日本計量新報 2011年11月27日 (2895号)2-3面掲載
自動車用センサが伸長
これからはセンサ
日本国内の需要も、ある程度飽和してきました。圧力計も年率でだいたい9%くらいしか成長していませんので、売上を大きく伸ばすには、これからはセンサです。世界的に購買範囲を広げることが課題です。
当社の場合、日本では、機械式の圧力計と電子式(圧力センサ)の比率が、だいたい50%対50%、それぞれ年間100億円程度になっています。この流れを見ますと、アメリカでもそのくらいはいけるのではないかと読んでいます。
アメリカのアッシュクロフトは圧力計が主体の会社でしたから、そこにセンサの販売を加えました。エレクトロニクスのマーケティングを揃えて、だんだん需要が増えてきている状況です。
今、センサの比率が28%くらいまで高まって来ましたから、相当がんばっています。これを50%まで持っていければ、大きいと思っています。
自動車用センサがカギ
それから、生産数量を上げるという意味では、自動車用のセンサが一番大きく影響します。そこに参入していくことで、他のセンサについてもコストの上で有利になっていくのではないかと思います。
自動車用のセンサは、数量を伸ばしたいですね。特に、メタル式のセンサを専門にやっておりまして、だいたい月産で60万個。これを月産100万個まで上げるぞと、気合を入れています。
MEMSセンサに注力
最近、シリコンやガラスを使ったMEMSセンサという圧力センサを開発しまして、そこにも力を入れようと考えております。このセンサも、自動車業界で相当需要はありますが、はたして当社がどこまで参入できるかは、ちょっと難しいところですね。ただ、生産数量を伸ばすことは、他の部品についてもコストダウンにつながりますから、そういった効果も含めて、今後も増やしていこうと思っています。
――今、自動車はセンサで動いているようなものですからね。
ますますインテリジェント化が進むことになり、当社の出番が多くなるということになりますね。
アメリカと技術交流
圧力計ではアメリカでトップメーカーのアッシュクロフト社が私どもの傘下に入りましたので、アッシュクロフトと当社で技術的な交流を図れば、相当良い製品ができるし、お客さまの要望にも今まで以上にお応えしていけるのではないかと自信を持っています。
アッシュクロフト社との技術交流は、けっこう話が早いのですよ。両者は技術的に同水準のものを作っていますから。センサの場合も、お互いに話が理解しやすいですし。今、長野計器からアメリカに二人技術者を派遣していまして、経営レベルと担当レベルの両面で技術交流を進めているところです。
――センサの技術は日本の方から輸出しているのですか。
そうです。センサの素子はこちらで作っています。
心臓部を中国で作るのは難しい
――自動車産業では今、中国などが伸びているのでしょうか。
アメリカや日本、ヨーロッパである程度部品を作ってから中国に持っていくという流れでしょうか。鋼板なんかは中国でもできるようになりましたけれども、今はまだ心臓部を中国で作るのは難しいと思います。
私どものセンサが使われているのは、デュアルクラッチ、トランスミッションや、ブレーキ、エアコンという箇所ですから、中国での組み立てはあまりやられていないようです。最近になって、アメリカの会社が一部中国で組み立てを始めたと聞いていますので、アメリカ経由、ヨーロッパ経由で当社の製品が中国に行くという形になるかもしれません。
たまたまアメリカの大手に当社の製品(MEMSセンサ)が採用されることが決定しましたので、これからどういう機種に載せるのかというのが、一つの大きな取り組みとなりそうです。そんなことを含めて、もう少し調べようと思っています。
カーエアコンにはセンサが必須
――自動車の技術も今は千差万別ですが、ハイブリッドカーや電気自動車など、それぞれに対応されている訳ですね。
カーエアコンの場合、センサは必要不可欠です。エアコンの冷媒の圧力をセンサでチェックしていますから、これはなくなりません。
これまで、ヨーロッパの車には、あまりエアコンが付いていなかったらしいですね。ところが、地球温暖化の影響でだんだん暑くなってきて、最近になってエアコンが付き始めました。それで最近、センサも伸びています。日本や東南アジアはもともと暑いですから、どうしてもエアコンが必要になります。
ブレーキとか、トランスミッションの場合は、電気自動車では使えませんけれども、ハイブリッドカーやガソリン車には使っています。全部が電気自動車になるのは相当先のことだと思いますし、液化石油燃料エンジンの車ではまだまだ需要はありますので、そういったところに注力していきたいと思います。
他社と新たな水ビジネスを
ブラジルは需要が活発
――今、一番魅力的なマーケットは。
やはり新興国といいますか、中国、ブラジル、インド、この辺りがこれから伸びると思います。
ブラジルは資源国ですし、けっこう活発な需要があります。
私も、去年ブラジルに行きましたが、ビル建設がラッシュです。それだけ、経済活動が活発だということです。
2016年にオリンピックが開かれますから、それに合わせてということもあると思いますが、道路工事から何から、すごく動いていましたね。中国の最盛期もそういうイメージがありました。
インドに工場を
インドについても、これから伸びる市場ですので、私どももインドでどういった事業ができるかということを調べています。自動車関係が入るとすれば、インドに工場を一つ作らなくちゃいけないということで、今、工場用地などをリサーチしています。
