ホーム・計量計測データバンク2005年度計量法改正情報BOX>座談会(2007/06/15)【1】

旺盛に計量管理を実施している適正計量管理事業所
「適正計量管理制度と計量士」座談会

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【1】

素晴らしい活動を社会と消費者に知らせたい

計れるからつくれる、計られているから商品量目も正しい

横田俊英 はじめに、この座談会の趣旨を少し述べたいと思います。

 私たちは計量管理事業諸制度の発展のため、計量法の定めに対応して旺盛に計量管理を実施して事業所の素晴らしい活動を社会と消費者に知らせていきたいと考えております。

 計れるからつくれる、計られているから商品量目も正しいということで、計量法の規定に直接関わる計量とそれを含む総合としての計量とその管理を通じて、消費者・国民に安全と安心を提供しているのが「適正計量管理事業所」であります。

 世の中に人々に「適正計量管理事業所」が実施している計量管理活動を周知するために、同事業所で業務を担当している計量士の皆さまに、安全と安心と快適をつくり出す仕事の内容を説明していただきたいと思います。

 計量があるからモノづくりも商品の適正な計量も実現するのですが、これに関わる計量法の制度内容が十分であるかそうでないか、そして今後の「適正計量管理事業所」の発展のためになすべきこと、その他関係することを総ざらいに検証するための議論をしていただきたいと思います。

 「適正計量管理事業所」制度の計量士制度の歴史を確かめ、国民が企業に求める企業の信頼性のこと、それに対応する計量の制度としてのこの事業所制度がこの先どのようにあるべきかなどについても話を進めたいと考えます。仮に今「適正計量管理事業所」制度を利用することに負担感があるとすれば、企業の要求と制度をどのような形で融合させていくのかということにも話題を広げたいと存じます。

 「適正計量管理事業所」制度の趣旨と指定を受けている事業所の計量管理への意気込みを大いに社会と国民に示していただいて、この制度の意義を周知したいと考えます。また多くの企業が進んで「適正計量管理事業所」の指定を受けたいと希望するようになるよう、動機付けに付いても大いに語っていただきたいと考えます。動機付けの足を引っ張るような制度上の不具合があれば可能な限りそれを解消する方策に関しても提言していただき、改善と改良の方向付けがなされることも期待いたします。

計量の発展のために今後も努力していきたい

横尾明幸(司会) 司会をさせていただきます横尾です。(社)東京都計量協会に所属しています。東京都計量検定所を退職し、計量士の業務をやるようになってから3年ほどです。計量の発展のために今後も努力していきたいと思っています。

伊勢丹の品質管理室で計量管理を担当

恵田 豊 (株)伊勢丹の品質管理室で計量管理を担当しています恵田です。

 計量に関する履歴としては、(社)東京都計量協会に約8年、現在の会社に所属してからは21年になります。

松坂屋上野店と銀座店の計量管理を担当

林 紘治 (株)松坂屋の計量士として、上野店と銀座店の計量管理を担当しています。その前は東京都計量検定所の職員です。

東京の築地市場で計量管理を担当

安斎正一 東京の築地市場で計量管理を担当しています。私は計量に関する仕事を45年やっています。私が最初に計量に関する仕事に就いたのがこの築地市場です。今から40年ほど前に6年間、計量士の助手として働きました。夜は学校に通っていました。学校卒業後に計量器メーカーに入社しました。ここでは35年間働きました。62歳で退職しまして、また築地市場へ計量士として戻って参りました。以後、4年と2カ月になります。計量士になって38年になります。

日東富士製粉で計量士の業務をしている

高徳芳忠 日東富士製粉でこの10年ほど計量士をしています。それ以前は、川崎製鉄(今はJFEスチール)でずっと計量管理にたずさわってきました。この鉄屋の計量管理の時代が長いのです。私は学校は計測工学科を出ています。それがシステム工学科に変わり、さらに情報知能工学科に変わっています。会社の組織も私が入社した頃は「熱管理課計量掛」でしたが、その後「計測課」に変更、今は「制御技術」と名称が変わってきています。これは世の流行というもの。しかし、やってきた仕事は同じです。

