相次いで見つかっている。二十八日までにパチンコ店の自動販売機やタクシーから発見された偽の一万円札、千円札、五千円札は判明分だけで計約二百四十枚。透かしもなく一見稚拙だが、磁気インキ使用で自販機の識別センサーを通過するタイプが目立つ。市販の機材を使えば特殊技術のない“素人”でも偽造が可能なうえ、二〇〇四年度からは最新の偽造防止技術を駆使した新紙幣に切り替わるだけに、各県警は「駆け込み的に偽造が増える恐れもある」と警戒している。
■確認は難しく
年初めに発見されたのは福岡県久留米市。二日から三日にかけ、タクシーの売上金から偽一万円札が三枚見つかった。以後、南九州を中心に発覚が相次ぎ、鹿児島県では約百二十枚に上っている。
いずれも透かしや目の不自由な人のための識別マークもなく、明るい場所で見れば偽物と判別できる。このためタクシーで使用されたのは夜間に集中しているが、「お客さんから受け取った紙幣の透かしをいちいち確認するわけにはいかない」(ある運転手)。福岡市タクシー協会は「手袋を外し、手触りに注意するしかない」と頭を抱える。
■市販の機械で
深刻なのは自販機の被害。パソコンなどを使い、磁気インキで印刷することで自販機の識別装置をすり抜けていた。この手法はマニア向け雑誌で紹介されたのを機に急速に広まったとされる。
日本自動販売機工業会(東京)は「二十年前に現紙幣が導入されて以降、パソコンなどの性能は格段に向上した」と指摘。角度により色や模様が変わる「ホログラム」などが採用される新紙幣向けに、識別装置の交換が今年後半から始まるが、「それまでは偽造防止に多額の投資をするのは難しい」と打ち明ける。
■「重罪」認識を
調べでは、一連の偽札のうち一部の記番号は一致しており、同一グループが九州各地を移動しながら使用している疑いもある。昨年十一月には、高齢者の商店を狙った偽札事件で暴力団組員が福岡県警に逮捕される事件が起きており、各県警は今後も暴力団や外国人が絡んだ犯罪組織の資金稼ぎに利用される可能性は高いとみる。福岡県警幹部は「単なるコピーでも、通貨偽造罪の罰則は無期または三年以上の懲役。『重罪』と認識してほしい」と警告している。