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日本計量新報 2007年11月25日 (2701号)

はかりの定期検査機関が運営困難になると計量法は大きくほころびる

日本の計量行政は計量法が骨格となっていて、基本的にはこの計量法の定めにしたがって実施される。数年前に地方の計量行政機関が実施している計量行政が機関委任事務から自治事務に切り替わってから、計量法が規定する計量器の検定・検査の実務が実行に怪しげな部分が大きくふくらんできている。各種の特定計量器の検定にしても地方庁の計量行政機関が実施すべきところを別の機関が実施している事例が発生している。質量計(はかり)の定期検査も地方庁の責任において実施しなくてはならないにもかかわらず、その実施状況に怪しげな領域が拡大している。
 特定計量器の質量計(はかり)の定期検査は都道府県と特定市が検査を実施する主体であり、この検査を地方公共団体が指定した計量法上の指定定期検査機関に実施させることができる仕組みになっていて、日本の半数以上の都道府県がこの制度を一部あるいは全面的に用いて 質量計(はかり)の定期検査を実施している。指定定期検査機関制度を利用していない地方公共団体の質量計(はかり)の定期検査の実施率がどの程度であるか定かではないものの、さまざまな状況を勘案すると定期検査対象のはかりの80%には到達していないようである。悪い方で推測すると50%程度であると考えられるので、これでは計量制度は崩壊の危機に瀕しているといえる。
 地方公共団体は運営費の収入が慢性的に不足しているため年々予算規模を縮小していて、計量行政予算もこの例外ではない。かつての半分の組織の規模、人員、体制になってしまえば余程のことでもなければ計量行政は予算と組織・人員の規模に比例して縮小され、計量行政のどこかの部分が実施されないことになり、場合によると質量計(はかり)の定期検査にこれが及ぶ。質量計(はかり)の定期検査の実施に影響が及ぶのは最後の最後であるとはいえ、現実に影響が出ていると考えて間違いはない。適正計量の実施の確保を知識と意識の面から促進する立入検査などの計量行政が間引かれるのが最初であるようで、この面では計量行政機関はもはや「計量思想の普及」を語る資格が疑われている。
 質量計(はかり)の定期検査のための指定定期検査機関の運営に関しては、検査手数料の収入によってはとうていこれを運営できない内容になっている状況下で、地方公共団体は指定した先に対して年々運営費の補助を削減しているため、指定定期検査機関は運営に窮している。指定された先の多くは都道府県ごとにある計量協会などであり、指定定期検査機関としての事業が赤字になってしまい、会費収入などから補填してつじつまを合わせているところが少なくない。これとて数年の間なら何とかなるとしても10年以上に及んでしまうと質量計(はかり)の定期検査は実施されないことになって、計量法の実施に大きなほころびが生じ、やがては計量法の崩壊につながる。


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