メトラー・トレドのコンベンションセンターのセンター長桑山重光です

桑山重光 (株)メトラー・トレドの桑山です。当社のコンベンションセンターのセンター長です(座談会出席当時)。以前は計量研究所(現(独)産業技術総合研究所)にいました。計量研究所で31年勤めました。私は14年間単身赴任生活しています。

高分子材料試験機メーカーの品質保証室で計量器の精度保持の仕事をしている

溝口義浩 (株)東洋精機製作所の溝口です。高分子材料試験機メーカーの品質保証室で計量器の精度保持の仕事をしています。

 当社は引張試験機をはじめ、プラスチックス試験機、紙・パルプ試験機、繊維・染色試験機、塗料・印刷インキ、ゴム試験機などをつくっています。計量器の管理では、長さ関係、質量関係、電気関係、温度関係など幅広く勉強をしています。東京計量士会の理事になったばかりで、計量士の資質向上に関する委員会にも関わっています。

産総研の佐藤克哉です(旧計量管理協会に約10年ほどいて、その後日本計量振興協会で専務理事をいたしました)

佐藤克哉 産総研の佐藤です。旧(社)計量管理協会に約10年ほどいました。その後、(社)日本計量振興協会で専務理事をいたしました。私は計量士でもありませんし、計量に関する技術もありませんが、計量団体にいた経験からお話できたらと思います。

現在は日本計量史学会会長の蓑輪善蔵です

蓑輪善蔵 計量研究所、計量教習所、日本計量士会と経てきています。現在は日本計量史学会の会長です。

日本計量新報社の編集部長高松宏之です

高松宏之 (株)日本計量新報社の編集部長です。計量行政との関係などでお話ができたらと考えております。

東京都計量協会専務理事の森川正彦です

森川正彦 (社)東京都計量協会の専務理事をしています。当協会は東京都の指定定期検査機関です。計量士さんと連携して仕事をしていかなくてはならない立場にあります。

 都計協に来る前は、計量計測機器のメーカーである(株)エー・アンド・デイの販売促進部次長でした。計量器の開発・製造・販売の全般に関わっていました。

 現行の計量法ができるときの、検定検査専門部会のワーキンググループ員でした。現在の計量法の見直しに関しても技術的な観点から関わっています。特定計量器検定検査規則のJIS化にともなってJISができていますが、このJISの国際整合化をめざした改定のためのJIS原案作成委員会で、はかり分野の主査をやっています。

計量法上の計量管理のしくみと計量士制度がどんな形でできてきたか

計量士制度はつくっただけで権限を増やすことをしてこなかった、適正計量管理事業場もメリットは多くないので矛盾も深まってきた

横田俊英 計量法上の計量管理のしくみと計量士制度がどんな形でできてきたかということに関して、蓑輪さんに説明してもらいたいと思います。

蓑輪善蔵 昭和26年に計量法ができた時、計量士と適正計量管理事業所(適管)、当時は計量器使用事業場の制度が導入されました。

度量衡法時代の度量衡自治取締員制度が計量士と適管制度の前身

 実は法律上の制度ができる前から今の計量士的な仕事をしていた人達がいました。大正7年頃に度量衡法施行手続を改正し、度量衡自治取締員を置き度量衡器の自治管理の優良な公務所、会社、工場については度量衡法上の第1種、第2種の取締を省略できることになりました。度量衡法時代の話です。中央度量衡検定所からも多くの人が度量衡自治取締員(のち、度量衡管理員)になっています。その後、度量衡自治取締員も資格が必要ということになり、昭和9年になりますと、度量衡講習を修了し実務経験2年以上か、判任官以上の公務員で度量衡の実務に3年以上従事した者となりました。

計量法ができるとき自主的に計量管理を実施している事業所を計量器使用適正事業所にする制度がつくられた

 計量法ができるとき自主的に計量管理を実施している会社、工場を計量器使用適正事業所にする制度がつくられました。この制度は、所謂(いわゆる)推奨規定に近い別枠的な考えが入っています。このとき計量管理を定義しています。

