計量新報記事計量計測データバンク今日の計量計測情報ニュース会社概要出版図書案内リンク

全体最適で、成長市場を開拓する


苅谷 嵩夫

(株)チノー 社長

vol.2

日本計量新報 2011年11月6日 (2892号)2面掲載

グループ全体でシナジー効果を

変化に対応した新しい機器の開発

もっと言えば、自動車自身の仕組みも変わってきます。エンジンが内燃機関から電動モーターへ変化していきます。そういう車の中のいろいろな装置を検査する装置は、従来は、電圧はDC12から24ボルト(V)くらいまで対応すればよかったのです。ところが、電池で動くとなると、装置にかかる電圧はものすごく高いものになります。したがって、車の性能測定のための計測機器もそういう高電圧に対応していかなくてはなりません。
 技術革新が一つあって、それがもう飽和したかなと思っていても、そういう変化が一つあると、計測機器や制御機器もその変化に対応した新しいものを開発していかなくてはなりません。新しいコンセプトがあれば、新しい市場ができてきます。
 ですから、不況だから研究開発をストップするとかということをやってしまうと、その先は大変なことになります。

人財しか、力はない

昨年、当社の業績が復活したのは、「ヒトの力」によるところが大きいのです。もちろん全社で構造改革や合理化は相当にやりましたが、人員の削減には手を付けませんでした。不況の中でも採用も継続しました。「人財しか、力はない」という信念があったからです。
 大変でしたが、景気が回復してくると、これらの人財がすぐに力を発揮することができました。苦境に耐えて、社員もよく頑張ってくれたと思います。


海外戦略は東アジアに注力

−−海外戦略をお聞かせください。

その市場が要求するものをすばやく提供する

苅谷 嵩夫基本は、日本で創造して、海外のマーケットで生産・販売するということです。しかし、海外のそれぞれのマーケットで需要が違ってきています。ですから私は「日本のよい商品を海外へ輸出する、という従来の輸出の概念を変えよう」ということを、声を大にして言っています。「輸出」という概念を変えていこうということです。
 輸出というと、どうしてもハードを日本から海外へ売るというイメージがありますね。そうではなくて、それぞれのマーケットの要求に応える一番的確な商品を、そのマーケットから近いところでどれだけ早くつくれるか、ということです。
 日本が売ろうとすると、どうしても、そのマーケットでは必ずしも必要でない不要な機能まで付いた高スペックなものを売ろうとしてしまいます。昔はそれでよかったのです。しかし、今は、それぞれのマーケットのレベルが向上しています。不要な機能はいらないという、コストパフォーマンスへの要求が強くなっています。
 一方では、関税と為替の問題があります。価格競争は極めて厳しいものがあります。
 ですから、従来の感覚で輸出をしていたら、いくら日本の製品が優秀であっても、価格があわず競争になりません。

インド市場に注力

私はインド市場に注目しています。中国、ASEANに次ぐ発展が期待できますので、力を入れていきます。
 チノーはインド市場に関しては、早くから手を打ってきています。20年以上前から製品は販売していますし、合弁会社を設立して15年くらい事業展開しています。そして、2年前に100%子会社「CHINO Corporation India Pvt. Ltd.」にしました。
 現地で活動していくためには、現地の人たちと意思疎通をしなくてはなりません。日本からコントロールするだけでは、うまくいきません。そこで、日本人も常駐しています。5月からは日本人の社長は常駐としています。
 インドでは、12カ所の大きな都市に拠点があります。そして、長い間活動していますから、チノーブランドは市場にかなり浸透しています。昨年、工場をリニューアルして一部記録計の現地生産を開始しました。
 ですから、今後もっとインドでの事業は伸びていくと思います。インド市場は、経済発展に拍車がかかっており、15年前の中国市場と同じような状況です。経済発展に加速が付いて、人口は爆発的に増えていますから。
 リスクも当然ありますが、チノーにとっては、社会インフラが伸びてくる市場に商機があるわけです。したがって、今後一層力を入れていきます。

中国市場も引き続き重視

経済成長を持続させている中国は、引き続き重要なマーケットです。先に、コンプレッサ性能試験装置の話をしましたが、中国の千野測控設備(昆山)では現地需要にマッチした調節計を開発し、販売を開始しました。今後、現地化をさらに推進し海外売上高比率の拡大を図っていきます。

チノーの重点分野

−−チノーの重点分野は何でしょうか。

光を利用した非接触の検査装置

チノーは温度分野を中心に事業展開をしてきました。特に非接触の温度計です。そして、非接触の計測を、温度だけでなくさまざまな分野に応用できるようになりました。これは大きいですね。
 たとえば、光を使って、水分だとか、紙のコーティングの厚み、薄いフィルムの微少な厚さなどを測ることができます。これが脚光を浴びているのは、液晶とか太陽電池などの新しいデバイスには、その中に必ずフィルムが使われているからです。
 このように、フィルムが使われる用途と需要はものすごく多いのです。今や、フィルムは日本のお家芸です。そういうところにやはり、検査装置が必要になってきます。この分野もチノーにとって重点分野です。

新しい需要が生まれている

原発事故が起こり、新エネルギーへの関心と需要が高まっています。太陽光、リチウム電池、燃料電池、風力、地熱、波力など、さまざまな発電、蓄電の仕組みが考えられていますが、そういうものを実現しようとすると、必ず素材の問題が出てきます。コストを下げ、品質を上げて、量産しなくてはなりません。たとえば、電池の電極では、材質や焼成の温度などが問題になります。そこに、これまでの需要とは異なった、新しい需要が生まれ、裾野が広がってきています。
 分析的な計測では、実験室ではなく、工程で計測するとなると、連続測定が必要になります。そうすると、昔からの分析計ではなくて、オンラインで、手軽に、しかも確実に測定できる分析計が必要になってきます。こういうことが、温度から派生して出てきているということは、われわれにとって、チャンスであり追い風であると感じています。

環境、安全・安心が焦点に

大きく見ていくと、環境に関わる問題や安全・安心に関わる問題を解決していくことが長期的に大きなビジネスになります。この視点で見ていくと、そこにアイデアが出てくるし、可能性が出てきます。そして、そういうことに繋がる自分たちの持っているコア技術をもう一度見直していくことが必要です。
 こういうコア技術をどう活かすかという方向で考えると、いくらでもビジネスチャンスがあると期待できます。

《前へ[1 2 3 ] 次へ》


インタビュートップ記事目次
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.