旺盛に計量管理を実施している適正計量管理事業所 |
INDEX | BACK | ||
【7】 | ||
適正計量管理事業所をアピールするには |
||
生産工場では適正計量管理事業所よりもISO9001認証取得に意識がいくようになっている(ISO9001を取得するために計量機器の管理業務を立ち上げている)横田俊英 適正計量管理事業所は百貨店がよくやっていることはわかりましたが、製造業ではどうですか。 佐藤克哉 製造業の場合は、製品の品質に直結するので、必要があってやっています。したがってよくやっていると思います。 林 紘治 生産工場では、適正計量管理事業所よりもISO9001認証取得というのが強くなってきているのではないですか。 溝口義浩 当社でもそうです。ISO9001を取得するために計量機器の管理業務が立ち上がりました。 ISOをやれば計量管理もかなりのレベルまで持っていくことができる森川正彦 経営とすればどう資源配分するかという問題です。ISOをやれば計量管理もかなりのレベルまで持っていくことができます。適正計量管理事業所制度という一国のみの独自制度に埋没してもISO認証はとれません。 溝口義浩 現在の2000年版のISO認証では測定器の管理はあまり重視されなくなりましたが、私の部署では以前と変わらず計量器の管理業務をメインの一つでおこなっております。 ISO1012が表に出てきたら適正計量管理事業所制度に影響がでるかも知れない佐藤克哉 今のISO認証と計量は関係ないんですよ。ですから適正計量管理事業所を取得しているところはそのまま保持しています。しかし、ISO1012が表に出てきたら影響があるかもしれません。 ISO9001認証の規格では計量器の管理が重視されていないという問題がある横田俊英 なぜISO認証と計量は関係ないのですか。 佐藤克哉 ISO9001認証の規格のなかで、計量器の管理が重視されていないのです。 林 紘治 消費者の感覚でいうとISO認証というとなんかすごいものだ、適正計量管理事業所というとそれ何、という感じですね。 横尾明幸(司会) ISO認証の審査員のなかに計量にたけている方が少ないのです。したがって審査の際に計量が軽視される部分もあります。 小学校などもISO9001認証取得の対象とするようになったので計量管理の規格が曖昧にしてしまった佐藤克哉 ISO認証の方向性が変わったのです。もともとは製造業が主な対象だったのですが、現在は官庁や大学にまで対象が広がっています。そういうところに合う規格をつくろうとすると計量などはどこかへ飛んでしまいます。 横田俊英 東京の千代田区の小学校などもISO9001認証取得という看板を出しています。何をどう管理しているのかはわかりませんが。 横尾明幸(司会) 名前さえ取れば、ペーパーさえあればよいという風潮も見られます。 反動でISO10012がでてきて計量器の管理をここでしようということになってきた佐藤克哉 そういう意味でISO認証が実務から離れてしまったという反省もあります。そこでISO10012が出てきて計量器の管理をそこで規制しようということが出てきています。 ISO9001では計量器の仕様はガイドを見よと書いてり、そのガイドがISO10012(中国ではISO10012の認証を取れば計量管理ができていると認める動き)高松宏之 ISO10012とはなんでしょうか。もう少し詳しく説明してください。 佐藤克哉 ISO9001で計量器の仕様の部分がありますが、そこには何も書いてなくて、ガイドを見よと書いてあります。そのガイドがISO10012なのです。 ところがこのISO10012が少しずつ独立しはじめていて、中国ではISO10012の認証を取れば、計量管理がきちんとできていると認めてよいという動きがあります。ISO10012というもともとはガイドでしかないものが一人歩きしそうなわけです。そういう意味で言ったのです。 |
||
