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ライチョウ(雷鳥)(2)

夏山に ライチョウがいて 永久(とわ)思う  虚心

ライチョウ02

 ライチョウ(雷鳥)とはどんな鳥でしょうか。概略をつかんでもらうために説明的にライチョウ(雷鳥・らいちょう)のことを列記します。環境庁が発表している『日本の鳥類分布』(昭和56年3月25日発行、定価4500円)から抜粋すると次のとおりです。

 全長約370mm。北方系の鳥類で、氷河期に大陸から渡来したものが、気候の温暖化により高山に逃れ、残存したといわれている。季節によって羽色がかわる。♂の夏羽では額、頭上、後頭は黒色で、黄色味がかった赤茶色の横斑が多く、体の上面は黄褐色を帯びた暗灰褐色で黒と白の細かい横縞と、ところどころに黒色斑がある。胸と脇は背と同じ色であるが、腹以下は純白である。目の上には赤色の肉冠があり、脚には白い羽が生えている。♀の夏羽では黒色の過眼線がなく、頭部や体の上面および上胸、脇は、黄褐色に黒色の横縞があり、上面で荒く、下面が細かい。腹は白い。冬羽では、♂♀ともに、ほぼ純白であるが、♂にある黒色の過眼線が♀にはない。

 北アルプス、南アルプス、中央アルプス、白山などの標高2,400m以上のハイマツ帯に留鳥として生息する。夏は岩石の塁々と積み重なった山頂付近にも良く現われるが、冬期は、少し下がって森林帯上部で、雪から出ている芽や花穂を食べる。小群又は番で、ハイマツ、草原、岩石地などを歩きながら餌を探し、ワシ、タカ類による捕食を避けるため朝夕に活動することが多い。雨や霧の時は昼間も行動する。地上生活することが多いが、ハイマツ、ダケカンバなどの下枝に止ることもある。飛ぶ時は、早く激しい翼動で、一直線的に飛ぶ。繁殖期の初期にはテリトリー確定のため、飛び回ることが多い。この時期は、ゴロゴロ又はゲェレゲェレと聞こえるカエルのような声で鳴く。雨や霧の中でも良く鳴く。雑食性であるが、ツガザクラ、コケモモ、ガソコウランなどの新芽、葉、花、果など、オンタデ、タカネスイバの種子、新芽、ハイマツの芽など植物質を多く食べ、夏には、双翅目、膜翅目、鞘翅目、鱗翅目など昆虫の成虫および幼虫を食べる。

 繁殖地は、標高2,400〜3,100m位の高山帯でハイマツの根元など地上部に凹地を作って営巣する。産座には、付近の高山植物の葉を敷く。直径16cm、深さ8cm。産卵は5月下旬〜7月上旬、卵は淡黄灰色の暗褐色の大小の斑点がある。47×31mm、25g。1腹卵数は5〜10個。時に12個。抱卵は♀のみが行う。孵化日数、巣立日数は不明。

 今回の調査では北アルプス、南アルプスから繁殖確認の報告があった。この他に、加賀白山、新潟県火打岳、奥秩父・金峰山(放鳥したもの)などに生息する事が知られている。登山者とゴミの増加が特別天然記念物ライチョウの生息をおびやかしていることは明白である。生息環境の保護を早急に実施すべきである。