インドは法律も複雑と聞いていますし、条件的にかなり厳しいとは思います。ただ、私どもとしては、需要に応える方向性を堅持していきたい、というのが現在考えている方針です。
中国にも既に、アッシュクロフトの工場がありますし、私ども長野計器の工場と販売店もありますので、そういう意味では動き始めています。ただ、中国の場合は、自国でも似たような製品をたくさん作っていますのでね、当社の製品がどの程度受け入れられるかというのは、難しいところですけれども。
しかし、先ほどもお話ししましたように、質の高いものは必要とされています。日本製を使っているというだけで、彼らが製造する製品が高価に売れるという話もありますので。
水ビジネスで4社が業務提携
――注目する新しい産業などは。
最近、私どもを含めた4社(長野計器、東京計器、チノー、オーバル)で、企業間で技術交流しながら新しいパッケージをやろうではないかということで、海外の「水ビジネス」を進めています。当社としてもシステム化した水ビジネスに参入していこうと考えています。従来から私どもの圧力計などはたくさんご支持をいただいていますけれども、単品売りであって、流量計・温度計、システムなど、一つのパッケージとしての販売はありませんでした。これからは、そういった同業者との連携も含めたシステム製品の開発・製品化を新しいビジネスモデルとして、推進していこうと思っています。
まだ、具体的な内容はこれから決めていきますが、お客さまの要望をお聞きしながら、一つでも固めていこうということで、2011年7月20日に、4社同時に発表させていただきました。
――これまでは、そういった横のつながりはなかったのですか。
そうですね。お互いに、自分たちの仕事を展開することで一杯であり、そこまでは気が回らなかったですけれども、話し合いの中で、「やってみようじゃないか」ということになりました。それぞれが独自の技術を持っていますので、4社が力を合わせればお客さまのニーズに応える、新しいことができるということです。
得意なマーケットを共有
当社の場合は、圧力計はもちろん提供しますが、東南アジア地区についてはオーバルさん、インド市場についてはチノーさんがだいぶ詳しい。私どもはサウジアラビア、ブラジルを始め南米にも強い。そんなふうに、販売サービス網を広げていくことができると考えています。お互いの強みを利用しながら、この事業を進めていきたい、と考えております。
もの自体はもう、それぞれの企業で作っていますが、ただそれを、まとめて提供するということは、これまでありませんでした。
例えば、何社か企業が集まって、「こんな話があるけど」「うちは○○ができる」「うちでは○○ができる」と話し合って、お互いにものを提供し合えれば、商談も早く進みますし、お客さまにとってもメリットがあります。長野計器としても、当社に入ってくる注文だけでなく、オーバルさんや東京計器さん、チノーさんに入ってきた注文にも対応することができるということで、相互にメリットがあると思います。
――事業展開も早いでしょうね。
そうですね。一堂に会して対応しますから、そこで新しいアイディアも出てくるでしょうしね。新しいビジネスモデルとして期待しています。具体的に動き出すのは少し先になります。
その一方で、「お客さまのコモンニーズがどうなっているのか」というようなことも含めてやっていかないと、いきなり作って費用だけかけてもダメですから、そこはしっかりと見極めていきたいと思っております。
圧力計は、いろいろな分野で使われています。たとえば、下水道の雨水計ですとか、発電所だとか、プラントだとか、例をあげるときりがないほど多様な使われ方をしています。
ですから、そういうシステムの中で、さらに皆さんと手を組んで提案していければと思っています。単品売りからセットの販売にすれば、付加価値もつきますしね。
安全性の向上に重要
新しい活用方法を研究
――橋梁の強度計測など、安全面での活躍も拝見していますが、東日本大震災の後、そうした技術が利用される動きもあるのでしょうか。
今、光ファイバーを使った計測システムでの橋梁計測ということで、鉄道会社といろいろと協議しながら進めています。
その他に、パンタグラフとか、タンクですとか、そういったものの強度や、地滑りなど、いろいろなところに活用できます。
また、光ファイバーの新しい用途として、これから伸びていくと思います。
現場の計器として圧力計は重要
電気を使用する計測器は、電源がなくなると機能しなくなります。しかし、アナログ式の圧力計は電気が切れてもそのまま動いています。そういう意味では、安全が強く要求される現場の計器としてまだまだ使われていくのではないかなと期待しています。やはりアナログ式で、現場で見てわかる計器がないと、不安ですね。
日本の好感度は上がっている
地震、津波、原発事故、円高、そして、動かない政府。企業は苦労しています。そういう意味では、日本の皆さんはそれなりに落ち着いて対応しているということですね。
私は地震が起きた時アメリカにいましたが、日本の人たちが非常に整然とやっていたということで、アメリカ人は相当びっくりしていましたよ。
たとえば、被災地で炊き出しの列にもきちんと並んでいるのを見ると、すごいなあと。評論家ではなく、一般の人たちがそういうことを言ってきてくれます。某国では、バスに乗るにも人を掻き分けて乗るのに。そういう意味で、世界的に日本の好感度はアップしていると思います。
――ありがとうございました。
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