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日本計量新報 2017年12月3日 (3170号)

日産事件、神戸製鋼データ改ざんを他山の石とする

日本の社会は理屈っぽい。日本の新聞、テレビ、ラジオなどマスコミが理屈っぽいからでもある。理屈っぽさの元は役所、とりわけ中央官庁に取材してそれをそのまま報道することからきているようだ。役所は政策をつくるところでもあるから理屈をたてる。その理屈は悪いことではない。マスメディアが何も考えずに役所の理屈が社会の理屈であるように報ずるから、社会が理屈っぽくなってこまる。

 日産の資格者でない者による検査のことは、役所がなにか言って日産が報道発表したときだけドドドッとニュースがつくられて、その動きがないときは海よりも静かになる。神戸製鋼所のデータ改ざんの問題は当人がよく反省することである。社会が強い制裁を加えることになるのだから嘘ほど高くつく物事はない。日産の事件は自動車の安全の本質を揺るがす問題ということよりも、検査にかかわる取り決めと現実との不適合であるようで、このことを自動車工業会の会長代行として東京モーターショーで記者会見した豊田章男氏が簡素な言葉で語った。

 自動車と交通の安全ということでは高速道路における車間距離の詰め過ぎ、追い越し車線からの急な割込みなどは事故につながる重大事項である。高速道路の玉突き事故の多さは、運転者の安全意識の欠如によって引き起こされる。ブレーキを踏んでも止まらない、ブレーキは何時でも正常に働くわけではないといった心のフェイルセーフこそが大事である。二重の安全構造を備えることであり、その第一番が心に備える安全だ。速度が上がればブレーキは効かないし、カーブでハンドルを切っても曲がらない。このような初歩の物理学に疎い人々が日本には多いのだから、物理学の授業は何を教えているのだろう。

 このことをわが身に例えてみると、今日すべき仕事は上手に今日のうちにまとめあげて、できることなら明日の仕事の半分ほども処理してしまおうと行動するのがよい。明日は電車が停まるか、わが身を感冒が襲うかもしれない。相違とか工夫の以前のこととしてこの仕事はこのようにしていて良いものかと自問することだ。世の中が進歩しているので大概は従来のやり方では駄目なのである。そのようなことを考えない人々が多いからその状態を見ている競争相手は悲しい顔をしてほくそ笑む。計測の仕事をしていて計量意識の普及と啓発を説く人は物事の大局をみることを忘れてはならない。日産自動車の事件、神戸製鋼所のデータ改ざんを他山の石として私たちは何を学ぶかだ。

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