計量行政に関わる技術機関が果たすべき役割(計量研は計量法の施行のためにできたような機関である)横田俊英 計量管理を大いに普及宣伝する必要があります。誰がそれを担うかです。産総研には期待できませんね。 佐藤克哉 産総研は計量標準の整備が主になっています。計量のレベルが一般に上がっているので、後はお任せという感じですね。 横田俊英 どこへ任せるのですか。はっきりしませんね。 横尾明幸(司会) 従来は法定計量の問題も含めて計量研究所は計量行政室に班長さんを派遣したりしていました。そういう技術的な交流をやっていました。ですから、いざ法律改正となると、どこをどう変えるかという基準まで含めて都道府県も含めて論議もしました。それが今はなくなりましたね。 蓑輪善蔵 私が計量研の4部長をやっていた頃までは、人を積極的に出そうという感じでした。計量研そのものが計量法の施行のためにできたようなものですから。 計量法は技術法令だから技術がわからないので法令はつくれない桑山重光 私が計量研にいたころは規則の原案はわれわれがつくっていました。 蓑輪善蔵 計量法は技術法令ですから技術がわからないで法令はつくれません。 計量管理の仕事は延々と続くので計量管理の将来に心配はいらない高徳芳忠 私が強調したいのは、過去、現在と呼ばれ方は変われども、計量管理の仕事は延々と続いているということです。計量の技術が進歩し、計測器も安価で高性能なものが供給されるようになると、問題として残っているのが制御技術です。しかし呼び方は変われども内容は一緒です。計量管理という呼び方はしなくても、いかに歩留まりをよくして品質を上げるか、生産性を上げるかということを、今日も私の後輩たちは一所懸命にやっています。適正計量管理事業所にもそのまま留まっています。「計量管理強調月間」なども実施しています。中心には計量があります。したがって私は計量管理の将来にあまり心配はしていません。 |
||
JFEでは計量管理を推進する部門の名称は制御技術部であり部長や課長に計量士がいる横尾明幸(司会) 私は(社)日本計量振興協会の補助事業で2年間にわたって計量士の職務と役割に関して調査してきました。そのなかで計量管理の推進における計量士の役割がだんだん少なくなってきています。計量士じゃない方が増えてきています。適正計量管理事業所は生産工場のなかには計量士は必ずいますが。 計量士のなかには、計量士でなくても計量管理はできると言う人もいます。そうすると計量士がなぜ必要なのかという議論が必要になってきます。 横田俊英 JFEでは計量管理を推進する部門の名称は何ですか。 高徳芳忠 制御技術部です。制御技術部の部長や課長に計量士もいます。 流通関係でも計量管理部門の名称は変わりつつあり伊勢丹では1933年に権度係が母体になって計量管理が始まり、戦後、商品試験室という組織になり、2001年に品質管理室になった横尾明幸(司会) 流通関係でも計量管理部門の名称は変わってきています。 恵田 豊 私どもの伊勢丹でいえば、1933年に権度係が母体になって計量管理が始まりました。戦後、商品試験室という組織になりまして、2001年に品質管理室になりました。 計量士はISO/IEC17025の審査員とかISO9001の審査員なったらいい桑山重光 計量士の職域の拡大の関係で言いますと、私は計量士さんはできたらISO/IEC17025の審査員とかISO9001の審査員とかになって欲しいですねえ。従来のままでよいという計量士さんもいらっしゃいますから、その辺は難しい問題ですが。 |
||
計量士の地位の向上ということもあるが職域拡大が必要だ(計量士は自分の技術能力を常に高めていくようにしたい)横尾明幸(司会) ただそれ以外のこともめざす計量士さんがいれば、そういうことを教育する場をつくっていくことが必要です。 日計振での議論が始まるときに私は、こういう議論は今まで散々してきたのではないか、一歩行動に出るべき時だということを言いました。今年度、試行ですがフォローアップ的な計量士の研修をやることになりました。これは計量士の更新制の導入とは直接関係なくやろうということです。 具体的には東京と大阪で来年の1月くらいに研修会を実施します。修了者には日計振の内部資格ということで認定証を出したらどうかなと考えています。これだけのことをやって計量士は自分たちの安全・安心・信頼性を保っているのだよ、ということを示すわけです。 計量法の改正が先に伸びたことは、更新制の問題も含めてわれわれに時間が与えられたのだと考えています。われわれ自身がこれだけのことをやっているのだから、安心して俺たちに任せてくれということにしていけばよいと思います。 