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偏荷重防止が安全輸送の鍵

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偏荷重が問題?
国際海上コンテナの横転事故

相次ぐコンテナ横転事故

海上コンテナが輸送中に横転する事故が、毎年発生している。

横転事故の原因として、カーブを曲がる際の速度超過などが考えられてきた。しかし調査の中で、「偏荷」や「荷崩れ」、「過積載」などがあった場合、熟練したドライバーが制限速度で走っていても横転してしまう場合があるという実態が明らかになってきた。

そもそもこれまでは、コンテナを自動車輸送するドライバーが中身を知らされる仕組みがなく、ドライバーは、積み荷の危険度を正確に把握することができなかったのである。

安全確保に関する法律案

こうした現状を踏まえ、自動車運送の安全を確保する「国際海陸一貫運送コンテナの自動車運送の安全確保に関する法律案」が閣議決定され、2010年3月5日に国会に提出された。

同法律案では、コンテナの品目・重量・荷付情報などを、荷主からドライバーまで伝達すること、重さが不明な輸入コンテナは受荷主が重量を測定し、過積載や偏荷重など不適切なコンテナを是正することなどを義務付けており、このルールが徹底されれば、事故の要因は減少するはずである。

ただし、国外から運ばれてくる荷物の全てにこのルールを徹底することは難しく、国内での安全体制整備が課題となっている。

そこで今注目されている対策が、車両偏荷重計量システムである。

港湾で活躍する偏荷重測定機器
重心測定も実現間近

横浜で偏荷重測定機器を導入

浜の港湾でコンテナ車両の重量測定を担う(社)横浜港湾貨物計量協会は、鎌長製衡(株)開発の「コンテナ車両偏荷重計量システム」を導入。全国に先駆けて、2009年5月から横浜の本牧計量所に偏荷重測定機器を設置した。

コンテナ内の偏加重値を計量。軸ごとの軸重・輪重と左右のバランスを記載した偏荷重計量証明書を、ドライバーに発行する(写真)。

ドライバーは、証明書を元にコンテナ内の状況を把握。偏荷重の度合いが大きく危険と判断した場合、積み直し等を荷主へ相談することが可能である。積み直しまでは不要の場合でも、積み荷の状況を把握することで、安全な運転ができる。

全国の港湾に偏荷重計量所を

同協会が実施する偏荷重の証明は、現在精度が80%程度。大型コンテナの偏荷重計量機器導入は全国的にも初めての取り組みであり、導入当初はいくつかの改良すべき点もあった。しかし、本番稼動しながら鎌長製衡(株)と共に改良実験を重ねた結果、5月中には100%の精度を達成する。

精度が上がれば、本牧以外の計量所にも順次設置する。

安全性確保に大きく貢献するこのシステムだが、時間的・金銭的にドライバーの負担になることはない。測定にかかる時間は現行と変わらず3分程度。協会は偏荷重測定の導入によって計量料金を上げることは考えておらず、安全輸送に貢献できることを目的としている。

コンテナを船から積み下ろしするガントリークレーンにも、精度は粗いが重量を計れるタイプのものがある。「ガントリークレーンの精度をもっとあげて、積み下ろしの際に積載量や偏荷重を大まかに計っておく。その上で、(1)極端な偏荷重が確認された場合、受荷主の了解の下、ヤード内での積み替えを実施。(2)偏荷重の疑いが確認されたコンテナは、港単位で指定された偏荷重測定機器設置計量所で計量を実施。(3)問題のないコンテナがおそらく大半と思われるので、通常通り輸送実施。この取り組みで、よりスムーズな輸送体制の確立が可能だと思う」と、林博樹理事長は今後の展望を語る。

重心測定にも着手

さらに同協会と鎌長製衡(株)は、偏荷重測定の精度向上と平行して、「重心値」の測定にも意欲的に取り組んでいる。偏荷重と同時に、振動によって高さ方向も含めた3次元の重心値を割り出すというもの。

完成は8月頃の予定。ドライバーが重心値を把握できるようになれば、事故の危険性のさらなる減少が期待できる。

【問い合わせ先】(社)横浜港湾貨物計量協会(神奈川県横浜市中区海岸通1−3、電話045−201−9045、FAX045−201−8704)

 

 

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