2010年には1000億円の売上をめざす寺岡 和治 (株)寺岡精工 代表取締役社長 vol.1 |
日本計量新報 2008年4月6日 (2718号)2面掲載
日本は危機的状況−−現在の経済、政治の状況をどう見ていますか。 今の日本は下向き路線今の日本の状況に関して、私はかなり悲観的な見方をしています。昨年の日本の状況を見ていると、小泉改革の反動が出て、内向き、下向きの路線をまっしぐらに進んでいった感じがします。 停滞がそのまま温存こういう社会状況は、小泉改革が行われたことによってどうこうなったということではなくて、むしろ、小泉改革が言葉だけで、バブル崩壊後の10数年の停滞はそのまま温存されていき、マーケットがシュリンク(縮小)しているということではないかと思います。 世界の潮流に反するしかし、小泉改革が悪かったからということで、逆に振り子が振れてしまって、その結果としてばらまき政治も復活していますし、規制改革も骨抜きになっています。これは危険な流れでして、現在の世界の潮流からすると逆の方向に向かっています。 EU各国は改革で切磋琢磨EU(欧州共同体)も当初はうまくやっていけるのかという見方をされていました。しかし、ヨーロッパのマーケットが一つになり、域内での関税障壁もなくなり、人の行き来も自由にできるという枠組みができました。 そこでポーランドやハンガリーなどにもどんどん企業が進出しています。一方、企業が他国へ出て行くとその国としては困るわけですから、税制を変えて法人税を安くしたり、規制を緩和したりして、企業やその国に住む人たちをどうしたら自国に留めておけるかということで知恵を出しています。 そういうことで国同士の競争が生まれています。その結果としてEUは健全な状況に向かっています。これが今のユーロ高にも繋がっていると思います。これから見ると日本は完全に逆方向へいっています。 市場原理に委ねるべき私も、市場原理にもとづく経済体制が万全な体制であるとは思いませんが、少なくとも政治家や官僚による恣意的な富の再配分や、恣意的な産業政策に比べると、経済を市場原理に委ねるやり方は遙かに優れていると思います。 「官」が介入した業界はダメに過去の例を振り返ってみますと、「官」が介入した業界はすべて、国際的な競争力を失っています。または産業自体も衰退してしまっています。 一番典型的なのは日本の農業です。10年間で40兆円以上のお金が農業政策として投入されています。ではそれで日本の農業の国際競争力が上がったかといいますと、まったくありません。 銀行もそうです。最近でこそ利益を上げているといっていますが、この間200兆円を超える公的資金が投入されています。それでどうかといいますと、われわれ預金者にはろくな金利は支払われていません。本来預金者に支払うべき金利を払わないで利益が上がっているというのが現在の銀行の状態です。合併によって図体だけは大きくなっていますが、国際競争力はゼロです。 1980年代に日米半導体摩擦がありました。あの頃の日本の半導体業界は世界で一番強かったのですが、それがアメリカとの間で政治問題化し、日本の政府・官僚がそこに介入してきました。政治的な決着をつけたわけです。この決着の内容が何であったかというと、日本市場全体の2割の量の半導体をアメリカから買うということにしてしまいました。この政治介入による決着が、現在、日本の半導体が韓国やアメリカに後れを取っている原因だと思います。 自動車もそうです。トヨタは世界一の企業になろうとしていますが、自動車も1980年代に日米間で貿易摩擦になって、輸出の総量規制をしました。それによって自動車業界は窮地に陥りました。トヨタは例外として、マツダはフォードの傘下に、三菱はクライスラーの傘下に、日産はルノーの傘下に入ってしまいました。 このように経済に政治が介入するとろくなことがありません。しかし、未だに多くの日本の人たちは景気が悪くなると政府に対して何とかしろといいますし、政府も余計なことをするのです。政府が余計なことをするからどんどん悪くなるのです。これが日本の状況です。 それがさらに小泉さん以降、小泉改革への反動が出て、また昔の悪い状態へ戻ってしまったという感じがします。 さらに日本の人口が減り始めていますね。人口構成比がどんどん高齢化しています。かつて、1970年代にイギリスのことを老大国だとか斜陽の国だとかいいました。まさにそういう状況に今の日本がきているのです。日本という国に対しては悲観的に見ざるを得ません。 |