計量士の地位の向上ということもありますが、職域を拡大することは必要だと思います。 桑山重光 計量士は自分の技術能力を常に高めていく必要があります。 制度面からの計量士の職域の拡大を図るという方策を検討することも必要だ横田俊英 計量士の資格としての職域の拡大なのか、技術者としてのその人の職域の拡大なのか。前者だとすると計量法上のしくみがそこについて回らなければなりません。 横尾明幸(司会) 計量士を置くことが必須の制度をつくることは検討されたようですが、具体的なものはなかなか出てきません。 横田俊英 実際上は、計量検定所が検定実務を計量士に委託するところが出てきました。これは法的な意味でも職域の拡大です。気象庁も似たようなことをやっています。 計量技術能力によって計量士の職域を拡大するという姿勢が大事だ横尾明幸(司会) そういうときにそれを受託できる能力をわれわれで培っている必要があります。ただ、現在のところは、それは職域の拡大になっているけれど、しかし極めて不安定なものです。たとえば、法律が変わって規制がなくなってしまえば、その仕事もなくなってしまいます。 私はあまり法律に頼ってはいけないと思います。計量士は計量器の校正もできる計量に関する専門家です。品質管理などの分野でも計測器を使わないわけにいきませんから、その場合はその扱いにたけた計量の専門家がやるべきだろう、ということで職域を拡大できないかなというのが私の考え方です。 計量行政機関の職域への計量士の踏み込みが進んでいる現状をどのように理解するか(計量士の活用について都道府県計量行政協議会などできちんとした申し合わせをすべきだ)蓑輪善蔵 検定実務の委託の場合でも、権限はきちんと役所にあることをはっきりさせておくこと、また役所のほうもそこは握って離さないようにしないと、これは危険ですよ。 横田俊英 こういう形態は地方の計量行政で今後増えていくと思います。 高松宏之 しかし、地方の計量行政が今後本当にそういう形をとっていくなら、私は法律を改正してきちん制度として位置づけるべきだと思います。蓑輪さんの危惧はもっともだと思います。今の形はたとえは悪いですが、解釈改憲のようなものです。 佐藤克哉 都道府県計量行政協議会などで、きちんとした申し合わせなどはできないですかねえ。きちんとしたマニュアルをつくるとか。 横尾明幸(司会) アンケートなどをとると、任せたいという自治体が多いですね。 蓑輪善蔵 知事会議ぐらいでやらないと、ダメじゃないですか。 指定製造事業者制度では計量士の資格は必要ではないのか横田俊英 指定製造事業者制度では計量士の資格は必要ではないのですね。 森川正彦 必要ありません。指定製造事業者制度では計量士の職域拡大は難しいでしょう。 横尾明幸(司会) 計量士は計量の専門家だからその計量士を使わなければできない仕組みをつくっていくことです。 計量士の職域を拡大するにはまずは計量法のなかでやれる範囲のことをやらさなくてはならない横田俊英 無理があっても言わなければ、要望しなければ職域の拡大は実現しないですよ。 蓑輪善蔵 計量士を認知させたい、計量士の職域を拡大しようという場合に、まずは計量法のなかでやれる範囲のことをやらさなくてはいけないのではないですか。そこから始まるのではないかと私は思います。それから外に向かって拡大することが必要になりますね。 制度とあわせた計量士の職域拡大は計量士会という組織が行うべきこと横尾明幸(司会) それは計量士会という組織がやらなくてはと思います。弁護士会のような形でですね。そのためには自分たち自身できちんとした倫理規定などもつくってやっていく必要があります。今それを私たちはやるべきだと思います。 高徳芳忠 濃度計などの環境計測やエネルギーに関する計量は所管が異なるためかもしれませんが、同じ内容の報告などをバラバラでなく統一できないのかと思います。適正計量管理事業所なら報告を一カ所に出せばそれですべて通用するなら、それも適正計量管理事業所制度のメリットになると思うのですが。 型式承認などを計量士にやらせることはできないか(ドイツの16州の計量検定所はすべてISO/IEC17025を取得している)桑山重光 私は計量研究所で基準器検査と型式承認をおこなっていました。しかし現在は計量法上の計量士の業務ではなく、計量管理、品質管理を中心とした活動がメインです。 横田俊英 型式承認なども計量士にやらせることはできませんか。 桑山重光 ドイツの16州の計量検定所はすべてISO/IEC17025を取得しています。しかし、日本の計量検定所には一部を除いてその技術能力はありません。 |
