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日本計量新報 2012年1月1日 (2899号)
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フランス革命の理想を現代に受け継いだ、計量単位の定義変更
国際単位系(SI)は、世界共通の計量に関するルールであり、各国の社会基盤となる重要な制度である。
礎となったメートル法は、18世紀のフランスで制定された。その誕生には、民主主義の実現を目指したフランス革命における市民の理想が、大きく影響している。
当時の世界では、国内外ともに統一の単位標準という概念はなかったうえ、計量制度の社会的運用が、権力者などの恣意に大きく委ねられていた。
日本でも、江戸幕府のもと計量の仕組みは統一されておらず、甲州枡など地域ごとに独自の取り決めがあった。年貢を徴収する枡が、特別に大きく作られていたという事実がいくつもある。
フランス革命は、一部の特権階級中心の社会体制(アンシャン・レジーム)に対して、市民が反旗を翻した革命である。自由、平等、友愛という3つの理念を掲げ、これを基礎に近代市民主義がつくられていった。
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誰でも平等に使える普遍的な計量単位の実現は、フランス政府がなすべき重要な仕事の一つであった。
フランス革命後の1790年3月に、国民議会で、世界中に様々ある長さの単位を統一し、新しい単位を創設することが決議された。それを受けて、1791年にメートル法が定められ、地球の北極点から赤道までの子午線の長さに基づいた新しい長さの単位、「メートル」が誕生した。
メートルの定義は、実際には金属のメートル原器として実現し、1889年の第1回度量衡総会において国際的に採用された。メートルという名詞の名前は、ギリシャ語で、測定・尺度・拍子という意味のメトロン(μeτρον)を元にした造語であるという。
その後メートルの定義は、1960年にクリプトン86原子のスペクトル線の波長を用いて定義することになったが、レーザ技術の発展により、1983年に現在の定義に変更され、「1秒の2億9979万2458分の1の時間に光が真空中を伝わる行程の長さ」となった。
単位標準は技術の発展とともに理想に近づけることを目指して、進化している。
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メートル法から出発した単位標準は、科学や工業が発展するにつれて、長さ以外の単位についても拡大されていった。
現在の国際単位系(SI)は、メートル法を基礎として発展してきたものである。
SIでは現在、7つある基本単位のうち、質量の単位であるキログラムを除いて、全て普遍的な物理量によって定義している。
国際度量衡総会(CGPM)は2011年10月21日の会議において、キログラムなどの定義変更の検討を進め、将来的に変更することを、世界の決定事項とした(改定の方向性が決議されたのは、他にA(アンペア)、K(ケルビン)、mol)。
これについて、質量の定義が変更されるがごとき報道もみられるが、あくまでも「単位の定義」の変更である。混同する事例は日本計量新報の報道でもあり、反省するところである。
キログラム(質量の基準となる単位)の定義は、始めは「一辺が10cmの立方体の体積の、最大密度における蒸留水の質量」とされた。これと等価の分銅を作成して国際キログラム原器とし、この質量をもって1kgとした。金属塊である現在の国際キログラム原器は錆や洗浄などによって質量が微妙に変化することがあるため、再現性の高い別の方法でキログラムの定義をすることが希求されてきた。
これまでに有力な候補に挙がっているのは、単結晶のシリコン球が示すアボガドロ定数からキログラムを定義する方法と、プランク定数を測定するワットバランス法である。
メートル法の理想である普遍性を追求するため、人工物の国際キログラム原器を用いた定義から脱却することは、世界共通の夢である。とはいえ、現在試みられている方法が、技術の一般性や社会の承認という条件を十分に満たすのかは定かではない。夢の実現に向けて、技術の検証がつづけられることになる。
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