2010年には1000億円の売上をめざす寺岡 和治 (株)寺岡精工 代表取締役社長 vol.3 |
日本計量新報 2008年4月20日 (2720号)10-11面掲載
毎年100億円の売上増加をめざす輸出で伸びたのはロシア−−寺岡精工の事業についてお聞かせください。 日本の国内市場は急成長は望めないと思います。昨年輸出で伸びたのは、中国を除くとロシアのマーケットです。中国では自社生産していますので、社内では輸出とは見ていません。数年前まではロシア市場は考えられませんでしたが、急激に大きなマーケットになりました。 ブラジル市場も伸びています。どんどん規制が撤廃されてきていますので、われわれのビジネスができる環境が整ってきました。 インド市場も、これから楽しみなマーケットです。ただ、インドの場合は規制緩和の速度が中国より若干遅いのです。中央集権的で政府のコントロールがまだ強い国です。しかしこの状況も急速に変わりつつありますので、チャンスが出てきます。 いわゆるブリックス(BRICs)といわれている国々の市場は今後大きく伸びると思います。 中国では寺岡は中国企業これらの市場への取り組み方はいろいろありますが、製品を現地で生産したり、合弁企業を組織したりして、その国の市場にあった形で取り組んでいきます。 寺岡精工にとって、中国市場は国外マーケットではありません。中国市場では、われわれは中国国内の企業、国産企業ですから。 グローバリゼーションは人材の活用人材の面でも、外国の人たちをどんどん活用する必要があります。グローバリゼーションのゴールは人の活用だと思います。ただ単にマーケットを求めるだとか、生産におけるリソースを求めるのではなく、中国では中国の人材、ロシアではロシアの人材といったふうに、人材を活用することです。 単なる労働力として安い工賃でものを作ってもらうというのではなく、つまり手足としてではなく頭脳を使ってもらうということです。 中国で製品開発を中国では最初から製品の開発作業をやっています。 −−問題はなかったですか。 中国側というよりもこちら側の問題ですね。当初は日本人の側に中国の人との共同作業に拒否反応がありました。同じ釜の飯を食った人たちではない、考え方が理解できないという意識ですね。これが最大の障害でした。 −−どうやって克服されたのですか。 これは実際に一緒に仕事をすることによって、お互いが学んでいくほかに解決の道はありません。 実際にそうやって克服していきました。 成功事例ができれば普及が進む−−新製品を普及させるには。 新製品を普及させるのは大変です。 たとえばセルフPOSなどの新しい製品は、興味を抱いたとしても、すぐにお客様が導入してくれるとは限りません。導入事例はありますかと必ず聞かれます。その辺が難しいところですが、そういう時は新しいことに挑戦してみようというお客様を見つけて、そのお客様とチームを組んで改善していきます。そして数字の上で成果を出すことです。 セルフPOSであれば、人件費が削減できることを具体的に示します。また、サービスの低下ではないかとの疑問には、お客様にとってマイペースで精算ができてむしろ煩わしくない、というようなことを具体的に示していきます。そして最終的には導入の成功事例を作っていきます。こういうことの積み重ねです。1つ成功事例ができれば、関心も増え、物事は進んでいきます。 居酒屋さんなどのセルフオーダーシステムも、社員の自らの体験から生まれたもので、お客様は待たされずにオーダーできる、お店は省力化できる、という双方にとってロスが省けるものです。便利さが分かれば、普及は加速します。 ロジスティクスやホスピタリティなど4領域でチャレンジ−−注目している分野は。 われわれは今まで流通小売業のマーケットにフォーカスしてやってきました。ここが今でもわれわれの最大の顧客です。流通小売業の分野はもちろんこれからも中心分野として力を入れていきますが、さらに周辺の領域に力を注いでいきます。 たとえば、流通小売業の後方には、食品を供給している食品メーカーがあります。そういった分野だとか、ものの動きの分野、いわゆるロジスティクスといわれている分野ですね。倉庫や宅配便業界とか。郵政関係の携帯端末の技術などを手がけてきていますので、そういう技術をてこに、ロジスティクスシステムの開発・提供などに力を入れていきます。 もう一つ、外食産業分野のホスピタリティといわれる領域を攻めています。技術的には、われわれがスーパーマーケット分野で蓄積してきたITの技術や、培ってきたサービスインフラが活用できますが、マーケット的には新事業です。 流通+フードインダストリー+ロジスティクス+ホスピタリティという4つの領域です。こういったわれわれの強みを生かせる分野で、チャレンジしていきます。 顧客に鍛えられる−−旺盛な開発力の秘訣は。 当社は「新しい常識をつくる」ということを会社の看板として掲げています。これがベースにあります。 それから、お客様に鍛えられたということです。流通小売業は非常に厳しい業界です。そのなかで厳しいお客様に注文を出されると、なんとしてもやらざるを得ませんから。 もうひとつ、車や半導体のように国が口を出すような業界ではなかったことが、われわれが束縛無く自由にやることができたという面で、幸いしています。 −−売り上げ目標は。 2010年までに連結の売上は1000億円までもっていきたいと思っています。2008年度は800億円が目標です。 会社は成長し続けなくてはなりません。成長するなかで社員が活躍する場も出てくるし、経済的な満足も得られます。お客様も成長している企業としか付き合ってくれません。 毎年、2桁売上を伸ばしていきたいと考えています。そのために何をすればよいのかという発想で、計画を練っています。このぐらいの成長を勝ち取るにはマーケットをどこに求めなくてはならないのか、そのマーケットで成果を上げるためには何をしなければならないのか、ということです。 問題を解決するなかで能力を高める−−社員の能力を高めるにはどうすればよいですか。 まず、社員が自分で力をつけなければいけない状況を作ることです。それなくして、ただ勉強しましょうでは力はついていきません。そして、そのなかで、自ら学んでいけるようにすることです。 ここ数年「社長塾」というものをやっています。毎年、50名くらいの社員を集めて、半年間ぐらいやります。彼らが考える問題点を具体的なテーマとしてテーブルに出して、それを討議して解決していきます。その中で能力を高めることができます。 問題点は山のように出ますが、ではどう解決するかということになると静かになります。そこで、こちらが質問をどんどん投げかけると、彼らの考え方が問題点をただあげつらうことから、解決策を考える方向へ変わっていきます。そこが重要ですね。 結構大変ですし、地味なことですが、これは続けていく必要があると思います。私にとっても、若い人たちがどんなことを考えているのかを知る重要な機会になっています。 −−ありがとうございました。 おわり |