||
ドイツの計量制度はしっかりしていて揺るぎがない(ドイツは教育もすごくしっかりしていてる)横田俊英 ドイツの計量制度はしっかりしていて揺るぎようがない状態ですね。 横尾明幸(司会) 教育もしっかりしています。日本にも計量研修センターがありますが、ドイツの教育はもっとすごいです。 ドイツは法定計量への位置づけと取り組みがしっかりしている林 紘治 日本は規制緩和といわれたとたん、ゆらゆらときましたから。 桑山重光 PTB(ドイツ物理工学研究所)と日本のNMIJも違いますから。ドイツは法定計量への位置づけと取り組みがしっかりしています。 |
||
日本はどこの行政も計量に関する組織も人も予算も削れ削れという大合唱ばかり(従来は機関委任事務として担保されていたものが全部削られてしまった)林 紘治 日本の場合、どこの行政も金儲けしろとせっつかれました。計量はお金が儲かりません。そうすると、計量に関する組織も人も予算も、削れ削れという大合唱ばかりになってしまいます。従来は機関委任事務として担保されていたものが全部削られました。 横田俊英 深刻ですね。それがそのままの状態でさらに進行していますね。 森川正彦 この傾向はもはや止めようがないでしょう。計量行政に関しては。 行政組織を削ってしまうと適正計量に問題が発生してからでは対策は間に合わない林 紘治 何か大きな社会的問題が起こらない限りはね。問題が起こって初めて。行政は何やっていたんだということになるのです。そして、いざ第3者機関が必要だという話になっても、そこにはもはや専門家はいないのです。 |
||
日本国の計量制度の設計が怪しくなっている(計量はよくて当たり前、空気と同じように捉えられている)森川正彦 そうです。先ほどの検定業務の実務を外部へ委託するという問題も、それを管理する側が、技術的能力を備えた管理者をはたして置けるのかという問題にもなるのです。 横尾明幸(司会) 先に行政の部署がなくなってしまいます。東京の場合も、以前は指定定期検査機関の中型はかり、大型はかりの担当係長がいました。しかし今度は係長のポストがなくなりました。担当者は付いていますが。 横田俊英 国の計量制度の設計が悪いのです。 横尾明幸(司会) 計量行政に関するほとんどの業務を地方分権ということで自治事務にしてしまったのが原因です。機関委任事務と違って「やることができる」ですから崩れていくのは当然のことです。先ほども出ましたが、今は何か問題が起きれば対処すればよいということになってきています。東京都の消費者行政自体もそうなってきています。この方がお金はかかりません。しかし、問題が起きないようにするのが行政であろうと私は思っていますが。 横田俊英 地方自治体自体が自らの行政を投げ捨てても何とも思わないような状態になっています。 林 紘治 いつでも言われますが、計量というものはよくて当たり前です。空気と同じように捉えられています。それがずーっと続いてきています。 |
||
はかりの定期検査の不合格率は4〜5%の範囲に収まっているというのはおかしい横尾明幸(司会) 何とか計量というものに関心を持ってもらおうということで私もやってきました。立入検査の結果などもいかにマスコミ等に関心を持ってもらって取り上げてもらえるかということに腐心しました。 蓑輪善蔵 これまで、取り締まりの結果あるいは定期検査の結果が非常に良かったですね。各都道府県から上がってくるデータはほぼ同じで、不合格率は4〜5%の範囲に収まっているのです。こんなことはあり得ないことです。 悪い結果が出るとわかっている商品は立入検査をやらない全国一斉の量目の立入検査(計量行政が壊れるということは消費者の立場から見れば不正計量の危険が高まっているということだ)横尾明幸(司会) 全国一斉の量目の立入検査なども、悪い結果が出るとわかっている商品は立入検査をやらないのです。東京は野菜も含めてすべてのものを出していますが。 佐藤克哉 逆に悪いデータばかり出せばよいじゃないですか。