 以下は重複する箇所がありますが、別の表現でライチョウ(雷鳥・らいちょう)を説明します。

 @種類はキジ目・ライチョウ科・ニホンライチョウ 、北海道にはエゾライチョウが棲んでおります。A留鳥ですので中部山岳方に一年中おります。B体長は370mm位、翼を開いたときの長さは59cm位、体重450g位。長距離飛ぶことはできませんがニワトリ以上には飛行することができ、木の上に止まっていることもあります。一飛行で谷を渡ることもできます。C棲む環境は中部山岳地帯の標高 2400m程度以上のはいまつ地帯を中心とする。冬場には2400m以下にも移動することがあります、D分布地域は先に記したとおり北アルプスおよび南アルプスなどの中部山岳高山地帯です。北海道では高山植物の分布と比例して低山にも棲息します。E行動の様式につきましては、繁殖期は番(つがい)で生活します。日中は鷲(わし)、鷹(たか)など猛禽類を警戒してはいまつの中で生活し、朝夕や悪天時には開けた場所で採食ということになっております。登山者をあまりおそれませんので立山の室堂平はライチョウ(雷鳥)見物の名所となっております。繁殖期のオスは縄張り行動は非常に活発であり、他のオスの個体の侵入徹底して排除します。ウグイスはさえずりで縄張り宣言をしますが、ライチョウは積極的に侵入者を迎え撃ちます。冬期の立山室堂平は6〜7mの積雪になるためここで餌を摂ることは困難である。富山雷鳥研究会が2000年3月に行った冬期雷鳥生態調査では室堂平近くの丸山の北西斜面と、油尾根の2ケ所でライチョウが餌を食べているのが観察されている。丸山調査区はコケモモーハイマツ群集典型亜群集、油尾根調査区はコケモモーハイマツ群集マキバエイランタイ亜群集であった。Fライチョウの特徴としてはけの夏に移行するときに見られる白と黒褐色の斑もようがあり、また人を恐れない可愛さにがあります。冬にはオス、メスとも身体は白い毛で覆われます。夏羽は雪渓の後退とともに白と黒褐色のまだらから徐々に黒褐色に移行します、G啼声はオスはゲッ・ゲッ・ゲーと啼き、メスはクッ・クッ・クッというものです。人によってはオスの啼き声をゴロ・ゴロ・ゴロという雷鳴に似た啼き方だといいますが、これには少し無理があると思います。H産卵数は多い場合には12個というのが観察されておりますが、4個から10個というところでしょう。1個、2個、3個というのだってあることは想像がつくと思います。立山の室堂平のライチョウ(雷鳥)はすっかり名物となって、観光資源として重要な位置を占めているように思われます。富山県自然保護課が発表しているの調査結果では、室堂平付近のライチョウの平均産卵数は5.7個であり、このうち約9割がう化するが、初冬まで生存するヒナは1羽ないし2羽であるという。ある時期は3年ほど初冬にはあヒナを確認できなかったがそれに続くある年には初冬までヒナが高い確率で確認され、生存率の良好さをみせたという。山にカラスが進出していることは日本でもヨーロッパアルプスでも同じである。登山者や観光の人々が山に持ち込む食糧はゴミとして山に残されることが多いものだから、それを目当てにカラスがヨーロッパアルプスの4000m級のユングフラウヨッホに姿を見せるようになって既に30年をこえているいる。カラスがライチョウの卵やヒナに害を与えている。中部営林局は御嶽山に棲息するライチョウの生息数調査を2002年に実施して、その生息数がが30年前を変わっていないことを発表した。ここでのライチョウの平均産卵数は5.3個(18番)で、1972年に旧長野営林局が実施した同じ場所での調査とほぼ同数という結果がでている。カラスとライチョウの敵対関係を物語ることとして、中部営林局はライチョウの卵の殻にカラスがつついた跡があることを確認している。またキツネの糞の中にライチョウのヒナが混じっていることも確認している。キツネやカラスは御嶽山(3,067m)のような高山帯に棲息していなかったが、ここに現れるようになったのは登山道沿いに捨てられる残飯が原因であると、中部営林局は推測している。また同営林局は長野県内のライチョウの遺伝的解析を九州大学大学院の馬場芳之助助手に依頼、馬場氏のライチョウのミトコンドリアを調査した結果、北アルプスに2系統、南アルプスに1系統が確認されていたが、これに加えて南アルプスに新たに1系統が見つかっている。

 夏のライチョウ(雷鳥)はメス親とそれに連れ添う子供数匹というのが目に浮かびますが、ライチョウ(雷鳥・らいちょう)の子育て行動は次のようなものです。雪解け時期にもよりますが、太陽の運行と連動しているのか3月下旬から、オスは縄張り作りを始めます。その縄張りに4月下旬から5月上旬にメスを迎え入れたて番が決まります。縄張りをもった番(つがい)は、6月上旬から中旬に産卵しそのまま抱卵を始めます。この番化と抱卵の時期は絶対的な時期があるわけではありません。少し遅れたり、あるいは早くカップルになるものもあります。遅い番(つがい)は7月に入ってから産卵をするものもあります。夏に子供を連れているライチョウの親はメスです。オスは子育てをしません。ヒナを育てるのはメス親です。抱卵の日数は20日前後というのと28日という記述を目にしますが、学術調査結果報告の中では「確認されていない」という記述もあり定かではありません。キジやコジュケイなどとの違いがあるのでしょうか。ヒナが孵化するとオス親は離れてしまい縄張りが解消されるとされております。親鳥の体重450gといいう記述があるのですがオスかメスか明記されておりませんでした。オスはメスより大きいですから体重も重いはずです。ヒナの体重はう化直後と数時間後では違いますし、卵の大きさによってヒナの体重も違ってきます。16g〜19gの範囲でしょうか。18gという数字の記述もあります。実験を繰り返せば外形のサイズから推しはかることができます。メス親とヒナとの体重比を研究するのも面白いと思いますが、野鳥の場合には余程のことがない限り、調査のためとはいえヒナの体重を計ることはできません。まして大きな糞をするヒナが糞をする前と後とでは体重差が大きいですから、ヒナの体重を何グラムと表記するのは難しいことなのです。数字で表現してあるから確かかといいますと案外これが当てにならないのです。大学の長老や学会の権威が数字を定めてしまいますと、それが間違いであっても訂正までには時間がかかるものです。ましてやわずかの数字の違いとなるとあえて意義を唱えないというのがよくあることです。

