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日本計量新報 2011年1月16日 (2853号)

100年に一度の技術改革期を生きる

二酸化炭素・メタン・亜酸化窒素・フロンといったガスは、地球に温室効果をもたらすことから、「温室効果ガス」と呼ばれ、世界各国で削減が約束事になっている。国連気候変動サミットの場で、当時の鳩山由紀夫元首相は「日本は2020年までに1990年比で25%削減する」と大見得をきった。
 日本に引っ張られ、各国が同じような姿勢で削減に取り組むのなら、やりがいがあることである。しかしながら、困ったことに経済と産業の発展は、石油や石炭などの化石エネルギーの使用の増大と連動している。化石燃料は、地球温暖化に及ぼす影響がもっとも大きな温室効果ガスであるCO2を排出する。中国は、自動車を中心に急激に市場を巨大化している。これから大きく発展しようとする国が、日本と同じようなCO2削減の道を選ぶわけがない。

 温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)公表「2009(平成21)年度の温室効果ガス排出量(速報値)」によると、日本の国民生活分野を含めた産業経済全体に占める運輸部門のCO2排出割合は19%である。運輸部門に占める自動車の割合は90%である。自動車がCO2を全く排出しなれければ、それだけで目標値のかなりの部分を成し遂げることになるが、これは実際には不可能である。他の産業部門にしても、CO2を削減する技術の開発よりも、化石エネルギーの使用を削減する方法を選択することが効果的であるように思われる。この方法であれば、石油危機時に対応した省エネルギーの方法を利用できる。

 自動車産業は、現在の自動車産業の礎を築いたT型フォードが誕生してから100年ほどになる。そして今日、まさに100年に1度の変革期にある。
 米国自動車3大メーカーが売上を落とし、トヨタも赤字を経験した。輸入大国であった中国は、自国の自動車需要を国産でまかなうほどの意気込みと体制づくりをしている。日本では、トヨタのプリウスやホンダのインサイトに代表される小型ハイブリッドカーが需要を拡大している。高いガソリン代への対応と環境特性が使用者の感性にマッチしたからだ。
 走行中にCO2を全く排出しない電気自動車の技術も、急速に進展している。昨年末、日産自動車が電気自動車を発売した。ほかの自動車メーカーも電気自動車を発売することが予想されることから、2011年は電気自動車の本格普及元年になりそうだ。充電のための電気料金が、走行距離当たりでガソリンより低く抑えれるようになれば、電気自動車の普及は加速度を増す。効率がよく低価格の蓄電池の開発は、電気自動車の普及と相関をなす。
 100年に1度といわれる経済の大ピンチと自動車産業の技術大転換が重なってやってきた。技術改革の波は、いずれ自動車産業以外にも波及することだろう。


 計量計測機器産業は総合すると最盛期から3割ほど生産規模の水準をさげており、回復はこれからである。生産を3割落とした機器を扱う市場の内側で事業をするのは難儀である。堅実な経営をしている企業の多くは、新たな市場を開拓して、外側に3割広げている。
 計量計測機器産業の100年を振り返ると、計測の原理原則は同じであっても、姿や形はみな変わっている。そこで活動する企業にしても、100年前と変わらず現在も活躍しているのは、わずかである。 
 移り変わりが激しい世の中の需要に適合し、顧客の欲求に確実に対応し、次世代を切り開く計量計測機器の開発と製造に努めて、これに成功する企業にこそ新しい世界と未来が広がる。

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