そうすれば、計量行政が必要だということになる。 横田俊英 計量行政が壊れるということは、消費者の立場から見れば不正計量の危険が高まっているということです。ドイツにならって計量制度の保全をしっかりやってもらいたい。 林 紘治 適正計量管理事業所でも検査結果のデータの修正の危険がありえます。出たデータはフィードバックされて初めて役に立つわけですが、その前提が崩れたのでは何にもなりません。データを取る意味がなくなります。 佐藤克哉 不正計量の危険が高まっていることの証拠を示すのはなかなか難しい。 はかりの定期検査の脱検も50%くらいあるということで取引をすれば不正計量が蔓延している横田俊英 いや、たとえば定期検査の脱検も50%くらいあります。そういうはかりで取引をすれば不正計量が蔓延してきます。これで充分です。定期検査の数のデータとメーカーが出荷している検定付はかりの数と比較すれば、販売店などに在庫されている数の調整は必要だとしても脱検の傾向はかなり正確につかめます。 横尾明幸(司会) 若い頃に、たとえばガスメーターについて同じ合格ではあっても公差内のどのところでの合格なのかという集計をしたことがあります。つまり、どっちに有利になるメーターをつくっているかということなのです。そうすると東京の場合は変な偏りがなくなってきました。ユーティリティメーターにはみんなこのような問題があります。 桑山重光 ほかの特定計量器でも同じような問題がありました。 |
||
計量士は計量品質ライセンスである安斎正一 私は15年から10年前には東南アジアへ出張しました。現地のメーカーが日本の検定に受かる製品をつくるということで、私が指導し、受入検査もしました。そのときに私は「うちの会社に来てくれないか」と言われました。現地の会社は、日本に輸出できる製品をつくりたいのですね。日本の品質は世界の品質として世界数十カ国へ輸出可能を見込んで、日本の計量品質ライセンス「計量士」に魅力を持つのです。こういう仕事も計量士の新しい仕事としておもしろいと思います。 蓑輪善蔵 計量士の専門化ですが、個人を取ってみれば扱っている計量器がこれが専門だというものがありますね。体積であるとか温度であるとか、いろいろあると思うんですよ。いわばその器種のスペシャリストですね。そういうことを何か活かせませんか。 横尾明幸(司会) そういうことに対応できるように、というのはこれまでの検討の議論のなかでも出ています。 計量士がグループで計量管理需要に対応したらいい蓑輪善蔵 私は昔からグループをつくれと言っています。いろいろな専門家が集まったグループをつくったらどうですかということです。それを東京計量士会など地方の計量士会でやってもらえればよいなと思っています。 林 紘治 群馬県で医者不足を解消するために県に登録して、不足する地域へ派遣しようというニュースがありました。計量士も全然いない県や足りない県がありますから、近県の計量士があらかじめ登録して置いて、派遣するというようなこともできるのかなと思います。 計量士は個々に得意分野を持つようにしたらいい溝口義浩 昨日、産総研NMIJの不確かさクラブの会合に出席してきました。このクラブは登録すれば誰でも参加できます。こんな感じで東京計量士会もやろうと思えばやれないことはないと思います。私は社内で温度の校正は一番時間をかけておこなっております。何でもいいから各人が得意分野を持ち寄って勉強会をおこなえばいいと思います。 桑山重光 たとえば水道メーターが得意であれば体積の専門家ですね。体積が専門であれば、質量、温度、気圧、湿度、長さ、なども関連してきます。とすればこれだけの量のことを知ってないと計量士活動はできないと思います。 質量測定でも技術と知識が備わっていないととんでもないことをしてしまう蓑輪善蔵 たとえば質量を計るといっても、その周辺の技術と知識がなかったら計ることができません。それがわかってないような気がします。その知識がないととんでもない馬鹿なことをやってしまいます。 桑山重光 そうです。計量士は技術者です。はかりに分銅を載せて目盛りを読むだけでしたら、その方は技能者です。 最近、原子力発電所では、配管の腐食の管理にpH計が使用されているそうです。pH計で水質測定をおこなうとのことです。