 登山道で見かける親子連れのライチョウ(雷鳥)はメス親とヒナです。メス親ははいまつ地帯を餌を啄みながら移動して歩きますが、その範囲は限定的でありますから、縄張りはそれなりに残っていると言っていいでしょう。オスが自己の勢力範囲を確保するという意味での縄張りとは違いますが、メスにも生活圏といいますか縄張りのようなものはあるように思えます。はいまつ帯はライチョウにとっていい隠れ場所です。高山の夏の草花も身を隠す場所になりますし、草花の芽と種子はこの上ない餌になります。高山植物の色とりどりの花弁は人に楽園を提供しますが、ライチョウ(雷鳥)にもうれしい時期です。この時期に子育てをするのはライチョウだけではありません。高山地帯に移動してきたイワヒバリやカヤクグリやキセキレイその他の野鳥もライチョウと同じエリアで子育てをするのです。ライチョウやイワヒバリスがハクサンイチゲ、チングルマ、アオノツガザクラ、シナノキンバイなどの高山植物の群落で過ごす夏は、人にとっても野鳥にとってもつかの間のパラダイスなのです。ライチョウの天敵とされているのは鷲や鷹などの猛禽類です。またオコジョ、キツネ、テンなども手強い敵です。これら地上動物の糞を岩角で発見するとライチョウは大丈夫だろうかと心配になります。人に易々と捉えられるライチョウですから、地上動物が来ない場所まで移動して生活したいのでしょうが、そうはいかなくなっているようにも思えます。オコジョなどは登山者が捨てる食べ物に釣られて普通なら足を踏み入れない高山地帯にまで出没しております。カラスも怖い相手になってくるのではないでしょうか。ヒナなど簡単にさらわれてしまいます。

 ライチョウ(雷鳥・らいちょう)はコジュケイやキジやニワトリに似たところがあります。ヒナはピヨピヨと啼いて親鳥の後を追います。ふ化直後のヒナの体重は、キジやコジュケイの親鳥と卵とヒナの関係から推測できると思います。自然界の摂理は卵の目方を均一なものにするのでしょうか。ふ化後の体重の増加曲線は餌場の状況とある程度連動することでしょう。ふ化率は90%という記録があります。これは条件がよい場合のことのようで、カラスやキツネがライチョウの外敵として本格的に活動した場合にはずっと低くなるものと推測される。自然界の物事は一定ではなくある変動がともなうと考えるべきである。他の野鳥の平均ふ化率との差はどうなのでしょうか。親と同じ身体の大きさになる積雪期までの生存率はよくて40%、少ない場合には15%という記述も見られます。このような数字をそのまま受け入れて絶対化することはできません。何時、何処で、誰が、どのような方法でということが明確にされていませんと、その数字を引用しても参考程度のものにとどまることになります。こうした調査はの結果は本文中の前の部分に紹介してあり変動の激しいものであることがわかる。ライチョウや鳥類に詳しい人であれば、さまざまな調査結果の数字の妥当性を峻別することができるでしょう。事情に疎い人がある数字を絶対化しそれを拠り所にして保護政策を立案することなどがあるとすると、目的とはかけ離れた頓珍漢なことを実施する可能性大です。2003年のアメリカのイラク攻撃はイギリスの情報部から出たウソの情報を拠り所あるいは盾にして実施に移されました。天然記念物に指定されている動植物は驚くほど多いのですが、ライチョウを始め絶滅危惧種の保護に必要な手立てを講じるためにも、その生活の実態が政府もしくは研究者などの手で調査され、公表されることが大事です。こうした試みは遅ればせではありますが地道に進められ、確実な結果が残されるようになってきました。動植物の遺伝子解析の技術の進歩は、これまででは思いもつかないような結果を見いだしております。