メリット創出など十分でないため矛盾が拡大した

 しかし、これらの制度にはいろいろ問題がありました。計量士という制度が出来ましたが、つくっただけで、権限を増やすようなことはあまりありませんでしたし、適正計量管理事業場にしてもそのメリットは多くなりませんでした。だんだん矛盾も深まってきたわけです。これらの制度が広く知られていないと言う問題があります。

計量士制度の変遷についての蓑輪さんの文書を社内教育の教材として使用

桑山重光 計量士制度に関してですが、私は計量士制度の変遷について蓑輪さんが書かれた文書を持っています。社内教育の教材として使っています。それを紹介させていただきたいと思います(別項)。

計量管理をきちんとやるための指標として適正計量管理事業所の制度を位置づけている製造業

特定計量器の定期検査を受けた方がコストがかからないからと適管の指定返上をした大手スーパー

横田俊英 佐藤さん、いかがですか。

佐藤克哉 私がいました(社)計量管理協会(計管協)は、適正計量管理事業所に一番近い団体でした。私が計管協に来て一番感じたことは、適正計量管理事業所は定期検査の免除という以外のメリットが何もないな、ということでした。当時、大手スーパーの一つが適管をやめてしまうということが起きました。彼らは「(適管は)まったくメリットがない」と言うのです。定期検査の免除だけがメリットということなら特定計量器の定期検査を受けた方がコストがかからない、というわけです。

 トヨタの計量士さんと話をしたことがあるのですが、これとは逆にトヨタでは、社内で計量管理のしくみができたら適正計量管理事業所の申請をしてもよいというルールがあるというのです。ここでは定期検査の免除というだけではなく、一定の計量管理をきちんとやるための指標として適正計量管理事業所の制度を位置づけています。ISO9001認証取得はやめたけれども適正計量管理事業所は維持しています。

築地市場の自治会(適管事業所指定)は6カ月に1回はかりを検査、年2回巡回定期検査と随時検査している

安斎正一 40年前に築地市場は適正計量管理事業所になりました。先ほどお話しましたように私は45年前に学生アルバイトとして築地市場に勤めていました。築地市場の自治会は、築地市場にあるはかりを自主管理をしようということで助手を募集していたのです。私より半年遅れて計量士の方が来ました。

安斎正一 築地市場ははかりの使用環境としては非常に劣悪です。魚を扱う、水がある、塩水もある、kg単位ではかりますから重量物が載る、という使用環境ですので、はかりは長持ちしません。

 そこで最も使用期間が短いものは約6カ月ではかりを入れ替えるようなことになります。現在、6カ月に1回、はかりを検査します。年2回巡回定期検査と随時検査です。築地市場が適正計量管理事業所になったのは昭和42年です。当時の名称は計量器使用事業場でした。

松下電器もトヨタと適正計量管理事業所の位置づけはほぼ同じ

蓑輪善蔵 松下電器もトヨタと同じように適正計量管理事業所を位置づけています。

佐藤克哉 そうですね。

通産省が(社)計量管理協会をつくって製造業の有名企業を全部集めた

林 紘治 当時、計量器使用事業は1種、2種に分かれていました。1種はどちらかというと製造業、流通は2種でした。そして、1種は大臣指定、2種は知事指定でした。当時、どうしてこういうふうに分けたのでしょうか。

蓑輪善蔵 よくわかりませんが、製造業での計量管理の内容と流通業での計量管理の内容には違いがある、ということではないかと思います。通産省が(社)計量管理協会をつくった時に、製造事業者だけ集めました。当時の有名企業を全部集めたようなところがありました。通産省主導ですから製造業の方に力が入っていたと思うのです。

国が計量管理協会をつくったのはオートメーションを普及したかったから(当時は適管=製造業であり流通業のことは考えになかった)

佐藤克哉 そのとおりだと思います。

 計量管理協会をつくった一番の目的は、国はオートメーションを普及したかったからです。熱管理と品質管理を目標に動きました。当時は適管=製造業という頭があったと思います。その分、流通業をどうするかという問題が残ったわけですが。

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