産業分野でpHは非常に重要になってきています。 金塊をロンドンで計りそれを日本に運んで計ったら目方が違うのは重力加速度の違いのため安斎正一 重力加速度の問題で思い出しました。銀行家の友人から質問を受けたことがあります。金塊をロンドンで計り、それを日本に運んで計ったら目方が違っていたというのです。私がそれは違うでしょう。あなた、金塊を計った電子天びんも一緒に持ってきたでしょうと問うと、持ってきたと言うのです。それは重力加速度が違うからだと教えたら、何十年来の疑問がこれで解けたと言われました。そしてあなたは素晴らしい仕事をしていると称賛されたのです。 横尾明幸(司会) 東京都の受託検査でも、ダイヤモンドの原石と同じようなことがありました。この件は受託検査は引き受けませんでしたが。 JCSSの登録取得にも計量士の必置が必要だというようにしたらどうか(いろいろな可能性を考えてみることだ)横田俊英 JCSSの登録取得にも計量士の必置が必要だというようにしたらどうですか。たとえ荒唐無稽だと思われることでもこのように考えていけば、100のうち2つぐらいは実現するかもしれません。いろいろな可能性を考えてみることが必要だと思います。 横尾明幸(司会) いま東京都も試験研究機関の独立法人化を進めています。JCSSのような部門も、検定所から離してそこへ組み込もうという話もあります。 桑山重光 今、岐阜県計量検定所がJCSS登録を取得しようとしています。 横尾明幸(司会) 香川県もそうじゃないですか。 桑山重光 香川県には幾つかのはかりメーカーがあって、そのメーカーが分銅のJCSS登録を取得しようとすることは動きとして当然のごとくでてきます。 県によっては校正ラボになろうというところがでています。問題は人事異動で2年から3年で人が入れ替わってしまうことです。 計量行政機関では技術能力の継承が危惧されるようになった横尾明幸(司会) そうなると技術の継承が難しいのです。東京都でこないだあったことなのですが、200gの分銅が磁気を帯びていたのがわからなかったのです。問題は材質にあったのです。しかし、分銅は磁気を帯びているはずはないという観念がありますから。 蓑輪善蔵 そうですね。結局は人ですからね。 目量0・1mgの電子天びんを3級基準分銅で検査するという技術的トンチンカンが起きる桑山重光 ある計量士さんが目量0・1mgの電子天びんを、3級基準分銅で検査したことがありました。ちょっと信じられませんが、知識が不足するとこういうことがおこなわれることがあるのです。 JCSSの技能試験にも疑問があります。レベルの異なる校正事業者に同じ分銅を回して、それで測定結果を比較するということは技術能力の確認にならないと思います。登録取得レベルが下層の校正事業者の測定結果が悪いのは当たり前のことです。 佐藤克哉 計量法とISOの系統はまったく異なります。ところがJCSSは計量法のなかに規定されていながら、ISOに属する系統です。ですから法定計量とは本来合わないものです。 JCSSと基準器制度とは相乗りはならぬという議論とその後の経緯横尾明幸(司会) 平成4年の計量法の改正の時に、JCSSと基準器制度とは相乗りさせないということで私は論議してきました。 JCSS制度があまり普及しなかったこともあり、基準器制度をなくそうという議論が出てきたりもしました。 佐藤克哉 別の制度として2本立てでいくべきものだったですね。 横尾明幸(司会) そうです。 JCSS登録制度は計量法のなかに入れてはいけなかった佐藤克哉 もっとはっきり言えば、JCSS登録制度は計量法のなかに入れてはいけなかったと思います。 横田俊英 JCSS制度は計量法の枠のなかになじみにくいことは確かです。しかし、組み込んで推進しなければうまくいかなかったから入れたのだと思います。 佐藤克哉 そのとおりだと思います。JABあたりがやってもおかしくなかったのですが、うまくいかないので国が推進せざるを得なかったということでしょう。 桑山重光 今度の計量制度の見直しの第3WGでの検討で、民間の登録機関ということが入りましたね。 JCSSではない一般校正に関するビジネスの方が規模が大きい(一般校正のシェアはJCSS校正の何十倍だ)横田俊英 JCSS登録事業者は、JCSSそのものでは稼げていませんが、その権威を活用しての一般校正ビジネスの金額はかなり大きいですよ。 