日本計量新報 2011年10月30日 (2891号)2面掲載
グループ全体でシナジー効果を
−−リーマンショック以降、経営に変化はありましたか。
基本に戻り当たり前のこと当たり前に
リーマンショックに端を発した世界同時不況の影響を受け、2009(平成21)年度は当社業績もかつてない大きなダメージを受けました。
しかし、中期計画を立てていましたので数値目標にこだわらず、この指針は変更しないということで、基本的にはそのとおりにやってきました。そんなにうまい手はないですから、基本的なことを見直して、もう一度当たり前にやり直してみたわけです。
「Revive 2010」進め、業績回復
2010(平成22)年度は復活・再生の年と位置付けて、「Revive 2010」の掛け声のもと、構造改革を進めてきました。その結果、業績は少しずつ回復してきました。
昨年夏ごろから回復の兆しを見せはじめ、下期にはリーマンショック以前の90%近くまで回復し、第75期の連結売上高は163億7300万円、経常利益7億1700万円、当期純利益3億4300万円となりました。
東日本大震災の支援は、事業の推進で
ただし、決算直前に東日本大震災が起こってしまいましたので、これの影響も踏まえて、今後はさらなる事業の見直しを進めています。
チノーは、関連会社を含めますと、東北各地に営業所・代理店がありますし、山形、群馬、埼玉などに工場もありますので、影響が心配されました。しかし、結果的には、まことに幸いなことに大きなダメージはありませんでしたし、従業員も無事でした。
東日本大震災に関しては、何かわれわれにできることはないのかということで、義援金を送ったり、従業員がボランティア活動もいたしました。しかし、長期的には本当の支援は、自分たちの本業を徹底的にやることです。幸い、わたしどもの会社は、計測、しかも温度に関する事業を展開しています。温度というのは工業量の60%以上を占めますし、産業がその基本的なところでは一番必要とするものです。
復興は、社会インフラを造り直すこと
東日本大震災からの復興ということは、もう一度社会インフラを造り直していくということです。そうすると、セメント、ガラス、鉄鋼などが、急いで必要とされてきます。これらの産業には、チノーの高温計測技術が使われています。したがって、われわれの本業をきちんとやることが、復興のお手伝いをすることになるわけです。
点検、サービスをきちんとやる
当面は被害を受けたお客さまも大変ですから、まずはそのお手伝いをすることを最優先としました。したがって、計測器の点検やサービス、機器の更新への相談などを積極的にやっていきます。
長期・中期の計画が大事
会社も、被害を受けたときに、どうリカバリーしていくか、どう行動していくかということが大事です。
また非常時に、当社の中期経営計画もそうだったのですが、きちんとした方向付けが決まっているということは、会社が一つになる指針があるので、経営的にまよわず行動できるということです。ですから私は、企業にとって、長期・中期の計画は、非常に大事であると思っています。
「グループ全体最適」を追求
当社にはグループ会社が、海外に5社、国内に7社あります。これらがバラバラに動いていたのでは大きな力になりません。そこで、「グループ全体最適」というのを追求してきました。
グループ経営にはいろいろな形があります。それぞれが独自に動いていて、結果としてグループを結成しているというのもありますし、当社のように、グループ内の企業がそれぞれ本業をどうサポートするのか、という観点で集まっているものもあります。
チノーの場合、グループの目的は一つの方向を向いていますから、その目標をそれぞれの企業が補完できる形が一番よいわけです。
現在は、企業がグローバルに展開していこうとすると、日本国内だけで棲み分けをしている状況ではダメです。特に、海外への進出などを考えた場合には、オールチノーで、目標実現のために力を集中していく必要があります。グループ全体で一つの目標に対して、臨機応変にシナジー効果を出していくということです。これが、当面の大きな指針です。
よい動きが出てきた
東日本大震災の影響がありますね。ですから、マクロで見れば、どうしても上半期の経済活動は大変です。特に東日本の企業は。西日本の企業では、思わぬ需要があったという企業もありますが、全部がそうではありませんので、全体としてみればつらい状況ですね。しかし、これを乗り越えれば、日本は復活していくと思いますから、状況はよくなっていきます。
第1四半期は比較的よい動きが出てきました。第2四半期は少し停滞気味ですが少し企業の投資マインドが出てきたとか、先行きの計画が具体的になってきています。私は、下半期から来年へ向かっては、経済活動が大きく展開していくと期待しています。ただ、依然として原子力問題での不安は残ります。これだけは気がかりです。
しかし、会社の経営は、経済活動全体の流れに押し流されるままというわけにはいきません。つらい上半期をどうやって補完するのかということが重要になります。
海外事業に力入れる
第1は、海外事業への取り組みです。当社は、海外においては、東アジア市場に力点を置いて事業を進めています。それぞれの国での拠点をかなり整備してきています。リーマンショックで国内の事業が大変だったときに、中国、韓国、ASEANの市場は、ショックからいち早く回復し、成長傾向に変わってきました。
韓国などは、官民一体の国を挙げての活動で、経済を立て直しました。チノーは韓国にも子会社がありますが、ここも活発に事業を展開しています。
中国に2つの工場があります。そのうちの一つは計装関係です。一部はエアコンのコンプレッサ性能試験装置などをつくっています。現在、ここは手が足りないほどの忙しい思いをしています。
自動車の関係も同じです。車には必ずカーエアコンが付いていますから、性能試験装置が必要になります。
環境問題への取り組み
もう一つは、環境問題への取り組みです。二酸化炭素による地球温暖化の問題が大きくクローズアップされてきていますが、ここへきて、さらに省エネルギーの問題が出てきました。
二酸化炭素の削減では、エアコンに使われている冷媒のフロンに替わる、新しい冷媒の開発競争が進められており、そのための試験設備が必要になってきます。当然その需要は海外でもあります。
会社概要
【会社名】(株)チノー CHINO CORPORATION
【所在地】東京都板橋区熊野町32−8
【代表取締役社長】苅谷嵩夫
【事業内容】計測制御機器の製造・販売、計装工事
【会社設立】1936(昭和11)年8月1日
【資本金】42億9200万円(東京証券取引所第1部上場)
【従業員数】545名
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