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日本計量新報 2017年8月6日 (3159号)

3次産業のなかの辛さが生みだす芥川賞

岐阜県の郡上市は町村合併で現在の市の形式になった。白鳥町は郡上市になった。白鳥町の昭和30年から50年は元気があった。長良川鉄道の美濃白鳥駅前の昭和40年ころは人が群がるにぎわいがあった。白鳥町の町史は昭和の高度成長期の産業の成長記録を載せている。この時期に農業などの第1次産業は少しだけ伸びて、第2次産業はそれなりに伸びた。大きく伸びたのは第3次産業であった。林業や農業の町であるような白鳥町で規模が拡大したのは農林水産の1次でも鉱業・建設業・製造業の2次でもなかった。農林水産でもそれを加工する事業は製造業になる。

 第3次産業は日本の産業分類では次があげられている。電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業、郵便業、卸売業、小売業、金融業、保険業、不動産業、物品賃貸業、学術研究、専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、教育、学習支援業、医療、福祉、複合サービス事業、サービス業(他に分類されないもの)、公務(他に分類されるものを除く)、分類不能の産業。

 都市から離れた山間地域で農林水産でも鉱工業でもない分野で伸びるとすると上の産業分類のどれかということになる。工場として特別に立地の良い地域を除けば伸長するのは第3次産業に分類されるどれかということになる。白鳥町が郡上市になってこの市で目立つ動きといえば、コンビニが街道筋にならび同じように大手家電が出店し、携帯とスマホの店、そして外食産業の出店である。名古屋に本社を置くコメダ珈琲店は街中のお店をよそに繁盛している。旧八幡町の繁華街にあるカメラ店は形だけの商売をしており、さまざまな商売も似たようなものだ。

 コーリン・グラント・クラーク(Colin Grant Clark1905112日〜198994日)は、経済社会・産業社会の発展につれて、第1次産業から第2次産業、第2次から第3次産業へと就業人口の比率および国民所得に占める比率の重点が移動するというウィリアム・ペティの論を元にして「ペティの法則」として示した。ペティがその論を単純には説いていなかったために「ペティ=クラークの法則」という。

 地方で働く場が見つかるのは介護の現場、コンビニなどの売り場、運転手などいくつかの職種に限られる。学習支援の塾業などもそれに含まれる。コンビニ店員と塾業から芥川賞受賞者がでているのは格好良いとはいえない仕事の苦労が人々の共感を呼ぶからだ。第3次産業には介護の現場、コンビニなどの売り場、運転業務や飲食業といった一般には労働集約型の産業が含まれている。スマホなどの売り場の業務は複雑労働に見えて単純作業の過酷な労働である。塾講師は公務員教員と比べたら給与など待遇は劣悪だ。

 第3次産業には単純労働から複雑労働まで含まれているから、そのうちの情報通信業や知識産業を別の産業分類にするのがよさそうだ。そうだとしても夏目漱石が『草枕』で書いたごとくである。「智(ち)に働けば角(かど")が立つ、情(じょう)に棹(さお)させば流される、意地を通(とお)せば窮屈(きゅくつ)だ、兎角(とかく)に人の世は住みにくい」「住みにくさが高(こう)じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟(さと)った時、詩が生れて画が出来る」そのようにしてコンビニ店員と塾講師が芥川賞を受ける。経済と産業の発展の帰結がここにあり、計量器産業でも工場で機械をつくるよりも健康つくりのお手伝いをすることにうま味がある事例がでている。

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