桑山重光 一般校正のシェアはJCSS校正の何十倍ですね。 横尾明幸(司会) JCSS校正証明書発行料金はかなり高いですから。 佐藤克哉 おまえのところはJCSS登録事業者なのだから校正の腕はいいのだろう。だったら普通の校正証明書をくれ、とこうなるわけです。 横田俊英 JCSS登録は看板料というわけです。 溝口義浩 逆の場合もあります。JCSSだけでなくMRAマーク付きのものが欲しいという場合もあります。中にはMRA付証明書ですと金額がかなりアップする計量器もあります。 |
||
計量士が証明すれば通用しますということでの計量士業務と職域の拡大蓑輪善蔵 計量士の職域拡大に関することですが、昔、鑑定というものがありました。量目の証明というのもありました。これは何キログラムありますということを計量士が証明すれば通用しますということです。こういうことができたらよいなという話がありました。そういう話は出ませんか。 環境計量士が証明するようなことが一般計量士ではダメというのは変だという議論が(粘り強く主張する他はない、何でも言ってみることだ)横尾明幸(司会) 環境計量士が証明するようなことが、一般計量士では何でダメなのかな、という議論は出ました。 蓑輪善蔵 もう少し、計量士に権威があるとよいなと思います。 横田俊英 粘り強く主張する他はないですね。何でも言ってみることです。 特定計量器の範囲は狭くなっています。計測器の数と種類は増えています。計測需要も増えています。ということは計測は求められているのです。それをふまえて考える必要があります。 都道府県はそこに住んでいる住民を守らなければならない横尾明幸(司会) 都道府県は、そこに住んでいる住民を守らなければなりません。そこを譲ってはいけないと思います。 また自分を振り返ってみると仕事ができたなというときは、理解してくれる上司がいました。それがないと、がんばっても報われません。 横田俊英 計量士の間で互いに尊敬し合う関係になればよいですね。 横尾明幸(司会) そういう意味では、先ほど出たグループをつくるというのもよいですね。 計量士の研修やキャリアアップ桑山重光 グループごとの研修ということも考えてもよいのでは。 蓑輪善蔵 研修ですが、これはたくさん人を集めるような研修を考えてはダメです。人数が少なくてもよいような研修をしないと、計量士のレベルは上がっていきません。大勢の人数を集めたり、ペイするようにという考えを転換して、広く薄くではなく、狭く濃い研修にしていかなければいけないと思います。 横尾明幸(司会) 本当は各県ごとにそのなかでやれれば一番よいのです。そういうところに講師がいなければ本部が派遣するなどして。そういうことをやらないとダメです。全国に研究グループがあって、そういう人たちが発表する場が全国計量士大会だというふうにするのがよいかもしれません。 溝口義浩 東京計量士会でも、研修会に出る人は決まっています。出ない人にどう出席してもらうか議論しなければなりませんし、出てもらえるような研修を考えていかなければなりません。 横田俊英 でない人を引っ張り出すよりも、新しく会員を増やしてその人たちに出てもらう方が早いのでは。 人の縁がつながればそのなかから仕事が生まれてくる横尾明幸(司会) 新しい人ということですが、今度計量士の資格を取ったのだが、仕事の相談に乗ってもらえないかなどの相談が、開設したホームページなどを通じてきています。そういう人たちを組織していかなければなりません。 横田俊英 人の縁がつながれば、そのなかから仕事が生まれてくるということもありますから。 高徳芳忠 そういうトレーニングのグループを設けた方がよいですね。 安斎正一 私は東京計量士会にも海外在住組がいてもよいと思うんですが。外国に行くとそういう人たちは計量士会をやめてしまうようです。つながりが切れてしまうことは残念です。 横尾明幸(司会) そうですね。つながりを切らさずに相互交流していけるようにしていかなければなりませんね。 まだまだいい足りない部分もあると思いますが、それについてはまた違った形で取り上げていきたいと思います。本日はありがとうございました。 (おわり)
|
||
INDEX | BACK |