 鳥類のオスは概して姿が鮮やかなものですが、ライチョウ(雷鳥)も同じです。ライチョウのオスにはニワトリの鶏冠(とさか)と同じような朱色の肉冠がありますが、ニワトリほど大きくはありません。メスの肉冠は小さくオスのそれははるかに大きなものです。オスの肉冠は冬でもそれなりに残っており、身を隠すのに不便なはずですが、それはメスの気を引くための仕掛けとしいて仕方のないものなのでしょうか。動物の世界は単純な合理性だけでは推しはかることができない、哀れと言うべきか不思議な部分が残されております。オスのライチョウには目の所に横に色の着いた毛が強く引かれますから、この濃さでメスと区別がつきます。山が雪に完全に覆われる 厳冬期にはライチョウは高度を下げて生活するのが普通です。体色を真白にしたライチョウは、雪面に穴を掘って身を隠すこともしますし、吹雪を避けるためには木陰や岩陰にも身を潜めます。

 ニホンライチョウ(日本雷鳥・にほんらいちょう)は他の高山植物とともに氷河期を超えて生き残ってきたのです。こうした鳥類も登山者が山にあふれ、自然が踏み荒らされ、自動車道が山頂付近にまで達する現代の日本の状態に打ち負かされております。観光客がライチョウの世界に押し寄せるのと比例して生存の危機を増大させているといってようようです。随分昔のことですが、ライチョウの棲息エリアを拡大しようとする試みとしてライチョウの移植が行われましたが上手く行きませんでした。日本野鳥の会が山梨、長野両県民の期待のもと、北アルプスの白馬岳のライチョウを富士山に移して繁殖を試みた行為は成功しませんでした。また金峰山でも同じことが行われましが、これも失敗しております。

 富山県自然保護課が発表している立山におけるライチョウの生息数の年次別推移は次のとおりです。

調査
調査期間
推  定  生  息  数
備考
年度
(羽)
不明
性比
S47(1972)
6.23〜6.25
267
163
104
61.0
S56(1981)
7. 5〜7. 9
231
147
 84
63.6
S61(1986)
7. 5〜7. 9
210
118
 92
56.2
H 3(1991)
6.25〜6.30
333
200
132
 1
60.1
H 8(1996)
6.22〜6.27
334
210
124
62.9
H13(2001)
6.29〜7. 3
167
 94
 73
56.3

 

 前表と同じ富山県自然保護課発表の富山県内のライチョウ生息数は次のとおりです。

富山県のライチョウ生息数調査結果
 
調 査 年 調 査 場 所 調査面積
   (ha)
生 息 数
  (羽)
備 考
昭和47年 立山 1,070  267
  48年 朝日岳   820   42
  49年 薬師岳 2,900   81
  50年 大日岳   740   54  
  51年 剱岳   160   82  
  52年 五色ケ原   210   35  
  53年 黒部五郎岳・三俣蓮華岳   950   57  
  54年 上ノ岳   780   61  
  55年 白馬岳   670   59  
  56年 立山 1,070  244
  57年 五龍岳   350   33  
  58年 唐松岳   190   40  
  59年 鬼岳・獅子岳    80   19  
  60年 雲ノ平   780   45  
  61年 立山 1,070  213
  62年 鑓ケ岳   630   91  
  63年 水晶岳   430   39  
平成 元年 雪倉岳   340  127  
   2年 野口五郎岳   240   30  
   3年 立山 1,070  333
   4年 赤牛岳   630   68  
   5年 薬師岳 1,500  149  
   6年 朝日岳   870   56  
   7年     −   −  
   8年 立山 1,070  334  
合  計 (20山岳) 10,620 1,379 *を除いたもの

 なお、全国には、あわせて約3,000羽が生息していると推定されている。

 <ライチョウの生息する県> 富山県、長野県、静岡県、岐阜県、山梨県、新潟県 

 

 岐阜県では乗鞍岳など同県内におけるライチョウの生息数調査をしております。その結果を乗鞍岳で109羽(H6)、御岳で74羽(H7)、笠ヶ岳で46羽(S60)と発表しております。

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